仏教入門講座について

大谷大学仏教教育センター長 木越 康

ここに配信される動画は、2020年4月から2022年3月にかけて、大谷大学真宗総合研究所において取り組まれた特定研究「E ラーニングを活用した『仏教・真宗』教育活動の展開」の成果です。
同研究は、大谷大学の真宗学・仏教学の教員が中心となり、そこに真宗大谷派教学研究所の若手研究者が加わって製作されたものです。研究の主たる目的は、インターネット環境を活用した仏教・真宗の新しい教育システムの開発と導入でした。
 
大谷大学は開学以来、仏教および真宗の学びを一般社会へと公開することを大きな目的として教育・研究活動を展開してきました。この理念を第三代学長佐々木月樵は「大谷大学樹立の精神」で、 仏教について「仏教が万人の宗教である已上は、その仏教学も、また必ず万人の学たることをそれ自身要求して居る」と語り、真宗について「学内のみならず、宗教として世間一般の宗教的人格教養の源泉となり得ることを深く切望して止まぬ」と述べています。本研究は、この理念を、時代に相応した形でさらに積極的に展開するためにスタートしたものです。
 
2年間の研究期間では、教育に必要なコンテンツの開発と運用システムの確立が目指されました。特にコンテンツ面では「仏教入門」や「真宗入門」、 あるいはさまざまな経典や論書の講読系講義の提供が考えられましたが、同研究ではまず「仏教入門」に関する内容から着手しました。理由は、Eラーニング実施に向けた課題の一つにテキストの開発があり、「仏教入門」に関しては2016年に東本願寺出版から発行された『〈改訂〉大乗の仏道-仏教概要-』があり、受講者の学習の基礎となる素材が揃っていると考えられたからです。
 
2019年度中にこの方向で基本計画が立てられ、2020年度からスタートしました。しかしこの年、世界中を想定外の事態が襲うことになりました。COVID-19の世界的蔓延です。周知のとおり、世界中が大きな混乱の中に陥ることになりました。この災禍は多くの命を奪い、人間生活に大きな混乱を与えたことですが、同時に、教育の面では世界中に大きな変革をもたらしました。それは、インターネット環境を活用した交流システムの普及です。学校現場では、教室での対面による授業や演習活動が大きく制限される代わりに、オンラインによる教育活動が一般化したのです。
 
本研究は、COVID-19蔓延以前に企画され、その渦中に製作されたものです。つまり、インターネット環境を活用した教育が一般化し、配信側も受信側も、それに十分慣れる前に製作されたものです。その意味で、今日の急速に進化した環境からすれば、一世代前のものであるとも言えます。したがって、成果の公開自体を長く躊躇したことですが、この度、全9本の動画を無料配信することといたしました。
 
古い形式のものではありますが、仏教に関する基礎的内容が網羅され、また専門家による最新の学術的成果も含まれるものとなっています。はじめて仏教に触れる方、あるいは改めて仏教を学び直そうとする方の学びに、十分に資するものと考えるからです。
 
内容は以下の 9本です。
仏教入門講座 —釈尊の生涯と思想—
第1回 はじめに—仏教遺跡と仏教典籍— 木越  康
第2回 仏教成立の時代背景 箕浦 暁雄
第3回 青年ゴータマの歩み—誕生・四門出遊・出家— 箕浦 暁雄
第4回 沙門となったゴータマ—出家生活と苦行の放棄— 松下 俊英
第5回 縁起の観察—苦の原因をたずねて—  松下 俊英
第6回 最初の説法—初転法輪— 箕浦 暁雄
第7回 仏弟子の誕生—サンガの広がり— 戸次 顕彰
第8回 釈尊の入滅 —自灯明・法灯明— 戸次 顕彰
第9回 おわりに—釈尊入滅後の仏教— 一楽  真
 
「仏教入門講座—釈尊の生涯と思想—」を楽しんでご視聴いただければ幸いです。
 

第1回

はじめに—仏教遺跡と仏教典籍—/講義担当:本学教授 木越 康

第2回 

仏教成立の時代背景/講義担当:本学教授 箕浦 暁雄

第3回 

青年ゴータマの歩み—誕生・四門出遊・出家—/講義担当:本学教授 箕浦 暁雄

第4回 

沙門となったゴータマ—出家生活と苦行の放棄—/講義担当:教学研究所助手 松下 俊英

第5回 

縁起の観察—苦の原因をたずねて—/講義担当:教学研究所助手 松下 俊英

第6回 

最初の説法—初転法輪—/講義担当:本学教授 箕浦 暁雄

第7回 

仏弟子の誕生—サンガの広がり—/講義担当:本学講師 戸次 顕彰

第8回 

釈尊の入滅 —自灯明・法灯明—/講義担当:本学講師 戸次 顕彰

第9回 

おわりに—釈尊入滅後の仏教—/講義担当:本学教授 一楽 真

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