仏教教育センター
きょうのことば
きょうのことば 2025年1月
竿頭、歩を進む
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本学では御命日勤行を毎月行っており、4・6・9・10月においては、勤行に引き続き学生による感話を行っています。 この記事では、10月28日(月)に厳修しました「親鸞聖人御命日勤行」での学生による感話を紹介します。
私の地元は石川県の能登地方です。皆さんの中にも北陸や石川県にご縁がある方もいらっしゃると思います。能登地方は1月1日には数千年に一度とも言われる大地震に遭い、9月21日には数十年に一度と言われている豪雨の被害を受けました。数千年、数十年起きるかどうかと言われている天災がこの2024年にはたて続けに起きてしまったのです。
1月の地震では実家、自坊が全壊しました。それでも住職である父は瓦や壁が崩れ落ちた本堂から阿弥陀仏像を運び出し、ボランティア方の力も借りながら装束など仏事に必要なものを取り出しました。その時点では誰もお寺の存続を諦めようとはしていませんでした。
しかし、9月の集中豪雨による被災では、なんとか運び出された全ての装束が洪水により泥だらけになりました。今回の被災では1月の震災の時には無事であった実家の運営する幼稚園が床上浸水の被害を受けてしまいました。床上80㎝の浸水被害でした。幼稚園の対応に追われ、装束がしまわれている倉庫の片付けは後回しとなっています。現在もそのままです。災害により家を追われた門徒さんも多く、私はもう諦めてしまったら楽なのに、と考えてしまいました。
自然の力の前では人間は無力かのように感じます。そんな中でも人間が持っている力、人との繋がりによって紡がれるご縁には驚かされてばかりです。県内外からたくさんのボランティアの方々が訪れてくれ、こちらを心配する言葉と共に人手が必要になったらいつでも声をかけるよう言ってくれました。そのような人と人との繋がりを感じられるような存在は、心強いの一言では言い表すことのできない感謝の気持ちでいっぱいでした。
しかし「神や仏はおらんわいね。おらん方がいい。」ご門徒さんが疲れたように仰っている姿を目にしました。私は諦めないで頑張ってとは簡単には言えませんでした。皆さんはどうお考えになりますか? 私にはどのように声をかけたらいいのかがまだ分かりません。
本当にそのような状況なのです。これからも復興への道はまだまだ程遠く、見通しも立っていません。それでも大谷大学のボランティア、TATの活動は本当に心強く感じています。
復興への活動と同時にこの現実をどのように受け止めていけばいいのか、これからをどのように考えていけばいいのか、一緒に考えていただけるとありがたいです。