大学概要

学長メッセージ

大谷大学 第30代学長 / 木越 康(Kigoshi, Yasushi)

2026年4月1日 入学式告辞より

今、行われているこの式典を、本学では「入学宣誓式」と呼びます。
「宣誓」とは「誓いを宣言する」という意味ですが、つまりここは単に皆さんの入学をお祝いする場ではなく、多くのご臨席の方々の前で、皆さんが大谷大学での学びに誠実に取り組むことを誓う場であります。

ご承知の通り大谷大学は、仏教的理念を教育・研究の柱とする大学です。
本日の仏教の式典もそれを象徴しているわけですが、そんな大谷大学には、学部・学科に固有の専門教育に加えて、皆さんに学んでいただきたいものがあります。
それは、仏教精神を核とする「人間教育」の学びです。

保護者の方々を含め、新入生の皆さんが大学に期待しているのは、将来のキャリアにつながる高度な教養や専門的知識でしょう。高度な語学力や専門知識、論理立てて問題を解決する知性などは、皆さんが卒業後に社会に出ていく時に、皆さんの生活を支える大きな武器となるものです。皆さんが選択するキャリアによっては、資格がなければ希望の職に就くことすらできないものもあります。

もちろん本学では、それらを提供する優秀なスタッフが数多くおりますので、信頼して、それぞれの学びを深めていただきたいと思います。しかし大谷大学では、そのような学びに加えて、皆さんに必ず「人間」に関する学びを深めてもらいたいと考えています。
なぜそのようなものが必要なのか、宣誓にあたって、その願いについて確認したいと思います。

例えば、今、すでに皆さんは社会を生きる上での重要なアイテムをいくつも持っています。
日本語もすでに理解しているし、社会の歴史や秩序も「常識」というレベルでは理解しているでしょう。これらの知性、あるいはアイテムは、高校までの学びと経験で身につけたものでしょうし、それはそれで社会を生きる上で大切なものです。
しかし、皆さんの未来を明るいものにするためには、それだけでは不十分であると、私たちは考えます。

一つ、例を挙げましょう。
「スマートフォン」という便利なアイテムも、おそらく皆さんはすでに所有しているでしょう。これは社会を生きていく上で、もはや欠かすことができない重要なアイテムとなっています。

そのスマートフォンですが、これはいったい何のためのものでしょうか。
皆さんはどのような目的で、これを使いますか?

このアイテムは、人とつながることができる便利な道具です。音楽を聴いたり、ゲームを楽しんだり、さまざまな情報を収集・発信することもできます。近年ではAIに、何でも相談することもできます。
このように便利なアイテムですが、ご承知の通りこの道具は、人との関係を壊すためにも使用することができます。人を傷つけ、欺くためにも利用することができます。

皆さんはこれまで、どのような目的でスマートフォンを使用してきましたか。つながるためですか、排除するためですか?人を癒すために利用しましたか、それとも追い詰めるために使ったことがあるでしょうか。

皆さんがこれから手にする新しい知性や多くのアイテムも、これと同じです。それらは、人とのつながり、お互いの関係を豊かなものにすることができるものですが、同時に、他人を傷つけ、尊厳を奪うためにも使用することができてしまいます。

大谷大学が、どの学部・学科の教員であっても専門教育とあわせて人間教育を重視する理由がここにあります。
これからさらに高度な道具を手にし、知性を深めていく皆さんですが、そこで最も重要となるのは、皆さん自身がその得られた道具や知性を、何のために使う人間になるのかという問題です。
どのような知性をもって言葉を語り、道具を使い、他者とどのような関係を結ぼうとするのかという問題です。

私たちが生きているこの社会は、多様な存在が複雑に絡み合って成立しています。国境や性別、宗教を越えて、容易に、瞬時に、多様な人間との交流が可能となるのが現代です。
このような状況は、本来、異なる他者への理解と協力の工夫が必須となる時代の到来を意味しています。
しかし、今、世界はどのような状態となっているでしょうか。見知らぬ他者と容易につながる環境が整いましたが、それによって人間関係が友好的になったかと言えば、残念ながらそうではありません。
つながりを深めるための道具が人を傷つける道具として使用され、他者を排除したり、他者から大切なものを奪ったりする事件が多く見られます。

人間は美しい生き方ができる一方で、なぜこのような愚かなあり方を繰り返すのでしょうか。人間の知性は、人を傷つけるためにあるのではないはずです。私たち人間は、争うために生まれたのではないはずです。

では私たちはどのように理性を働かせ、知性を生かしていけばいいのでしょうか。
大谷大学では、成長する私たちに最も必要であると考えるものを「寄りそう知性」と呼んでいます。
競い合うことは大切ですが、それによって相手が傷つくことがあってはなりません。
自らの人生に誇りを持つことは大切ですが、それによって他者を蔑むことがあってはなりません。
そんな人間にどうすればなれるのか、社会をどう築くのか。それが、大谷大学に所属する者すべてが大切にしたいと考える「寄りそう知性」の学びです。
今日から皆さんにも、そんな私たちの一員となっていただき、授業だけではなく、サークルや学外での活動、家庭生活の場でも、この学びを深めていっていただきたいと思います。

保護者の皆様方に申しあげます。
これから学生諸君は各学部・学科で、それぞれの将来に向けて専門学修が進められます。ただ大谷大学は今申しあげましたように、専門教育に加えた「人間教育」を大事にしたいと考えます。
いかに優れた知識と技術を身につけたとしても、それが人を傷つける道具や目的で使われてしまっては、人間として成長することに何の意味もありません。その意味で大谷大学は、自由な中にも、時には厳しく、学生たちを指導することがあります。
教職員一同、これから学生諸君の日々の成長に全力を尽くして参りますので、皆様方には深いご理解とご協力をお願い申しあげます。

略歴

1985年3月 大谷大学文学部真宗学科卒業
1987年3月 大谷大学大学院文学研究科真宗学専攻修士課程修了
1990年3月 大谷大学大学院文学研究科真宗学専攻博士後期課程満期退学
1990年4月 大谷大学文学部特別研修員
1992年4月 財団法人 私学研修福祉会 国内研修員(研修先:東京大学 宗教学)
1994年4月 大谷大学短期大学部助手
1998年4月 大谷大学短期大学部講師
2002年4月 大谷大学短期大学部助教授 (2007年4月 職制変更により 大谷大学短期大学部准教授)
2008年4月 大谷大学学生部長
2009年4月 大谷大学文学部准教授
2013年4月 大谷大学文学部教授(現在に至る)
2014年4月 大谷大学教育・学生支援担当副学長兼大谷大学文学部長
2016年4月 第28代大谷大学長(2022年3月まで)兼 大谷大学短期大学部学長(2021年3月まで)
2022年4月 カリフォルニア大学バークレー校客員研究員(2023年3月まで)
2025年4月 大谷大学仏教教育センター長
2026年3月 博士(文学)学位取得
2026年4月 第30代大谷大学長就任