子どもたちのこころは、ときに大人の理屈をあっさり覆します。渡邉先生の研究はその本質を解き明かすため、徹底的に現場に付きあう情熱にあふれています。学生の自立を支える指導法から、スパロボとガンプラで頭をリセットする日常まで「道は万もある」と信じる人間味豊かなエピソードを伺いました。

先生のA面

子どもと保育者、2つの育ちを見つめる研究

Q.いま取り組んでいる研究はどんな内容ですか?

A.私は、子どもが「自分にはこんな力がある」と感じる気持ちがどんなきっかけで上がったり下がったりするのかについて研究してきました。最近では保育者をめざす大学生を対象に、実習前に保育現場を経験することが、その後の実習への不安や期待にどう関わるかの調査・研究にも注力しています。子どもの成長も、それを支える保育者の成長も、どちらも興味深いテーマですね。

「当たり前」が崩される瞬間にこそ、最高の学びがある

Q.「この分野はおもしろい! 」と感じるのはどんな瞬間ですか?

A.子どもの何気ない言動に、大人の「当たり前」が崩される瞬間があります。負けて悔しがっていたはずの子が、次の瞬間には相手を誇らしげに褒めるなど、大人の理屈では説明がつかない矛盾のようにも見えるこころの動きにふれるたび、人のこころは単純に割り切れるものではないと思い知らされます。だからこそ、子どものこころを見つめる研究は興味深いです。

Q.予想外の連続で発見の多い学びですか?

A.学生たちと接する中にも同様の発見があります。保育現場を経験した学生たちの率直な感想に、こちらの想定が覆されることも少なくありません。理論と実践を行き来しながら理解を更新していく終わりのないプロセスこそが、心理学や保育学という分野のおもしろさだと感じています。

学生の「自立の瞬間」に出あえることが、何よりの喜び

Q.学ぶ中で、学生が「成長する(化ける)」のは、どんなときですか?

A.学生の成長を最も強く感じるのは卒業研究の指導時です。当初は言われた通りに進めるだけだった学生が、先行研究を読み込み、データと向きあい、問いを何度も練り直すうちに変わっていきます。私の指摘に対して「自分はこう考える」と、自らのことばで意見を返してくるようになります。その自立の瞬間に出あえることが何よりの喜びです。

Q.自分なりの思考を重ねていくことがカギになりそうですね

A.この変化は、保育者としての育ちにも重なります。正解のない保育現場では、指示を待つのではなく、目の前の子どもの姿から自分なりに考えて行動する力が求められます。卒業研究を通じて自ら問いを立て、考え抜いた学生は、現場に出てからも既存の答えに頼らず、自ら思考し続けられる保育者になると確信しています。

子どもの行動の理由をこころの動きから捉える確かなまなざし

Q.発達心理学の学びでは、どんな力が身につくのですか?

A.子どもの言動の背景にある気持ちを想像し、丁寧に読み取る力です。保育者には、まだ自分の気持ちをうまくことばにできない子どもたちの表情やしぐさから「今、この子は何を感じているのか」を考える姿勢が求められます。この温かい視点や姿勢こそが、保育や教育の現場で子どもたちと関わるうえでの大きな支えになります。

Q.まず、その視点を養うことが大切になりますね

A.子どもの行動の理由をこころの動きから捉えることは、一人ひとりにあった関わり方を見つける手がかりになります。発達やこころの仕組みを理解して向きあうことは、経験や勘だけに頼らない、根拠のある実践につながります。発達心理学の学びは、子どもに寄りそう温かさとプロとしての専門性を、根底から支える強固な土台となります。

先生のB面

とことん付きあうことでしか見えてこない、人間の本質

Q.先生の研究テーマを選ばれた理由やきっかけを教えてください

A.研究のきっかけは「青年(心理学)よりおもしろそうだ」という直感でした。この分野の醍醐味は、対象への圧倒的な入り込みです。大学院時代は毎日のように幼稚園へ通い詰めました。「そこまでするか」と思われる泥臭いアプローチですが、短時間の観察では決して見えてこない世界がそこにはあります。毎日通うからこそ、子どもの気分や友達関係の微妙な変化に気づけるという丁寧な観察の積み重ねこそが、私の研究の揺るぎない土台です。

Q.海外での保育ボランティアも経験されたんですよね

A.印象深いのはカナダのナーサリースクールでのボランティア経験です。子どものこころの動きは国が違っても共通する部分がある一方で、文化による違いもあるのだと身をもって知りました。ことばや文化の壁を越えてなお対象に寄りそい続けることでしか見えてこない本質がある。それを掘り起こす粘り強さこそが私自身の研究スタイルであり、この学問から離れられない理由です。

何事も本気でのめり込む。研究者の行動力の原点はサッカーに

Q.先生の学生時代はどんなことに熱中されていましたか?

A.学生時代はサッカーに熱中していました。日韓W杯の熱気に触発され、友人と自らチームを結成して、週2回の練習や毎週末の試合に打ち込んでいました。夢中になりすぎて論文が思うように進まず、指導教員に厳しく叱られたのも今ではよき思い出です。仲間とチームを作り上げる中で得た達成感や人とのつながりは、今、同僚の教職員と連携しながら物事を進める中にも生きています。

ワクワクするこころを忘れない。童心に帰って楽しむ大人の息抜き

Q.普段の趣味、ハマっているものなど、先生を元気づけるものを教えてください。

A.自分を元気づけてくれるものはいくつかありますが、なかでも欠かせないのがゲームです。特に幼少期から大好きなロボットたちが一堂に会して共闘する「スーパーロボット大戦」シリーズには、今でも新作が出るたびにワクワクさせられます。また、息抜きにガンプラを作るのも好きです。パーツを一つずつ組み立てて没頭する時間は、日々の忙しさをふっと忘れさせてくれ、完成したときのちょっとした満足感が、明日への活力になります。

答えは1つじゃない。多様な切り口から新たな発見へ至るおもしろさ

Q.座右の銘があれば、その理由なども教えてください

A.座右の銘は「人の世に道は1つということはない。道は百も千も万もある」です。この言葉を座右の銘にしているのは、行き詰まったときこそ視点を変えれば、別の道が必ず見えてくると考えているからです。この柔軟な姿勢は、正解が一つに定まらない保育の仕事や、仮説通りにいかない研究でも欠かせません。1つのやり方にとらわれず、多角的な視野で粘り強く問い直し続ける探究力を、学生たちと分かちあいたいです。

PROFILEプロフィール

  • 渡邉 大介 准教授

    教育学部 教育学科 幼児教育コース

    【専門分野】 発達心理学/教育心理学 【研究領域・テーマ】 発達/対人関係・行動/言葉/ワーキングメモリ

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