教職への夢を旅先の京都で実現。人の成長は静かに少しずつ積み重なるものと信じて、学生の歩調にあわせて挑戦をサポートします。熱帯魚の飼育が高じて、クマノミの言語学を解き明かそうと日夜研究を続けています。

ライアン スミザース
国際学部 国際文化学科 英語コミュニケーションコース 教授

先生のA面

「鳥にできるなら魚も」クマノミの歌声を解き明かす

Q. いま取り組んでいる研究はどんな内容ですか?

A. 私はクマノミの生物音響学を研究しています。「鳥にできるなら、魚はどうだろう?」という問いから、まだ解明されていないクマノミの音声コミュニケーションの謎に迫っています。現在は、ペアの絆形成や縄張り防衛の場面で発せられる音声の記録に着目しているところです。

Q. クマノミに着目したきっかけは何だったのでしょうか?

A. シジュウカラの「文法」を発見した鈴木俊貴教授(東京大学)の研究をきっかけに、サンゴ礁に生息するクマノミの音声コミュニケーションの研究を始めました。すでに明確な音声を発することは確認されており、研究はまだ展開の途中ですが、誰もがよく知るこの魚の新たな一面を発見しようとするプロセスに、本当のおもしろさがあると感じています。

「話す」とは何か?クマノミの音が開く言語進化の扉

Q. 「この分野はおもしろい!」と感じるのはどんな瞬間でしょうか?

A. きっかけは、予期せぬ瞬間でした。水槽の掃除をしていたとき、メスのクマノミが突然私の指に噛みつき、縄張りから追い出そうと「音」を発したのです。偶然の雑音ではなく、彼女の家に侵入した私に向けられた「出て行け」という意図的な発声でした。はっきりと意思を伝えられたその瞬間を忘れません。

Q. ある日の偶然が探究心を掻き立てたのですね?

A. シジュウカラが捕食者への警戒を伝えるため鳴き声を文法的に組みあわせるように、クマノミは音で何を発信しているのか。それは、動物の認知や言語の進化、「話す」とは何かという大きな問いにまで及びます。飼育するクマノミが音を発するたび、あの最初の偶然の瞬間と同じ興奮を、今も変わらず感じています。

失敗を恐れずまた挑戦できる、静かで確かな歩み

Q. 学ぶ中で、学生が「成長する(化ける)」のは、どんなときでしょうか?

A. 学生が大きく変わるきっかけは、フィールドワークです。京都の街でのインタビューや海外の学生との交流を通じ、異なる世界観と出あいます。文化の違いを超えた普遍的なものに気づいたとき、控えめだった学生が自分の言葉で語る自信を手にするのです。自信は私が与えるのではなく、世界との本物の出あいを通じて学生自身が発見するもの。そう信じることが、大谷大学における私の教育の根本にあります。

Q. 自信のきっかけが見つからない時はどうしたらいいでしょうか?

A. 多くの学生は、自分に自信が持てずに不安を抱えています。長年教壇に立ってきてわかったことは、人の成長はドラマチックに起きるのではなく、静かに少しずつ積み重なるものだということです。だから私はいつも、一人ひとりのペースと問いを尊重し、「失敗しても大丈夫、また挑戦できる」と思える環境をつくるよう努めています。

壁を乗り越えた先に育まれる、本物の勇気と自信

Q. この分野を学ぶと、どのような力が身につき、どのような職業・進路につながると考えますか?

A. ゼミ生全員が挑む最大の課題は、5,000字を超える英語での卒業論文執筆です。容易ではない挑戦ですが、困難に満ちたプロセスを仲間と最後までやり遂げることで、語学力を超えた「本物の勇気」が育まれます。卒業生の進路は公務員、ホテルマン、鉄道マンなど多様で、完璧な英語を必要とする職場ばかりではありません。しかし、高い壁に向きあい、やり遂げたという確かな経験は、どの職業でも共通して必要な「最後まで諦めない力」となって人生を支え続けます。

先生のB面

要領が悪くても大丈夫。自分で考え学ぶ楽しさがここにある

Q. 先生の研究テーマを選ばれた理由や、研究の少しマニアックなおもしろさを教えてください。

A. 熱帯魚を飼い始めて40年。手入れの行き届いた水槽は「生きた芸術品」であり、人が魚を飼うという行為は古く深い歴史があります。そんな中でクマノミが意味を持つような音を発していることに気づきました。「この音は何を伝えているのか?」。多くの人には彼らとの出あいは映画『ファインディング・ニモ』でしょう。魚たちが豊かな内面を持ち、互いにコミュニケーションをとるあの世界。私の研究は、ある意味であの作品が掴んでいた「答え」を探す試みなのです。

Q. 先生の学生時代はどんなことに熱中されていましたか?

A. カナダで育った高校時代、私はアルバイト代のほとんどを熱帯魚ショップで使うほど夢中でした。要領のよい学生ではなかった私が変わったのは大学入学後です。自分で考える環境の中で学ぶ楽しさを知り、それまでとは違うかたちでアイデアに向きあうようになりました。大学院進学と教員を志し、進学資金作りのため少し休もうと訪れた日本。その休憩は終わらず、京都が私の故郷、そして大谷大学の教壇への道に続いていたんです。

DIYからオムライスまで。充実感に包まれる至福のとき

Q. 普段の趣味、ハマっているものなど、先生を元気づけるものを教えてください。

A. 私が一番生き生きとするのは、家具や水槽のスタンドを自作したり、壊れた機材を修理したりしているときです。何もないところから実用的なものが形になっていく過程や、動かなかったものが再び息を吹き返す瞬間には、深い充実感があります。また、カナダ育ちの私にとって音楽はブルース、洋食は心の故郷。だけど日本食の好みを一つ挙げるならオムライスです。ふわふわの卵とやさしいご飯の組みあわせに、いつも体の奥まで温められます。

生きることと学ぶことは、私にとって切り離せないもの

Q. 座右の銘は何ですか?また、いま学生だったら、どんなことに注力して学んでいきたいと考えますか?

A. 「教育そのものが人生である」という哲学者ジョン・デューイの言葉通り、水槽や魚、学生たちとの時間はすべて私の学びの続きでした。生きることと学ぶことは切り離せません。本当におもしろいものを見つけたなら、どんな道でも追いかけるべきでしょう。私たちは今、AIの登場という歴史的転換点にいます。もし18歳に戻れるなら、大きな夢を抱き、次に来る時代を想像する人間でありたい。実は私たちより多くを伝えようとする生き物たちとともに、その問いの中に身を置くでしょう。

PROFILEプロフィール

  • ライアン スミザース 教授

    国際学部 国際文化学科 英語コミュニケーションコース 教授

    【専門分野】
    外国語教育/応用言語学

    【研究領域・テーマ】
    教材開発/英語教育学/比較文化論/サンゴ繁殖・海洋生物飼育

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