結び目理論の研究を通して空間の構造解明に挑みます。合唱に熱中した過去や、挫折を乗り越えてつかんだ数学の真のおもしろさ、先人の試行錯誤とシンプルな美しさにこころから感動した経験を通し、自ら思考して次の世代を育てる数学教師をはぐくみます。

先生のA面

ひもをほどく数学?結び目理論の奥深き世界

Q.いま取り組んでいる研究はどんな内容ですか?

A.私は数学の「トポロジー」という分野を研究しています。これは図形をグニャグニャと曲げたり伸ばしたりしても変わらない性質に注目する学問です。私はその中で、ひもの絡まり方を調べる「結び目理論」が専門です。

Q.具体的にいうと、どんなことにつながる研究ですか?

A.数学では、ひもを結んでから両端をつないで閉じたものを「結び目」と呼びます。この結び目を表す曲線が空間にどう置かれているかを調べることは、実は私たちが生きる3次元空間そのものの構造を理解することにつながります。私は結び目と空間の関係を研究し、その背後にあるしくみの解明をめざしています。

一瞬の閃きで全てが報われる、研究という生き方

Q.「この分野はおもしろい! 」と感じるのはどんな瞬間ですか?

A.結び目理論の魅力は、図を描く直感的な楽しさと、代数学(※)による厳密な論理が融合するおもしろさです。複雑に見える現象が、新たな視点によって統一的に理解できたときに、研究者としてこの上ない高揚感とおもしろさを強く感じます。
※数や記号の計算規則を一般化し、「群」「環」「体」といった抽象的な構造を研究する数学分野

Q.証明すること自体が難しそうな研究ですね

A.自ら新しい考えを生み出せたときの喜びは、格別です。研究は思うように進まない時間の方が圧倒的に長く苦労も多いですが、まだ誰も答えを知らない問題に挑み、人類の知識の境界線を自分の力でほんの少しでも押し広げられたと実感する瞬間、全てが報われます。その瞬間の虜になり、私は研究を続けています。

解法を学ぶだけで終わらない、数学の本質的な学び

Q.学ぶ中で、学生が「成長する(化ける)」のは、どんなときですか?

A.定理や解法を学び、問題を解けるようになることは重要です。しかし、知識や技能を単に身につけただけでは、まだ本当の「成長」とは言えません。それ以上に「その知識や技能が、一体どんな課題を解決するために生まれたものなのか」を理解することこそが、本当に大切なことだと考えます。

Q.着想や背景にまで思考を巡らすことが大切ですね

A.たとえば対数(※)が天文学の膨大な計算を救った歴史を知ると、数学が人類の試行錯誤の結晶だと見えてきます。背景にある課題を理解し、その解決方法の美しさや鮮やかさに「なるほど」と感動できたとき、学生は単に知識を覚えるだけの「学習者」を一歩超え、自ら問い、思考する人へと大きく成長するのです。
※ある数(底)を「何乗」したら別の数(真数)になるかを表す数学的な概念

筋道を立てて説明する力から、物事の本質を捉える力へ

Q.ここでの学びは、どんな力が身につくのですか?

A.数学の学修を通じ、問題を整理して筋道を立て、論理的に説明する力が身につきます。さらに「その知識はどんな課題を解決するために生まれ、なぜ有効なのか」という背景を深く理解することで、物事の「本質」を捉える力も養われます。これらは、あらゆる場面で生きる一生ものの武器になります。

Q.数学の教員に必要な資質はどんなものですか?

A.優れたアイデアほど本質はシンプルであり、その価値は誰もが実感できるものです。こうした数学の美しさや鮮やかさにこころから感動して「化けた」学生は、将来きっと良い教師になれます。公式や解法をただ教えるだけでなく、背景にある発想やおもしろさを自ら実感している教師こそが、生徒にその感動をそのまま伝え、主体的に考える力を豊かにはぐくむことができるからです。

先生のB面

一部分の探求が全体の謎に直結する、幾何学のスケール感

Q.先生の研究テーマを選ばれたきっかけやその魅力を教えてください

A.もともとは図を描いて考える幾何学が好きでした。結び目の研究は、直感的な楽しさと代数学による厳密な証明の両方を味わえる分野です。たとえば「ひもを切らずに結び目はほどけない」という直感的な“当たり前”を、代数学の力で論証します。直感と論理が鮮やかに融合する知的刺激に、私は強く惹かれています。

Q.研究の少しマニアックなおもしろさも教えてもらえますか?

A. 結び目自体の研究が、それを取り巻く3次元空間の構造解明に繋がる点にも魅力を感じています。一本の閉じた曲線を調べることが、空間全体の性質を明らかにする手がかりになる。部分の探究が全体の謎に直結する、そのスケールの大きさに結び目理論の奥深さがあります。

合唱にハマった学生時代から、数学漬けの研究者へ

Q.学生時代はどんなことに熱中されていましたか?

A.大学時代は混声合唱団に所属し、仲間と合宿や練習を重ねて音楽をつくり上げる過程に熱中していました。美しいハーモニーの一部になれる喜びは、格別なものでした。ただ、クラブ活動に夢中になるあまり数学の勉強はおろそかになり、もう少し頑張るべきだったと今では後悔しています。

Q.大学院進学後から数学研究に明け暮れたのですか?

A.大学院では数学漬けの毎日でしたが、論文が理解できず大変苦労しました。優秀な周囲と自分を比べ、鬱屈した気持ちになることも多かったです。それでも、研究のおもしろさを少しずつ実感する中で、なんとか自分なりの数学を育てていくことができました。

音楽と読書が織りなす、ジャンルに縛られない日常

Q.現在の趣味、ハマっているものなど、先生を元気づけるものを教えてください

A.音楽と読書は、生活に不可欠です。音楽はJ-POPからクラシックやジャズと幅広く聴き、合唱やギター、ピアノの演奏も楽しみます。読書も同様に雑食派で、常に数冊を並行して読み進めるスタイルです。中でも司馬遼太郎の作品を愛読しており、歴史上の人物たちを見つめる著者の温かく人間的なまなざしに惹かれ、折にふれてページをめくっています。

知識をただ受け取るだけでなく、背景の試行錯誤を知る

Q.座右の銘があれば、その理由なども教えてください

A.「どんなものも、それを作った人がいる」が、座右の銘です。完成品の裏にある作り手の試行錯誤や工夫に思いを巡らせることで、深い学びが生まれます。それには、自身の世界を広げることも大切です。学生の皆さんには、専門外の学びや他者との対話を通して自身の世界を広げ、異なる経験が思いがけない形で結び付くワクワク感をぜひ味わってほしいです。

PROFILEプロフィール

  • 山本 亮介 教授

    教育学部 教育学科 初等教育コース 教授

    【専門分野】
    位相幾何学

    【研究領域・テーマ】
    3次元多様体論/結び目理論/写像類群

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