暮らしを支える科学において「人はどう納得し学ぶのか」を追究する科学教育の世界とはどのようなものでしょうか。日々の試行錯誤や偶然の「出あい」が紡ぎだす、探究の尽きないおもしろさと、多彩な未来を切り拓く「伝える力」の可能性に迫りました。

先生のA面

科学を学ぶプロセスを見つめ、次代の教育をデザイン

Q.いま取り組んでいる研究はどんな内容ですか?

A.科学は私たちの暮らしや社会を支える大切な基盤の一つです。単に知識を学ぶだけでなく「人がどう理解し、どう学べば、より深く納得できるのか」を考えることが重要です。社会や技術の変化に伴って学び方そのものも大きく変わる今、時代にふさわしい科学教育のあり方を研究しています。

Q.STEAM教育(※)の本質に迫る感じですか?

A.特に関心があるのは、授業や学習活動の中でデジタル機器をどのように生かせるかという点です。たとえば、実験結果の記録・比較や考えを共有する場面で、デジタル機器が学びをどのように支えるのかなど、そのプロセスを考えることにおもしろさを感じています。

※STEAM教育とは、「科学(Science)」「技術(Technology)」「工学(Engineering)」「数学(Mathematics)」を統合的に学び、数理的思考力をはぐくむ教育のこと

点が線になり景色が変わる。それが探究し続ける理由

Q.「この分野はおもしろい! 」と感じるのはどんな瞬間ですか?

A.研究の魅力は2つあります。1つは、それまで別々だった知識や出来事が1つの流れとなり、点だった理解が線になって全体像が見える瞬間です。自分の見方が広がっていくことに強い魅力を感じます。もう1つは、予想していなかった結果に「出あう」瞬間です。当然の考えが揺さぶられ、新たな問いが生まれることで研究は奥行きを増します。この発見の積み重ねが、私が探究を続ける理由です。

失敗も次の挑戦へのステップ。挑戦が大きく成長させる

Q.学ぶ中で、学生が「成長する(化ける)」のは、どんなときですか?

A.学生が大きく成長するのは、模擬授業のように自分で考え、手を動かして実際にやってみる経験を重ねるときだと感じています。初めて授業を組み立てる場面では、思い通りにいかないことやうまく伝わらないことも少なくありません。しかし、その経験があるからこそ失敗の原因を振り返り、別の方法を考えて再挑戦しようとする姿勢が育っていきます。

Q.失敗も成長までのプロセスですね

A.学んだ知識をそのまま受け取るだけでなく、自分で確かめて納得しながら形にするという主体的なプロセスを踏んで、理解はより一層深くなり、自信も少しずつ積み重なっていきます。学生たちが日々繰り返す試行錯誤の積み重ねが、あるときふとした場面で表情やことば、行動の変化として現れて「成長した」と感じる瞬間につながるのだと思います。

「なぜ」を考える力の先にある多彩な未来のカタチ

Q.この分野を学ぶと、どのような力が身につくと考えますか?

A.この分野を深く学ぶことで、科学的な知識そのものに加えて「なぜそうなるのか」を筋道立てて考える力が身につきます。さらに、相手の立場に立って複雑な内容をわかりやすく伝える力や、人がどこでつまずき、どう説明すれば理解しやすくなるのかを考える力もはぐくまれます。相手の反応を丁寧に見取り、伝え方を日々工夫する真摯な姿勢が養われるでしょう。

Q.この思考力を最も発揮できる進路はどんな職種ですか?

A.こうした力は、学校教員はもちろんですが、教育に関わる企画や科学館などでの学習支援、民間企業での研究開発や情報発信など、さまざまな職業や進路につながります。科学教育を通じて培う(つちかう)「伝える力」は、多彩な未来を切り拓く大きな強みになると考えています。

先生のB面

進化する学びと予想外の問い。終わりなき探究へ

Q.先生の研究テーマを選ばれた理由や、研究の少しマニアックなおもしろさを教えてください

A.私がこの研究に関心を持ったのは、科学そのものへの興味に加えて「人がどのように学び理解していくのか」に強く惹かれたからです。科学教育は知識を扱うだけでなく、学ぶ人の見方やつまずき、理解の深まり方まで視野に入れて考える必要があり、そこに大きな奥行きを感じますね。

Q.変化に富む科学教育のあり方に深さを感じるのですね

A.社会の変化に伴い、学びの方法が変わるのもこの分野の大きな魅力です。研究現場では、バラバラに見えた知見が一つの視点で結び直されたり、予想外の結果から新しい問いが生まれたりします。そうした瞬間に、この分野ならではの奥深いおもしろさと、探究の尽きない魅力を深く実感するんです。

未知の扉を開く神保町(東京都)での本との「出あい」

Q.先生の学生時代はどんなことに熱中されていましたか?

A.熱中したことの1つは、読書です。授業や研究に関わる本だけでなく推理小説や歴史の本など、興味を持ったものを幅広く読んでいました。本を読むと、未知の考え方や世界に「出あえる」ので、その時間が本当に好きでした。特に神保町の個性豊かな古本屋街をたくさん巡り、棚をただ眺めるだけでも、いつも新しい発見がありました。

Q.古本屋巡りは今のタイパ・コスパ主義の風潮とは真逆ですね

A.神保町の街では、探していた本に「出あえる」こともあれば、まったく予定していなかった1冊にこころをつかまれたことも。そうした偶然の「出あい」が楽しくて、何度も足を運んでいました。自らの手で本を探し、ページをめくり、少しずつ自分の世界が広がっていくあの心地よい感覚は、間違いなく今の研究や学びの姿勢にも深くつながっていますね。

歩くたび私のこころをほどく京都の町歩き

Q.普段の趣味、ハマっているものなど、先生を元気づけるものを教えてください

A.私を元気づけてくれるものの1つは、京都の町歩きです。歴史ある寺社仏閣や町並みを少し歩くだけでも新鮮な発見があり、季節ごとに変わる景色に飽きることがありません。また、おいしい季節の和菓子との「出あい」も大きな楽しみの1つです。美しい姿や名前に深くこころ惹かれ、小さな変化に気づく時間は、日々の生活に豊かな活力を与えてくれるのです。

専門を深め未知を拓く。視野を立体的に広げる贅沢な時間

Q.座右の銘は何ですか?また、いま学生だったら、どんなことに注力して学んでいきたいと考えますか?

A.私の座右の銘は「見聞を広める」です。専門を深く学ぶだけでなく、さまざまな分野に触れることで、ものごとをより立体的に捉えられるようになります。もし今、私が学生なら、専攻以外の分野にも目を向け、自分の専門を新しい角度から見直したいと考えます。大学時代は、未知の世界に「出あい」視野を広げる貴重な時間だからです。

PROFILEプロフィール

  • 内田 祐貴 准教授

    教育学部 教育学科 初等教育コース

    【専門分野】
    理科教育/物理教育/物理学

    【研究領域・テーマ】
    小学校理科/科学教育/科学教員養成

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