特集
「ことば」の裏から世界を読み解く、文学研究の魅力
文学を通して社会に向きあい、知的な探究と発見の道を開く

移動は決して「当たり前」の行動ではありません。日常に潜む「見えない移動の格差」を可視化し、解決に導く研究について伺いました。行政や事業者だけに頼らない、多様な人々を巻き込む「共創」の仕掛けとはどんなものでしょう。

A.「だれも移動に困らない地域をどう作るか」が、私の研究テーマです。過疎地では鉄道・バスの路線廃止などが相次ぎ、移動困難者が増えています。そこで行政や住民、大学などが協力し、みんなで解決する「共創」が大切になります。乗車体験などの仕掛けをつくり、地域社会の問題解決をめざしています。
A.フィールドワークを通じて地域の皆さんと対話を重ねながら、課題解決のヒントを探っています。学生たちと開発した、ゲーム感覚で公共交通を体験できるイベント「モビリティロゲイニング(モビロゲ)」もその1つです。楽しみながら身近な移動手段の大切さを体感してもらっています。
A.特におもしろいのは、事前調査や自分の頭の中にあった予測と、社会の現場との「違い」を体感する瞬間です。先人たちの研究をふまえ「この地域ではこんなことが起きているはずだ」と見立てて現地を訪れますが、現場ではいつも思いもよらない場面や出会いがあります。これこそがフィールドワークのおもしろさでもあります。
A.地域の人と一緒に課題を解決する「アクションリサーチ」も、おもしろいですね。研究が実際の社会でどう役立つのか、その「距離感」を確かめながら進められるのが魅力です。社会に直結することだけが研究の全てではありませんが、自分の学びが社会にどう意味をもつのか実感できますね。
A.フィールドに出ると学生の表情がガラッと変わる、それが本当にうれしい瞬間です。住民の皆さんとの交流や企画の実施、政策提言へのフィードバックなどを通して、学生は見違えるほど成長します。先日もゼミ生が島根の離島から帰ってきた際、島で出あった人の話を生き生きと語り、自身のキャリアを考え始めました。そんな変化を間近で見られるのが幸せです。
A.もう一つは、チーム活動の中で学生が自分の役割を自認し、力を発揮し始めたときです。私の授業では25人の学生が5人1組のチームになって1年間活動しますが、最初は葛藤の連続でしょう。しかし、それを乗り越え、リーダー役やプレゼンの資料作成など「だれかに必要とされている」と自覚した瞬間、学生はグッと伸びます。その自立へのステップを見守るのも大きな喜びのひとつです。
A.たとえば「バスに乗る」ことは手段にすぎません。乗車することが目的ではなく、学校や買い物、だれかに会うために移動があります。そして「移動・交通」について学んだからといって、卒業後の進路は必ずしも交通業界に限りません。卒業生は生協や地方銀行、小売業、福祉など「人と地域」に関わる多様な道を選んでいます。ここで身につくのは、だれが何に困っているかを「想像」する力と、解決策を「創造」する力です。この2つのチカラを武器に、それぞれの場所で活躍しています。
A.高校時代、10kmの自転車通学でいつも見かける「だれも乗っていないコミュニティバス」が気になっていました。大学でまちづくりを学ぶ中でその記憶がつながり、先生の助言もあって移動の困難性や地域交通に関する研究をスタートしました。乗り物自体が好きというより、素朴な好奇心が原点となり、今の研究へ結びついています。
A.移動はだれにとっても「当たり前」に見えて、実は住む場所や年齢、収入で全く異なります。車をもてない人や免許を返納できない人、移動手段が消えた地域の人にとって、移動は「当たり前」ではありません。この「見えない格差」を可視化できるのが研究の醍醐味であり、社会的使命でもあります。まるで日々ピースが変わる、複雑なパズルに挑んでいるようなマニアックなおもしろさはあるかもしれませんね。
A.大学時代に熱中したのは、バスケサークルのキャプテンとしての活動です。私が所属していたサークルは30年以上続く伝統あるサークルで、勝ちにこだわるいわゆる「ガチ勢」が主流派でした。しかし、中には純粋に楽しくプレーしたい人もいます。部活とは違うからこそ、その両者のバランスをどう取るかについて、当時はかなり悩みましたが、それを模索したあの経験は、今振り返ると楽しい時間でした。
A.学生が学生を支える「ピアサポート」活動にも注力していました。現在のゼミ活動でも、チーム活動を主体にしたり、先輩後輩が学びあう関係性を促したりと、学生同士の関わりを大切に見守っています。今の指導スタンスは、まさに学生時代の経験がベースにあります。
A.趣味は旅行やスポーツ観戦、バスケです。学生時代、推しのNBAチームの決勝戦を見るためになんとか時間をやりくりしたほどの大ファンで、先日アメリカで生観戦したときはめちゃくちゃテンションが上がりました。今年度からは縁あって、本学のバスケ部でコーチもしています。普段は関わらない学部・学科の学生たちとも、大好きなバスケを通してつながることができ、楽しそうな姿から私自身も元気をもらっています。
A.常に意識しているのは、「研究者である前に教育者、教育者である前に1人の人間」でありたいと、常に意識して学生に接しています。これは私の恩師が、実に人間味あふれる温かさで向きあってくれたからです。


野村 実 准教授
社会学部 コミュニティデザイン学科
【専門分野】
社会学(地域社会学/地域政策)
【研究領域・テーマ】
モビリティ/まちづくり/地域交通政策/コミュニティ
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