教科書にまとめられた遠い世界の出来事ではなく、日々の暮らしに根ざした身近な気づきや疑問。そこから地続きで始まっていく歴史の奥深さを「生きた歴史」に再構築する。その醍醐味を一緒に味わっていきましょう。

西山 剛
国際学部 国際文化学科 講師

先生のA面

遺物と文献から解き明かす、京職人の暮らしぶり

Q. いま取り組んでいる研究はどんな内容ですか?

A. 15〜18世紀の京都に暮らした職人の生業や文化を研究しています。教科書的な歴史だけでなく、当時のリアルな息遣いや暮らしの温もりが感じられる歴史像の構築が目標です。現在は15世紀(室町時代)の「魚屋さん」に焦点を当てた論文を精力的に執筆しています。

Q. 普通の人々の生活像を具体的に見せるのですか?

A. 文献や絵画史料だけでなく、発掘調査による考古遺物も分析素材に用い、室町時代の「魚屋さん」の実態復元に挑んでいるんです。文字記録と地中のモノの両面から多角的に迫ることで、当時の京都の活気や人々の暮らしぶりが鮮やかに蘇ります。これこそが歴史研究における最大の醍醐味です。

日常の疑問から始まる、歴史の奥深さ

Q. 「この分野はおもしろい!」と感じるのはどんな瞬間でしょうか?

A. 過去の足跡から自分自身の目で見つけた小さな情報をパズルのように組みあわせることで、誰も知らなかった新しい事実が確実に浮かび上がります。想像すらしたことがない生き生きとした歴史の世界が目の前に広がる強烈な感覚。日々の暮らしに根ざした疑問から始まる歴史の奥深さと、一歩ずつ謎を解き明かしていくおもしろさに魅了され続けています。

Q. 歴史研究にのめり込むきっかけはどんな事でしたか?

A. 高校時代は歴史が大の苦手で、大学進学当初は哲学のゼミを選んだほどでした。そんな私の転機となったのが、大学のある授業での出あいです。室町時代の古い日記を読み解くなかで、風呂というきわめて生活感のある記述に強い関心を抱きました。日記には「風呂」と「湯」が厳密に書き分けられており、前者が蒸し風呂、後者が入浴というように、小さいようで大変におおきい違いに気づいたとき。

Q. 学ぶ中で、学生が「成長する(化ける)」のは、どんなときでしょうか?

A. 大学での学びはあらかじめ決まったものではなく、自らの力で問いを見つけ、深く掘り下げていく場だと思います。日々の授業の中で、普段は控えめな学生がいざ「大好きなこと」について語り始めるとき、驚くほど目を輝かせていきいきと話し出す瞬間に出あうと、新鮮な驚きを感じることが多々あります。

Q. 成長のきっかけはどんな場面でつかめるものですか?

A. 夢中になって打ち込める課題は、日々なんとなく考えていることや、純粋に「好きだ!」と思っているすぐ周辺に隠れているものです。限られた大学生活の中で一回りも二回りも成長するためには、まずは自分自身の内側にある「好き」を見つけ、それをしっかりと自覚することが何よりも大切ですよね。

京都文化を世界へ届けるメッセンジャーに

Q. この分野を学ぶと、どのような力が身につき、どのような職業・進路につながると考えますか?

A. 京都の文化を深く学ぶために大切なこと。それは、目の前にある街や暮らしを見つめ、背景にある歴史に耳をすますこと。そして「いまの私たちにとってどんな価値があるか」を問いかけましょう。 京都の文化は、学芸員や保護技師、観光業、伝統を受け継ぐ職人など、多様な人々に支えられてきました。こうした人々との交流が大谷大学での学びを深めてくれます。 大学で京都への深い愛情と知識をじっくり育み、将来は街の担い手だったり、あるいは魅力を世界へ伝えるメッセンジャーとして活躍してくれるとうれしいです。

先生のB面

学ぶ楽しさや感動を探す習慣はカメラに通じる

Q. 先生の研究テーマを選ばれた理由や、研究の少しマニアックなおもしろさを教えてください。

A. 私はかつて京都に暮らした神輿を担ぐ「駕輿丁」や「力者」と呼ばれる専門職を研究してきました。彼らは単なる労働者ではなく、免税などの特権を持つユニークな存在でした。室町時代には有力な商人もその身分を獲得し、強力な商業集団へと成長します。「人を上にかついで移動する行為」からなぜ巨大な権力が生まれたのか。20年間この謎を追っています。みなさんも一つの問いとじっくり付きあってみませんか。

Q. 先生の学生時代はどんなことに熱中されていましたか?

A. 塾講師のアルバイトに励む一方で、大学の課題にも真面目に向きあうある日、建築史の授業で「東京の街中を12枚の写真で表現しカレンダーにする」という一風変わった課題が出ました。この課題を機に私は写真の魅力に引き込まれ、賑やかな繁華街へ出かけては街の表情を切り取るようになりました。すっかりカメラが好きになり、今でもカバンにデジカメを忍ばせて写真を撮っています。最初から熱中できるものがなくても、目の前のことに一生懸命取り組むなかで本当に好きなことが見つかることもあるんです。

新しい発見は普段の趣味にも転がっている

Q. 普段の趣味、ハマっているものなど、先生を元気づけるものを教えてください。

A. 好きな美術館や博物館に足を運ぶのが何よりの楽しみにしています。学芸員として働いていた頃は現場の裏側が気になり心から楽しめない時期もありましたが、今は一人のファンに戻って展覧会を満喫しています。 特に毎年楽しみにしているのが「KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)」です。期間中は京都の街全体が大きな美術館のようになり、歴史ある建物の会場を巡りながら作品を鑑賞しています。道すがら知らなかった新しい場所を見つけたりするのも、このイベントの隠れた楽しみなんです。

京都の魅力を自分の言葉で届けられたなら

Q. 座右の銘は何ですか?また、いま学生だったら、どんなことに注力して学んでいきたいと考えますか?

A. 座右の銘は「大丈夫。」(口グセでもあります。)もし今、学生に戻れるとしたら語学学習に注力したいですね。研究生活のなかでは外国語を必要とすることがあまりありませんでしたが、語学は日常を楽しくし、興味を広げるために必要だと気づきました。京都でも外国の方を見かける機会が本当に増えています。いろいろな言葉で京都の魅力を語れる力を身につけ、世界の人々の旅を素敵に彩ってみませんか。学んだことを教えてくれたらうれしいです。

PROFILEプロフィール

  • 西山 剛 講師

    国際学部 国際文化学科 講師

    【専門分野】
    日本中世史(文献史学)

    【研究領域・テーマ】
    都市社会史/身分制史/京都文化論/博物館学(展示論・教育論)

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