水の歴史を追う宝探しのような研究を通して、物事を多面的に捉える重要性を伝えます。日常の中で身近な問いに気づき、学びが人生とつながるとき、視野は大きく広がります。失敗を恐れず、今しかできない挑戦を重ねる大切さを紹介します。

先生のA面

ユーラシアの乾燥地から学ぶ、水を巡る人々の営み

Q.いま取り組んでいる研究はどんな内容ですか?

A.ユーラシア大陸の乾燥地域を舞台に、人々が限られた水をどう確保し、分けあってきたかを研究しています。環境の異なる地域の事例を比較し、水の利用方法やそれを支える社会のしくみの共通点と違いを明らかにすることに取り組んでいます。

Q.水資源の確保や利用法は、現代にもつながっていますか?

A.水は生活に欠かせない資源であるため、その利用を巡って人々を結びつける協力関係を生み出すと同時に、争いや排除を生む側面も持っています。歴史の中で人々が水とどのように向きあい、限られた資源を管理してきたのかを考察することで、現在の水不足や環境問題、さらに公平な資源利用のあり方を考える手がかりを示したいと考えています。

視野の広がりと思い込みの自覚。発見に満ちた歴史研究

Q.「この分野はおもしろい!」と感じるのはどんな瞬間ですか?

A.新しい史料から史実を見つけるのは、おもしろい瞬間ですね。しかしより刺激的なのは、他の研究や経験を通して、従来の視野では捉えられなかった別の一面に気づく瞬間です。それを見落としていた自分の偏見や思い込みを自覚し、これまでの自分を変えていくことに研究の本当のおもしろさがあるんです。

Q.知的発見でアップデートさせていく感じですね

A.歴史の研究は、見る視点によって同じ事柄であっても異なる意味を持ちます。異なる分野との交流や史料との出あいによって、当然だと思っていた理解が変化する瞬間に大きな魅力を感じます。そうした視野の広がりと思い込みの自覚という知的な発見の積み重ねが、この分野のおもしろさです。

授業のテーマが日常と結びつき、知識が具体的な意味を持つ

Q.学ぶ中で、学生が「成長する(化ける)」のは、どんなときですか?

A.授業で伝えているものの見方や歴史の学びを、大学の外の日常生活の中でハッと実感したとき、学生は大きく成長します。自分自身の問題として感じられるようになったとき、みんなの視野がぐっと広がり、主体的に考える力がはぐくまれるのだと思います。学びが自分の人生とつながる瞬間を、何より大切にしたいですね。

Q.日常で見過ごしていることも、つなげられるかが大事ですね

A.歴史の学びは知識の暗記ではなく、そこから社会のしくみを考えることにあります。授業で扱ったテーマが日常の経験と結びついた瞬間、それまで抽象的だった知識がガラリと変わり、意味を持ち始めるんです。そして、他人事だった社会の問題に、自分自身の問いとして気づきます。このときに、主体的に考える力が磨かれます。

社会のあらゆる場面で生きる、物事の本質を捉える力

Q.この分野を学ぶと、どのような力が身につき、どのような職業・進路につながると考えますか?

A.歴史を学ぶことは、過去を知るだけでなく、客観的に物事を見つめる力を養うことでもあるんです。さまざまな史料や異なる立場の考え方を通して、物事を多面的に捉えるトレーニングを重ねると、自分自身の考えを一歩引いた視点から見つめ直せるようになります。さらに、情報の出所を確認して分析し、確かな根拠に基づいて自分の意見を論理的に伝える力。特定の職業や進路に限らず、これから皆さんが羽ばたく社会のあらゆる場面で必要とされる普遍的な力になるはずです。

先生のB面

床の敷石や地下に眠る石碑を求めた、宝探しのような日々

Q.先生の研究テーマを選ばれた理由や、研究の少しマニアックなおもしろさを教えてください。

A.北京に留学した際、友人たちと行った石碑の調査が私の研究の出発点でした。水の神様を祀る廟に立ち並ぶ石碑には、当時の人々が水を分けあい、社会を維持してきた手がかりが刻まれていました。さらに印象深かったのは、石碑が床の敷石に使われていたり、地下に埋まっていたりすることです。洞窟に入り、崖を下りながら石碑を探す調査は、まさに宝探しのスリルそのもの。そうした偶然の発見から過去の人々の営みが浮かびあがる瞬間に、この研究の大きな魅力を感じています。

Q.先生の学生時代はどんなことに熱中されていましたか?

A.学生時代は野球やラグビーに明け暮れ、毎日練習ばかりしていました。つらい時期もありましたが、多くの仲間らと出あい、ともに目標へ向かって努力した経験は一生の宝物です。その中で学んだ協力の大切さや継続する意味、築いた友人関係は、今の私の大きな財産になりました。研究や仕事で最も重要な「人との信頼関係」の基礎は、すべてこの部活動の経験の中で培われたものだと言えますね。

研究に向きあう力をチャージする、軽やかな日常

Q.普段の趣味、ハマっているものなど、先生を元気づけるものを教えてください。

A.特別な趣味はないですが、ジョギングや妻との何気ない会話で日々気分転換をしています。一緒に過ごす時間は、忙しい中で気持ちを落ち着かせ、研究に向きあう力をくれるんです。妻との会話は私のモチベーションの根幹です。また本当に疲れたときは、ソファーで海外ドラマを見続けることもあります。締め切りを終えたあとに、仕事とは全く違う分野の本をのんびり読むときも、気持ち軽やかになって最高のエネルギーチャージになりますね。

常にチャレンジする姿勢を大切に、未来を切り拓く力を

Q.座右の銘は何ですか? また、いま学生だったら、どんなことに注力して学んでいきたいと考えますか?

A.特に座右の銘はありませんが、チャレンジする姿勢を大切にしています。一つのテーマに向きあうだけでなく、新しい領域へ挑戦し続けることが重要だからです。もし私がいま学生なら、語学を熱心に学び、長期留学に挑戦したいですね。異なる文化や価値観の人々と生活をともにする経験は、視野を広げる大きなチャンスです。学生時代は、失敗を恐れず新しいことに挑める貴重な時期です。だからこそ、今しかできない経験をたくさん積み重ねてほしいですね。

PROFILEプロフィール

  • 井黒 忍 教授

    文学部 歴史学科 教授

    【専門分野】
    東洋史(中国近世史/環境史)

    【研究領域・テーマ】
    中国史/水利/環境

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