教員紹介
先生のA面・B面
何を学ぶか。そして、志を持つ「だれ」と学ぶか
仲間や先生との出あいが、本当の意味で人の生き方を「自由」にする

何が正常で何が異常か、常識をひっくり返す社会病理学の魅力を解説していただきます。文献研究や調査を通してAI時代を生き抜く力を育てる教育観と、トランペット演奏やプログラミング言語など多彩な趣味に彩られた豊かな人生観を紹介します。

A.私の専門は社会病理学です。犯罪だけでなく「正常と逸脱」を広く扱う学問です。何が異常とされるかは時代や場所で違うため、その変遷を追っています。最近は古い医学書を基に、今の「パーソナリティ障害」がどういう背景で「異常な人格」とみなされるようになったのか、その歴史を分析しています。
A.これまでの代表的な研究は「ドラッグ」についてです。たとえば阿片(アヘン)は古代ヨーロッパでは「痛み止め」でしたが、19世紀の近代化の中で「危険な薬物」へと変わっていきました。なぜその境界線が変化したのか、そんな社会の謎を追いかけてきました。
A.病理学は、物事をひっくり返して裏側から眺めるような学問です。たとえば犯罪はルール違反ですが、江戸時代の「切捨御免(※)」のように、そのルール自体が時代や場所で変わります。つまり、ある行為が「異常」だと認定される裏側には、人々が暗黙のうちに「正常」だと信じているものや「こうあるべき」という社会の規範が隠れているわけです。
※武士に正当な理由があった場合に限って、無礼なふるまいのあった町人・農民などを切り捨てても罰せられなかった
A.そう考えると、現代は江戸時代に比べて「命の重み」が階級に関係なく、より平等に重んじられていることがわかります。生命倫理ですら普遍ではなく、時代の状況に左右されるわけです。このように、表側からいくら眺めていても見えないものが、裏返してみることで急に透けて見えることがある。それこそが、この分野の何よりの魅力なんでしょうね。
A.私たちは短距離走のタイムのように、一つのスキルだけにこだわって指導しているわけではないので、学生の成長が目に見える機会は多くありません。むしろトータルな力を伸ばせるよう日々教育を行っています。そんな中でも学生の「学びへの態度」や「コミュニケーション」が変わる瞬間は、確かな成長を感じますね。
A.社会科学を学ぶと、社会のしくみがわかるので、どんな職種に進んでも応用できる力が身につきます。細かく言えば、分析力はシンクタンク(※)や公務員で生きますし、調査で培うフットワークやコミュニケーション力は、職業の枠を超えて社会生活全般で役立つので、本当に汎用性の高い力が手に入りますね。
※政治、経済、科学技術など、幅広い分野にわたる課題や事象を対象とした調査・研究を行い、結果を発表したり解決策を提示したりする研究機関
A.文献を読み込む研究を選んだ学生は、粘り強い深い思考力を身につけます。最近は生成AIと議論を交わすのですが、どうしても「浅い」のです。文献研究で培う深さは、AIのレベルを遥かに越えていきます。本格的なAI時代でも、振り回されずに生き抜く人になってほしいですね。
A.出発点は、中学生の時に興味を持ったフロイトの『夢判断』です。高校時代は当時流行っていた河合隼雄先生の本を夢中で読み、大学ではラカンやフーコーも読みました。ただ、私の師匠はアメリカ社会学の巨匠だったので、フランス思想系が好きだった私は、ゼミの中では異端児だったと思いますね。
A.趣味はクラシック鑑賞で、最近は交響曲よりもコレッリやバンショワなどバッハ以前の静かな音楽をよく聴くようになりました。他には万年筆収集も趣味です。ウォーターマンやヴィスコンティなど、力を入れずさらさら書けるものを愛用しています。
A.座右の銘は、あえて挙げるなら、フランス留学中に学んだ「simple et clair(単純かつ明快に)」です。留学でパリに長いこと住んでいたのですが、ものを考えるとき、書くときの鉄則として教わったことばです。
A.もし、いま私が学生なら、プログラミング言語のPythonを学びます。実は最近趣味で勉強しましたが、社会学の統計処理だけでなく、ことばをベクトルに変換して扱う「自然言語処理」の世界を知ったときは本当に感激しました。文理を問わず、この単純かつ明快に書ける言語を習得しておくと、将来きっと役に立ちますよ。


渡邊 拓也 教授
社会学部 現代社会学科
【専門分野】
社会学/西洋史
【研究領域・テーマ】
社会病理学/フランス精神医学史/地域社会学
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