教員紹介
先生のA面・B面
ドイツ文学がひらいた、知性と人間性の世界
AI時代だからこそ必要な「自分で考える基礎体力」と文学の価値

鬼や天狗が登場する不思議な物語の研究を通して、虚構の裏にあるリアルな人間社会を紐解く教授。自身の原点である京都での「余白の時間」や、時代を超える「カワイイ」の力、そしてAI時代にこそ必要なことばの力という武器について語ります。

A.鬼や天狗、怨霊が出る不思議な説話や伝説を研究しています。当時の記録や日記などを分析し、何百年も前の謎が解ける瞬間はとても興味深いですね。昨年は、大谷大学博物館で『はちかづき』や『中将姫』などの絵本や絵巻の展覧会を開きました。登場する人や動物の絵がすごく可愛くて、本当に楽しかったです。
A.鬼や天狗が出るファンタジックな説話の研究ですが、謎が解けると、その物語を書き残し守ってきた「現実の人々」の姿が見えてきます。突飛なお話のはずなのに、周辺資料を分析していくと、意外にも当時のリアルな人間社会が浮かび上がってきます。そこが、この研究の一番のおもしろさですね。
A.物語が現実社会を動かすのは、現代のアニメによる町おこしも過去の説話も同じです。現実の人間が物語を語り伝える一方で、物語もまた多くの人のこころを動かし、社会現象を巻き起こしてきました。虚構の裏にあるリアルな人間社会と、物語が持つ大きなパワーを、時空を超えて実感できるのが、この研究の何よりの魅力です!
A.学生が本当にやりたいテーマを見つけたとき、目の輝きが変わります。指示されなくても自ら資料を探し、楽しそうに仮説を語り出すのです。今も卒論で人魚伝説を追う学生が、人面魚型と人魚姫型の継承の謎をワクワクしながら調べています。そんな熱い姿に出あえる瞬間が、大学で教える一番の喜びです。
A.他にも甲冑や刀剣の描写から武将のキャラクター性を探る院生や、怪鳥「ぬえ(※)」の時代ごとの変容を追う卒業生もいました。自分で見つけたテーマだからこそ、どんな難解な資料も夢中で読みこなし、独自の考察も生き生きとしてきます。そんな「もっと知りたい!」という純粋な熱意が、研究をどこまでも深く、おもしろくするんだと思います。
※日本の伝説に登場する妖怪。『平家物語』などでは、頭はサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、尾はヘビというキメラのような姿で、実在するトラツグミに似た不気味な声で鳴くとされる。
A.国語教員や司書だけでなく、文学科での学びはあらゆる職場で活きます。卒業生も「社会に出て大学の学びの価値がわかった」と語ってくれます。ことばは人間関係の基本であり、相手を理解し自分を伝えるための核だからです。ことばの力を磨くことは、どんな仕事や環境でも自分を支え、人生を切り拓く最強の武器になります。
A.転機は京都への大学進学でした。鬼が出る門も幽霊の屋敷もすぐそばにあり、寺社の宝物館や博物館には複製ではない本物の古典籍が並ぶ街。京都に来たことで、何百年も昔の世界と今自分がいる世界が、一本の線でつながったと感じました。この「時空のつながり」を肌で感じられるほどリアルに実感できたことが、私の研究の原点です。
A.愛猫をなでたり、博物館のユニークなグッズを愛でたり。「カワイイ! 」と言うとき、人は誰も傷つけず、絶望もしません。実は昔の人も大のカワイイもの好きです。ストーリーに関係ない犬や猫が、絵巻に紛れていたりします。昨年の大谷大学博物館での展覧会でも、院生が絵巻のキャラクターを缶バッジにしてくれました。時代を超えて人間のこころを救う「カワイイ」の力は、私の幸福度を上げてくれます。
A.「学に遊ぶ」です。高校教員だった祖父の「鳥が空を飛ぶように魚が水を泳ぐように、人は学問に遊ぶ」ということばが、私の原点です。学ぶことは義務ではなく、人間が自然に持つ楽しみです。大学生で研究に出会ってから、私の人生は一気に楽しくなりました。もちろん努力や苦しさもあります。でも、この「遊び心」を失わないことこそが、研究のアイデアや自分だけのオリジナリティを生み出す源泉なのだと信じています。


佐藤 愛弓 教授
文学部 文学科 教授
【専門分野】
日本文学
【研究領域・テーマ】
日本中世文学/説話文学/仏教文学