よいのですか!

AIに文章の添削を任せると、文体だけでなく、もともと表そうとしていた意味や立場まで変わってしまうことがある。少し前に「How LLMs Distort Our Written Language(arXiv:2603.18161)」という論文が話題になった。文章作成にAIを多く利用した人は完成した文章を「自分の声ではない」と感じる傾向が強かった一方で、その出来への満足度に大きな差はみられなかったそうだ。さらに、科学論文について人間が書いたレビューとAIが生成したレビューでは重視する評価項目に違いがあり、AIが「よい研究」の基準にまで影響する可能性が示唆されている。

旅先のホテルやレストランなど、レビューは身近なところにもあふれている。レビューを書く人も、AIを使う機会が増えているだろう。文章を整えてもらううちに、伝えたかったことや評価の理由まで変わっていないだろうか。そんなことを考えていた折、自分の「よい」を意識する出来事があった。

ある学生が試験に合格したと聞き「試験、合格おめでとう!今度、黄金糖を用意しておきます。」とメールをした。その学生はいつも持ち歩いているほど黄金糖が好きなのだ。返事はこうだった。

 よいのですか! 感謝します!

一瞬「おや」と思う。洗練された文章とは言えない。これが仕事上のメールなら書き直しを勧めるだろう。でも、私は気に入った。「よいのですか」という少し改まった言い方。「感謝します」という力強い宣言。「!」から伝わる喜び。敬意と親しみ、学生の素直さと不器用さがにじんでいてとてもよい。そして、これをよいと思えることに少しほっとする。

AIに添削を頼めば自然で洗練された文章にしてくれる。自分では気づけなかったことに気づかせてくれることもある。晩ご飯の献立だって考えてくれる。しかもレシピ付きだ。ありがたい。これからも「参考」にさせていただきます。とはいえ、何を「よい」とするかは、自分で決められる人間でありたいと思う。

PROFILEプロフィール

  • 源嶋 孝太 講師

    【専門分野】
    数論/保型形式論/表現論

    【研究領域・テーマ】
    保型形式/保型L関数/保型表現

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