コロナによる活動制限のために、例年に比べて現場に出るのが遅かった坪田さんは、現在、それを取り戻すかのように充実した実習体験を重ねています。保育園、幼稚園、助産院など、多様な保育の場に赴いて、授業で習ったことを目の前で体感し、足りなかったことに気づき、反省をして次の機会に生かすという学びのサイクルを上手に活用しています。子どもと保護者に安心してもらえる保育ができるよう、着実に力をつけています。

06 言い過ぎない、助け過ぎない

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川北:この間、ボランティアで助産院に行ったんだよね?
 
坪田:はい。保護者の方が話を聞いている間に幼児さんと遊んでいたんですけど、人見知りでお母さんと離れたくないっていう子が多くて、声をかけても目が合わなかったりしたので、どこまで声をかけて良いのかっていうのがわからなくて難しかったです。でも保育実習で乳児と関わったときに、一方的になり過ぎずにどうやって声をかけるかっていうのが難しいなと思ってたら、「私がここにいるよ、っていう存在だけでもわかってもらうのも大事だよ」って保育園の先生に教えてもらったので、そうやって子どもに寄り添ってたら、最後の方には打ち解けてくれたので、実習で学んだことが生かせたなって思いました。
 
川北:実習先で出会うのは初めての子どもだから、慣れるまで時間がかかるかもしれへんけど、安心できる存在、あなたの味方だよっていう存在としてそこにいるっていうのは大事だね。お母さん達が「子どもを見てもらえるんだったらあのイベントに参加しよう」って思うこともあって、そういう場所はお母さんたちにとってすごく大事だし。とても良い取り組みだと思うので、学生にはぜひ、ああいう場にも行ってもらいたいです。実習も、実践体験活動演習での保育体験も、コロナがひどかった時は行くこともできなかったので、自主的に社会に出て他の大人と関わる機会をどんどん活用してほしいと思います。アルバイトはしてる?
 
坪田:はい、保育園で。
 
川北:また実習とは違う勉強ができる?
 
坪田:そうですね。実習ではやることが決まってたんですけど、その園は結構自由なので、同じ保育園でも違うもんだなって思っています。
 
川北:坪田さんはどんな保育がしたい?
坪田:私も小さい時は保育園に通ってたんですけど、延長保育が寂しかったので、その寂しさも園でカバーできるように1人ひとりに寄り添って、子どもの気持ちに共感できるような保育者になりたいなって思ってます。
 
川北:そういう先生がいてくれると保護者も安心して子どもを預けて働けるね。そういう仕組みが日本の社会の中にきちんとできていくっていうのが理想だね。やっぱり保育園は究極の子育て支援施設だと思うので。
 
坪田:はい。子どもも保護者の方も安心できるような保育がしたいなと思います。
 
川北:私たち教員が、こういう学生を育てたいっていう思いを、坪田さんはすごくしっかりつかんでるよね。実習でつまずいたことは?
 
坪田:幼児さんは自分の意見をしっかり持っていたりするので、子ども同士で言い合いになったときに、どこまで保育者として援助したらいいのかとか、仲裁の仕方が難しいなっていうのは実習に行くたびに思いますね。無理に提案しすぎるのも良くないし、かといって見てるだけでも悪化しちゃうことがあるので、うまく言葉をかけるのが難しいです。
 
川北:そうだよね。そのタイミングも難しいね。もう少し大きくなっていくとだんだん自分たちで解決できるようになっていくんだけどね。そのときは先生に聞いてみた?
 
坪田:はい。反省会でアドバイスをいただきました。無理に自分が思ってることを伝えても子どもはまた違う意見を持ってたりするので、子どもの意見を聞きつつ、言い過ぎないように一言だけ、自分で考えられるようなヒントを伝えるといいよって言って下さって。今までは解決策を言わなきゃって思ってたんですけど、自分たちで考えることも必要だなって感じて、ヒントを伝えるのが大事だと思いました。
川北:そういう過程があって、自分たちで考えられるようになるまでの筋道が、子どもたちの中にもあるんだよね。私たちが学生と関わるのと同じやなって思うことがよくあるよ(笑)。やっぱり学生に自分で考えてもらいたいことが多くあるし、ここまではヒントを言うけど、最後は自分で考えて自分で決めていく。そういう力を4年間でつけてもらえたらなって思っています。これって、先生たちが保育の現場で思っていることと同じなんですよ。言い過ぎない、助け過ぎないというのも大事なんですよね。卒業研究についても、こんなことをしたいとか、こんな技術をもっと身に付けたいっていう希望があれば、私たちはそのためにいるので、いくらでも言ってください。力を持った学生を育てるのは私たちの生きがいなので、いっぱい利用してくださいね。

PROFILEプロフィール

  • 川北 典子

    教育学部 教育学科 教授



    京都府生まれ。1985年京都女子大学大学院家政学研究科児童学専攻修了。龍谷大学短期大学部社会福祉科講師、関西保育福祉専門学校講師、平安女学院大学短期大学部教授を経て、2018年大谷大学教育学部教授。
    研究内容については、次の2つ。
    (1)関西圏の児童文化財について、主に明治以降の歴史を辿り、現代の子どもの文化に活かす方法を考えてきた。具体的には、絵本・児童文学・玩具・紙芝居・人形劇を研究領域としている。
    (2)絵本や玩具等の児童文化財を有効的に活用した子育て支援学の構築を考えている。子どもや若者も含めて、現在支援される人々が、今後支援する側に廻っていけるような循環型の支援の仕組みをつくっていきたいと思っている。



  • 幼児教育の現場に出られる体験学習の多さに惹かれ大谷大学を受検したが、1年生の時はコロナ禍による活動制限のため、実際に現場に出られたのは例年よりも遅かった。その遅れを取り戻すかのように、現在、充実した実習体験を重ねている。
    保育園、幼稚園、助産院など、多様な保育の場に赴いて、授業で習ったことを目の前で体感し、足りなかったことに気づき、反省をして次の機会に生かすという学びのサイクルを上手に活用している。将来は、子どもと保護者に安心してもらえる保育士をめざす。