お寺の息子に生まれたという「きっかけ」を生かして谷大にやってきた岡田君は、友達や先生にも恵まれ、楽しい毎日を過ごしています。先生と話していても、即座に自分の言葉で返答ができるのは、普段からいろいろ考えている証。コロナ禍の中でも「得られるもの」に喜びを見出し、価値あるものへと認識を変えていく姿勢は、先生をして「偉い」と言わしめるほどです。岡田君が、「学ぶと人に優しくなれる」という真宗学をどう追究していくのか、今後の探究に注目です。

06 『鬼滅の刃』で問う「人間とは何か」

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岡田:この前、一楽先生の清沢満之先生に関する講演会を聴かせていただいて、「問いを持つことが大切だ」って話を聞いて、それがストンと入りました。問いを持ち続けることは、大切っていうのもあるし、楽しいなっていうのもありますね。
 
一楽:よう聞いてくれたね。あのときは、前半に『鬼滅の刃』の話をし過ぎて、言いたいことがボロボロになったんやけどな。
岡田:僕も『鬼滅の刃』は全部見ましたけど、あれはいろんな見方ができますね。アニメとして楽しむこともできるし、主人公が問いを持ってるっていうのとか、そういう方面から見ると、もう一度楽しめる。違う方面から見ると、「この作品ってここが面白いと思ってたけど、こういう楽しみ方もできる」ってわかって、見方を変えるって大切だなって思いました。
 
一楽:あの話を何かの授業でしゃべったらね、仏教と結び付け過ぎやって、学生から顰蹙(ひんしゅく)を買ったわ(笑)。でも僕はあれ、「人間とは何か」っていう話やと思ってるんや。だって、鬼も元々人間やったし、どうやったら鬼は人間に戻れるかって、その境目って、危ういよね。姿形は人間でも、鬼として生きているかもしらんから。
 
岡田:鬼より鬼のような人間もいますしね……。結び付け過ぎですかねえ?
 
一楽:映画の「無限列車編」、あれは、有限と無限っていう問題やと思うんや。鬼は無限を求めていて、人間は有限なんやけど、その有限の中に続いていく無限性があるよね。だから、限りがあるからこそ無限っていう世界があるなと思って。
 
岡田:……有限の中に無限があるっていうのは、すごい考え方ですね。今、鳥肌がたちました(笑)。つながっていることを無限って表現するのは、考えつかないです。先生は『鬼滅の刃』は詳しいんですか?
 
一楽:自粛期間中に下の息子に薦められて、アニメの26話を全部見たんですよ。そしたら家族全員でハマってしまって。アニメなんて、久しぶりに見たな。映画も、上映初日に見に行きました。コミックスも全巻読みましたよ。
 
岡田:そういう意味では、自粛期間中でも新しいことを発見できたっていうメリットはありますね。良かったとは言えないかもしれないですけど、自粛期間でも新しいことができるって考えたら、一段階も二段階も成長できる機会だったのかなって思えますね。
 
一楽:そういう前向きなところは、やっぱりお父さんに似てるな。
 
岡田:いや、僕は父ほどでは……(苦笑)。
一楽:似てるって言われるの嫌?
 
岡田:いや……どうですかね……(笑)。でも、どんな人からも学ぶことはあると思います。
 
一楽:どんな人からでも(笑)。君は、そういう意味ではバイト先でもいろいろ学んでるんやろうな。こうやって話してても、自分の言葉がどんどん出てくるっていうのは、普段から考えているってことなんやろうな。
 
岡田:いえ、僕はなかなか言葉に詰まることが多いです。いろいろ学ぶことが多いです。

PROFILEプロフィール

  • 一楽 真

    文学部真宗学科 教授



    1957年石川県生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、大谷大学教授。
    研究のテーマは「親鸞の仏弟子論」。仏教はどのような生き方を人間に開くのか、それを親鸞の生涯と思想を通して尋ねることを目的としている。方法としては、親鸞がどのようにこの世を見つめ、どのように人間の問題を捉えていたかを、『教行信証』をはじめとする親鸞の著作を通して明らかにしていく。あわせて、親鸞を生み出した歴史と、その時代についても考察を加えていく。



  • お寺の息子に生まれたが、元々好きな分野は理系だったため、大谷大学を受験するつもりはなかった。しかし将来自分にしかできないことを考えると、自分の境遇を生かしてやってみようかと思うようになり、ギリギリまで考えた末、受験を決意した。
    先生と話していても、即座に自分の言葉で返答ができるのは、普段からいろいろ考えている証。コロナ禍の中でも「得られるもの」に喜びを見出し、価値あるものへと認識を変えていく姿勢で、「学ぶと人に優しくなれる」という真宗学をどう追究していくのか、今後の探究に注目。