お寺の息子に生まれたという「きっかけ」を生かして谷大にやってきた岡田君は、友達や先生にも恵まれ、楽しい毎日を過ごしています。先生と話していても、即座に自分の言葉で返答ができるのは、普段からいろいろ考えている証。コロナ禍の中でも「得られるもの」に喜びを見出し、価値あるものへと認識を変えていく姿勢は、先生をして「偉い」と言わしめるほどです。岡田君が、「学ぶと人に優しくなれる」という真宗学をどう追究していくのか、今後の探究に注目です。

05 意味不明だった言葉が、パズルのようにつながる楽しさ

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一楽:今後の目標や将来については?
 
岡田:真宗学を学ぶので、大学卒業までは『歎異抄』を覚えたいなってすごく思ってます。加来先生が、「僕は大学院に入る学生に『歎異抄』を覚えさせた」って仰ってて、じゃあ僕も覚えたらいいかなあって思って。やっぱり、覚えられたら、深く学べる気がするので。
それでも将来の夢っていうのは全くなくて、今は地元に帰って寺を継ぐか、こっちに残って、東本願寺(宗務所)とかで働こうかなって思いますけど、親からは、真宗学ひとつにこだわるのもいいけど、いろんな視野を持ってね、って言われてます。正直、将来は全然決まってない状態で大学に来たんです。
 
一楽:君の地元は、いいところなんだよな。星がよく見えるし、アユもわさびも美味しいし。
 
岡田:そうなんです。SLも走ってるので、写真を撮りに来る人達もいて。地元を離れてから、津和野ってこんなにきれいなところだったのかって思いました。自粛期間中も、隣の家とも何十メートルも離れてるんで、マスクをしないで思いきり息ができるんですよ。水も美味しいし。
 
一楽:「ここはコンビニと現金以外はなんでもある」っていうのがお父さんの口癖なんだよな。「ここに来ると命が洗われるでしょ」って言うんだよね。「一楽さんの健康のためにもいい」って言って、またお寺に呼ばれたりしてね。でも人口は減っていくし、門徒さんも減ってってるから、簡単に「お寺継ぎます」とも言えないよね。
 
岡田:そうなんですよね。お寺だけでは食べていけないというか、お寺以外のこともできないとダメだなとは思います。それもあって将来が決められないところもあります。
 
一楽:でも大好きでしょ、津和野。
 
岡田:そうですね。でも今学んでいるだけでも、真宗について知ることが楽しくて、もしかしたら大学院に行きたいなって思いも出てくるかなって気がしています。今までも勉強は好きだったんですけど、家に帰って積極的に勉強するってことはあまりなかったんです。でも今はわからない言葉があったら、ちょっとあの言葉について調べてみようとか思うようになったので、合ってたのかな、自分が学びたいことだったのかなって思います。
 
一楽:覚えていくと、気になる言葉っていうのが出てくるよね。例えば『正信偈』とかも、意味も分からないままに読んでいても、ある時ぱっと言葉が出てくる。言葉の方が僕らを掴んでくるっていうのがあります。それが起こりつつあるんだね。
岡田:『正信偈』は、呪文のようにわからない言葉だらけだったんですけど、習った言葉が入ってると、パーツがつながってきてすごい楽しいっていうか、『正信偈』ってこういうこと言ってたんだ、っていうのが少しずつ分かってくるのがすごく楽しいです。
 
一楽:それは大事やね。じゃあこれやりたいっていうのも、だんだん明確になってくると思いますわ。

PROFILEプロフィール

  • 一楽 真

    文学部真宗学科 教授



    1957年石川県生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、大谷大学教授。
    研究のテーマは「親鸞の仏弟子論」。仏教はどのような生き方を人間に開くのか、それを親鸞の生涯と思想を通して尋ねることを目的としている。方法としては、親鸞がどのようにこの世を見つめ、どのように人間の問題を捉えていたかを、『教行信証』をはじめとする親鸞の著作を通して明らかにしていく。あわせて、親鸞を生み出した歴史と、その時代についても考察を加えていく。



  • お寺の息子に生まれたが、元々好きな分野は理系だったため、大谷大学を受験するつもりはなかった。しかし将来自分にしかできないことを考えると、自分の境遇を生かしてやってみようかと思うようになり、ギリギリまで考えた末、受験を決意した。
    先生と話していても、即座に自分の言葉で返答ができるのは、普段からいろいろ考えている証。コロナ禍の中でも「得られるもの」に喜びを見出し、価値あるものへと認識を変えていく姿勢で、「学ぶと人に優しくなれる」という真宗学をどう追究していくのか、今後の探究に注目。