お寺に生まれ、なんとなく自分が家を継ぐものだと思って真宗学を学びにやって来た佐々木君を迎えたのは、アメリカで仏教に出会ったConway先生です。仏教の教えによって救われた経験を持つ先生は、英語でもっと真宗を広めていきたいと考えています。以前から英語に興味があった佐々木君も、将来はそういう方面で働きたいと思うようになりました。毎日がとても楽しい寮生活を送りながら、さらに英語力を磨いていく予定です。

08 真宗の教えを英語で語れる人を増やしたい

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佐々木:先生の研究していることは何ですか?
 
Conway:大きく言うと、3つのことを研究しています。1つは親鸞の思想背景を知るために、道綽禅師という中国の浄土教の祖師の研究を博士課程のときから続けています。親鸞は道綽からかなり影響を受けていると思いますので。もう1つは、親鸞の思想が現代に伝わってくるために大きな役割を果たした曽我量深(そがりょうじん)という先生の研究をして、彼の英訳をしたり、思想内容について海外で紹介しようとしています。3番目は、ここ8年くらいずっと大谷大学で月1回公開セミナーとして、鈴木大拙先生の英訳の『教行信証』を読む会をやってきていますが、その鈴木大拙先生の英訳と他の英訳を並べてみていくことによって、親鸞の思想がどのように明らかになるのかっていうことを研究しています。
そのプロセスの中で、『教行信証』の英文の解説書が必要だと感じるようになって、やがてはそういう解説書を作りたいなと思っています。その下準備を今コツコツとやっています。『教行信証』も1回、字面を読んだだけでは意味が分からない言葉になっていまして、5回くらい英訳はされているんですけど、僕らも『教行信証』を読むときは解説書を必ず参考にして読むわけですから、アメリカ人がその英訳を読んでもわかるわけがない。それで英語で解説を加えて、外国の人も読めるようにしたいなと思っています。
佐々木:日本人の英語じゃなくて、海外の人の英語って違いますよね。
 
Conway:母国語って、ものすごい強いですよ。僕は16年こっちにいますけれども、まだ自由に日本語を操れるようにはなってないですね。歯がゆい時がまだあるんですよ。それが母国語だと、本当に自由に表現できます。たまたま英語が母国語という身に生まれたわけですから、その能力を使って、真宗の教えを伝えたいなと。でも、日本語が母国語で英語が使える人も随分と大きな貢献ができると思うんですよね。大谷派にそういう人たちはまだ少ないので、そういう人を増やして、みんなで英語で伝えていくことをやっていきたいなと僕は思っていますね。
 
佐々木:でも日本人が思っている英単語でも、向こうからしたらニュアンスが違うことって結構あるじゃないですか。特に仏教は細かなところだし。
 
Conway:そうですね。仏教の言葉の意味領域はかなり狭いですから、「信心」という言葉でもどんな英訳を当てるかで大議論になりましてね。一つの言葉を「これ」と決めるのは、なかなか難しいでしょうね。「信心」ということになると、どうもピタッとハマる英語はないんですよ。でもそういうことを受けて、いろんな人がいろんな視点でいろんな角度から内容を語って明らかにするということが大事だと思っています。一緒に英語で語れる人が増えることを切に願っていますのでね、一緒に勉強しましょう。
 
佐々木:はい!もっと勉強していつか共同でやってみたいですね。

PROFILEプロフィール

  • マイケル コンウェイ

    文学部 真宗学科 講師



    1976年アメリカ合衆国イリノイ州生まれ。1997年ノースウェスタン大学卒業(歴史学専攻)。2009年大谷大学大学院博士後期課程満期退学。2009年大谷大学文学部任期制助教着任(2011年まで)。2011年博士号取得、東方仏教徒協会(The Eastern Buddhist Society)編集者着任(2015年まで)。現在、大谷大学文学部専任講師(真宗学)。
    親鸞の思想の背景を知るために、中国浄土教の祖師、とりわけ隋・唐代に活躍した道綽を中心に研究を進めてきた。また、親鸞の思想が現代にまでどのように展開されてきたかということを視野に入れ、曽我量深、金子大栄、安田理深に代表される真宗大谷派の近代教学者の研究にも取り組んできた。更に近年では真宗の教義と教学をいかに英語で表現すべきかという問題について考えており、鈴木大拙が英訳された『教行信証』を始めとして、親鸞の書物の英訳を比較し考察している。



  • お寺に生まれ、なんとなく自分が家を継ぐものだと思って真宗学を学ぶため大谷大学を受験。苦手な正座の訓練も兼ねて入った茶道部の活動に、毎晩が修学旅行の夜みたいと思えるほど楽しい寮生活に、充実した毎日を送っている。
    洋楽好きの親の影響で小さい頃から海外のバンド音楽をよく耳にしていたことをきっかけに英語に興味を持ち、将来は英語で真宗を広められる仕事をめざすことも視野に入れ、英語力を磨いていく予定。