お寺に生まれ、なんとなく自分が家を継ぐものだと思って真宗学を学びにやって来た佐々木君を迎えたのは、アメリカで仏教に出会ったConway先生です。仏教の教えによって救われた経験を持つ先生は、英語でもっと真宗を広めていきたいと考えています。以前から英語に興味があった佐々木君も、将来はそういう方面で働きたいと思うようになりました。毎日がとても楽しい寮生活を送りながら、さらに英語力を磨いていく予定です。

07 若い頃にお寺で聞いた話が心に響いた

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佐々木:先生は、アメリカでお寺に通ってたんですよね?
 
Conway:そうなんです。初めてお寺に行ったのは高校生の時です。日本語の授業の一環として、真宗のお寺に連れて行っていただきました。そこの先生の話を聞いて面白いなと思ったんです。でもカトリックの家でしたし、すぐにお寺に通うようになったわけではなかったんです。その後大学に行って、家族の問題や、自分自身の個人的な問題につまずいたときに、あのお寺を思い出してもう一回行きたいと思って探したんですけど、結局見つからなかったんです。それでたまたま電話帳で見つけたお寺を訪れたら、そこで聞いた話がものすごい心に響いて、探していた答えがここにあるんじゃないかと感じて学び始めたんですよ。それから5,6年間そのお寺に通って、少し自分の人生の問題を片づけて、2003年にやっとここに入学できるだけの日本語能力がついて、日本にやってきました。
 
佐々木:そこのお寺には、アメリカ人の住職さんがいたんですか?
Conway:僕が行った時は、日本生まれの住職さんが1人と、大谷大学で教師資格を取って手伝いをしていた日系3世の女性が教えておられました。その女性のもとで学んでいて、もっと勉強したいと言ったら谷大に行けということで、ここに来ましたね。
 
佐々木:そこは寺子屋みたいになってるんですか?
 
Conway:いえ、あそこは、戦争が起こったときに西海岸にある強制収容所に入れられた日本人が、収容所から出たいなら内陸の方に行きなさいということで、多くの人たちがシカゴへと移り住んでいったときに、ちょうどそのお寺が受け皿として作られたんですね。建物自体は、ルター派の教会を改造して阿弥陀様を安置していたんです。多くの日系アメリカ人がそのお寺を支えていて、日系コミュニティの1つの軸のような役割を果たしていました。
私が行った頃は、アメリカで仏教がはやりだして、日系でない人たちもたくさんお寺に行くようになってきていた時期で、かなり歓迎されていました。日曜礼拝にはあまり行かなかったんですけど、週に1、2回のペースで先生が勉強会を開催していましたので、そこに毎週のように通いました。
 
たいてい仏教の書物の読み合わせをして、その意味について語り合って、自分たちの生活上の問題とこの教えはどうつながるのかっていうことを話して学んでいましたね。真宗に限らず、広い範囲の仏教を大事にしていきたいということで、いろんな仏教の書物を英訳で読んで語り合って、いつも先生が念仏で落ち着かせて、という感じでした。
 
その時は座禅も組んでましたね。アメリカで言う仏教はたいてい座禅がメインですから、座禅をして心を落ち着かせて善い人になろうという気持ちで仏教を学び始めたんですけれども、最初に聞いた教えは、いわば自分を変えなくてもありのままの自分で良いんだっていう教えのように聞こえて、非常にほっとしたんです。先生は非常に優しい方でしたけれども、自己中心的なものの見方を覆すような厳しいことを何度もしていただきまして、大いに育てられた場所です。

PROFILEプロフィール

  • マイケル コンウェイ

    文学部 真宗学科 講師



    1976年アメリカ合衆国イリノイ州生まれ。1997年ノースウェスタン大学卒業(歴史学専攻)。2009年大谷大学大学院博士後期課程満期退学。2009年大谷大学文学部任期制助教着任(2011年まで)。2011年博士号取得、東方仏教徒協会(The Eastern Buddhist Society)編集者着任(2015年まで)。現在、大谷大学文学部専任講師(真宗学)。
    親鸞の思想の背景を知るために、中国浄土教の祖師、とりわけ隋・唐代に活躍した道綽を中心に研究を進めてきた。また、親鸞の思想が現代にまでどのように展開されてきたかということを視野に入れ、曽我量深、金子大栄、安田理深に代表される真宗大谷派の近代教学者の研究にも取り組んできた。更に近年では真宗の教義と教学をいかに英語で表現すべきかという問題について考えており、鈴木大拙が英訳された『教行信証』を始めとして、親鸞の書物の英訳を比較し考察している。



  • お寺に生まれ、なんとなく自分が家を継ぐものだと思って真宗学を学ぶため大谷大学を受験。苦手な正座の訓練も兼ねて入った茶道部の活動に、毎晩が修学旅行の夜みたいと思えるほど楽しい寮生活に、充実した毎日を送っている。
    洋楽好きの親の影響で小さい頃から海外のバンド音楽をよく耳にしていたことをきっかけに英語に興味を持ち、将来は英語で真宗を広められる仕事をめざすことも視野に入れ、英語力を磨いていく予定。