障がい者施設で実習を始めた行徳さんの初日は、大泣きで終わりました。利用者さんとコミュニケーションが取れず、孤独で切なくて、1か月という長い期間に、不安しかありませんでした。それでも職員さんに倣い、気持ちを切り替えるようになってからは、毎日がとても楽しくなったと言います。一日に何度も名前を聞いてきたり、しゃべりかけてくれる利用者さんが愛しくて、定まった将来の道に向けて、今後は資格試験の勉強に励みます。

01 知り合いが誰もいない大学に来た

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中野:1年生の時の対談で、家が遠いっていう話をしてましたよね。なんで伊丹から大谷大学に来ようと思ったの?
 
行徳:京都が好きだったのと、小学校から高校までは家から近かったので、遠いところに行ってみたいと思ってました。大谷大学にしたのは、家に届く進学案内のパンフレットを見たら「ここ行きたい!」ってピンと来て。それでオープンキャンパスにも5〜6回来て。ここしか考えてなかったです。合格したとき、お母さんは喜んでちょっと泣いてましたね。
中野:それは、頑張ってた姿を見てはったからだね。夢が叶ったからね。ほんまに、おめでとうだったね。それで、1年生はどうだった?
 
行徳:周りの人が大人すぎて、この人は自分と同じ年齢なんだろうかって思いました。髪の毛とかも染めてて。
 
中野:緑の髪の子もいたしね。
 
行徳:そう!そしたら入学式の時に「写真撮りましょうか」って声をかけてもらって、絶対年上だと思いました。
 
中野:じゃあ最初は不安だったね。
 
行徳:はい。同じ高校から来た子がいなかったってこともあって、授業が始まってからも、わけわからんくて。社会なんとかっていう、内容がわからないタイトルの授業ばっかりで。2年生に必須の授業だということを知らなくて、3年生で取った授業もありました。
 
中野:社会学の勉強ばっかりになって、大変だった?1年生のゼミでは、チームに分かれてインタビューをしたよね。全然知らない人にインタビューした経験はどうでした?
 
行徳:5人一組だったので、人任せにしちゃって……。いろんな人がやってくれて、ついて行くのが精一杯でした。1人ずつ質問を言っていく時も、頭が真っ白になって、確か何も質問できなかったと思います。
中野:じゃあみんなに助けてもらいながら乗り切ったって感じなのね。でも入学式では友達はいなかったけど、授業の時はいっぱい助けてくれる人がいたのね。
 
行徳:そうです。しゃべってみたらめっちゃフレンドリーな人が多いから、まずはしゃべってみるもんやなって思いました。
 
中野:そうだよね。思い切ってせっかく地元じゃない大学に来たんだから、しゃべってみると新しい友達ができて楽しいってことがわかったっていう生活はよかったですね。

PROFILEプロフィール

  • 中野 加奈子

    社会学部 コミュニティデザイン学科 准教授



    佛教大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会福祉学・佛教大学)。医療法人社団敬誠会合志病院(医療ソーシャルワーカー)、佛教大学福祉教育開発センター(契約専門職員)、(財)ソーシャルサービス協会ワークセンター(非常勤訪問相談員)を経て、現在に至る。社会福祉士。
    私たちの社会に広がる貧困・格差問題の解決と、人間らしい暮らしの実現を目指すソーシャルワーク論を研究している。社会学などで取り組まれてきた生活史研究に学びながら、ソーシャルワークにおける生活史の活用を「生活史アプローチ」と位置づけ、理論的整理と具体的な実践方法の構築を目指している。また、深刻化する貧困問題の実態解明にも取り組んでいる。



  • 知り合いが誰もいない、自宅から遠い大学に通い始めた頃は不安だったものの、思い切って話しかけてみたことで助け合える友だちにも恵まれた。
    3年生からはゼミでの学びも始まり、また障害者施設での実習も経験した。中学生の時から思い続けた「高齢者の人と関わりたい」という将来の道が、より明確なものになってきた。今後は、資格試験の勉強に励む。