障がい者施設で実習を始めた行徳さんの初日は、大泣きで終わりました。利用者さんとコミュニケーションが取れず、孤独で切なくて、1か月という長い期間に、不安しかありませんでした。それでも職員さんに倣い、気持ちを切り替えるようになってからは、毎日がとても楽しくなったと言います。一日に何度も名前を聞いてきたり、しゃべりかけてくれる利用者さんが愛しくて、定まった将来の道に向けて、今後は資格試験の勉強に励みます。

02 孤独に耐えながら過ごした半年間

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中野:コース選択で、福祉コースにしようと思ったのはなんで?
 
行徳:前々から決めてたんです。中学生の時に職業体験で行ったデイサービスが楽しくて、高齢者の人と関わりたいなって思って。
 
中野:例年やったら2年生で実際の福祉の現場を見てから実習先を決めるんだけど、今年はコロナ禍で行けなかったから、中学生の時にそういう経験をしていて良かったですね。行徳さんは1年生の冬に福知山のフィールドワークに参加してくれたよね。あのときはどうでした?2泊3日の予定で、重い障がいのある方が入所されてる施設で体験をしてもらったんだけど。
 
行徳:障がいのある人の施設に行くのは初めてで。障がいを持ってるいろんな方がいて、私は軽度の方のところに入らせてもらってたんですけど、利用者さんたちがめっちゃしゃべりかけてくださって。施設では工場とかでやってるって思ってたラベル貼りの作業を利用者の皆さんが全部手作業でやってて、そういうのもいいなって思いました。
中野:みんなが一生懸命手を動かして頑張ってはるんよね。その時に初めて、障がいのある人と一緒に時間を過ごしたんやね。それで2年生になって、福祉の勉強がめっちゃ増えたでしょ?どんな勉強をしましたか?
 
行徳:前期はオンラインやったから、課題出すために毎日パソコンとにらめっこですよ。レジュメがあって、それを読んでレポートを書く課題が一番多かったです。
 
中野:そっか。じゃあまた孤独な闘いだったね。
 
行徳:そうなんです。大学生なのに、出かけるところもないし、毎日同じ生活で。お昼に起きて、「今日も課題か」って憂鬱で。友達と電話をつなぎながら一緒に課題をやるくらいでしたね。
 
中野:孤独に耐えながら前期を過ごしたんだね。でも他の大学は、1年間ずっとオンライン授業っていう所もありますからね。大谷大学は2020年度前期末から切り替えましたから、会える時間を確保できたのは良かったよね。教室で授業ができるってなったときはどうだった?
 
行徳:正直大学に行くのは嬉しかったんですけど、90分の授業を聞くのか……って思っちゃって(笑)。やっぱり眠くなりました(笑)。休み時間は友達と喋って秒で終わるのに、授業は時計見るたびに2分くらいしか進んでなくて。
 
中野:そうなんだ(笑)。まあ、福祉の授業は普段使わない専門用語が出てきたり、結構難しいからね。「社会保障論」とか。
 
行徳:とりあえず、黒板に書いてあることを写すって感じでしたね。
 
中野:でも難しいけど、「あの制度、実はめっちゃ大切」っていうのが最近わかるようになってきたんじゃない?
行徳:そうなんです!
 
中野:良かった(笑)。あとは「地域福祉論」も2年生での履修かな。
 
行徳:はい。難しかったです。グループディスカッションがあったんですけど、何も思い浮かばなくて。それも人任せで……。
 
中野:そこでも助けてくれる人がいて良かったね(笑)。

PROFILEプロフィール

  • 中野 加奈子

    社会学部 コミュニティデザイン学科 准教授



    佛教大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会福祉学・佛教大学)。医療法人社団敬誠会合志病院(医療ソーシャルワーカー)、佛教大学福祉教育開発センター(契約専門職員)、(財)ソーシャルサービス協会ワークセンター(非常勤訪問相談員)を経て、現在に至る。社会福祉士。
    私たちの社会に広がる貧困・格差問題の解決と、人間らしい暮らしの実現を目指すソーシャルワーク論を研究している。社会学などで取り組まれてきた生活史研究に学びながら、ソーシャルワークにおける生活史の活用を「生活史アプローチ」と位置づけ、理論的整理と具体的な実践方法の構築を目指している。また、深刻化する貧困問題の実態解明にも取り組んでいる。



  • 知り合いが誰もいない、自宅から遠い大学に通い始めた頃は不安だったものの、思い切って話しかけてみたことで助け合える友だちにも恵まれた。
    3年生からはゼミでの学びも始まり、また障害者施設での実習も経験した。中学生の時から思い続けた「高齢者の人と関わりたい」という将来の道が、より明確なものになってきた。今後は、資格試験の勉強に励む。