障がい者施設で実習を始めた行徳さんの初日は、大泣きで終わりました。利用者さんとコミュニケーションが取れず、孤独で切なくて、1か月という長い期間に、不安しかありませんでした。それでも職員さんに倣い、気持ちを切り替えるようになってからは、毎日がとても楽しくなったと言います。一日に何度も名前を聞いてきたり、しゃべりかけてくれる利用者さんが愛しくて、定まった将来の道に向けて、今後は資格試験の勉強に励みます。

03 フレンドリーな人が多い施設に決めた

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中野:なぜ私のゼミを選んでくれたの?
 
行徳:ゼミのテーマが児童福祉じゃないし、福祉の歴史を知りたかったので。
 
中野:そっか。今年は、戦争と貧困とソーシャルワークっていうテーマでやっているんですよね。戦争って、実は福祉とすごく関わっていて。日本の福祉も戦争の影響を受けて大きく変化しました。戦争は国家の名のもとによる人の命を奪う行為で、本来福祉とは両立できない。ですから戦後、戦争を反省する中でどうやって人権を大事にするようになってきたのかってことをまず学んでもらうんですね。
それで後期は、そのような歴史の流れの中で、今どんな問題が起こってるのか考えようってことと、権利が守られるっていうのはどういう社会なのか、そこでソーシャルワーカーはどういう役割を果たすのかっていうのを考えてもらおうと思っています。そういう勉強とともに実習があるわけだけど、実習先は、児童福祉、障がい者福祉、高齢者福祉っていう領域の中から選ぶんですけど、障がい者って希望は揺るがなかった?
 
行徳:はい。子どもよりお年寄りが好きやから、「児童領域は違うな」って思って。高齢者と障がい者のどっちかの領域にしようかって考えたんですけど、福知山の障がい者施設に行って、フレンドリーな利用者さんが多いなって印象に残ってたので、障がい者施設に行きたいなって思ったんだと思います。
 
中野:フィールドワークは、ほとんど何の情報も持たないまま「行っといで」って言われたんだもんね。だからなおさら、あちらでの出会いがインパクトがあったってことかな。3年生の前期になったら、実習計画を立てたり、実習に必要な知識とかスキルを身につけるために、「社会福祉援助技術現場実習指導2」を受けたと思うんですけど、印象に残ったことはありますか?
 
行徳:自分の実習先が決まったら、行く施設のこととか調べるじゃないですか。ある程度知識を得た状態で実習に行くから心構えができるし、前々から調べて行くのって重要やなってわかりました。調べるの楽しいなって思ったし。
中野:どういう利用者さんがいらっしゃるのかとか、調べてから実習計画を立てますからね。
 
行徳:でも、支援計画みたいなので、自分が支援者やったらどういう対応をするかって考えたときに、友達は「こうしたらいいんちゃう?」って発言してたんですけど、自分はそういうのが思い浮かばんくて、もっと自分の考えを持たなアカンなって思いました。まわりがすごく発言できてんのに、自分は全然できひんなって、ちょっと悔しくなって。いろいろ勉強しなアカンなって思いました。
 
中野:そっかー。いっぱい思ってることあるのにね。そこを何とか克服したい、自分ももうちょっとできるようになりたいって思ったんだね。

PROFILEプロフィール

  • 中野 加奈子

    社会学部 コミュニティデザイン学科 准教授



    佛教大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会福祉学・佛教大学)。医療法人社団敬誠会合志病院(医療ソーシャルワーカー)、佛教大学福祉教育開発センター(契約専門職員)、(財)ソーシャルサービス協会ワークセンター(非常勤訪問相談員)を経て、現在に至る。社会福祉士。
    私たちの社会に広がる貧困・格差問題の解決と、人間らしい暮らしの実現を目指すソーシャルワーク論を研究している。社会学などで取り組まれてきた生活史研究に学びながら、ソーシャルワークにおける生活史の活用を「生活史アプローチ」と位置づけ、理論的整理と具体的な実践方法の構築を目指している。また、深刻化する貧困問題の実態解明にも取り組んでいる。



  • 知り合いが誰もいない、自宅から遠い大学に通い始めた頃は不安だったものの、思い切って話しかけてみたことで助け合える友だちにも恵まれた。
    3年生からはゼミでの学びも始まり、また障害者施設での実習も経験した。中学生の時から思い続けた「高齢者の人と関わりたい」という将来の道が、より明確なものになってきた。今後は、資格試験の勉強に励む。