歌も語学も陸上も、なんでもこなす多田さんが生涯の研究対象に選んだのは、仏教でした。夢がかなわず挫折したとき、仏教の言葉が心の支えになったと言います。「これをやろう」と決めた多田さんの行動は、誰にも止められません。多分野の講演会や展示会に足を運んで見聞を広め、海外で語学力やコミュニケーション能力も磨いてきました。先生方も、明確な目標を描いて常に自らを向上させようとする多田さんの今後を、心から楽しみにしています。

01 仏教の教えが、挫折している心に響いた

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新田:どんな大学生活を送ってますか?
 
多田:サークルはやってなくて、教員志望なので教職課程の授業を取ってます。
 
新田:なんで先生になりたいのですか?何の先生?
多田:最終的には国語と宗教と英語の免許を取って、教師をしたくて。まず高校や中学で教えて、その後は仏教の研究がしたいです。本当は教授になりたいです。
 
新田:そうなんですか。少子化なんでね、大学も大変だからあまりお薦めはしないんですけど、それでも良ければ……。
 
多田:はい(笑)。先生はなぜ教員になろうと思われたんですか?
 
新田:いや、ふと気づいたらなってたという感じで。本当に。
 
多田:ははは。私は新田先生の授業は取ってないんですけど、私の入学前課題を採点してくださったんですよね。専門は何ですか?
 
新田:初期仏教です。
 
多田:いいですね、仏教の研究。
 
新田:そうですか?なんで仏教に興味を持ったんですか?家はお寺じゃないんですよね?
 
多田:はい、違います。仏教には、中3くらいから興味を持ち始めました。私、陸上をやってたんですけど、ジュニアオリンピックに出場したり、全国大会で入賞したりとかしてたんです。でも中3のとき、全国大会出場をかけた京都府の大会に出て、そこで0.07秒足りなくて、自分だけ全国大会に出られないっていう経験をしまして。その時にすごく落ち込んでて、挫折している自分の心に響いたのが、仏教のカレンダーみたいなのに書いてあった言葉で。そこから、仏教の考え方って面白いなと思って興味をもちました。
 
新田:若い人は仏教や宗教に怖いとか怪しいっていうイメージを持っている人が多い感じなんですけど、そういうのはなかったですか?
 
多田:最初はマイナスイメージを持っていたのかなとは思うんですけど、私、中学・高校が大谷大学の系列校だったんです。そこでの授業を通して、仏教の考え方って面白いなと思いました。起こる事柄は、良いことも悪いことも、物事に執着してるから苦しみが生まれるんだって。苦しみを生んでるのは自分自身、自己の在り方っていうところとか。そういうのがすごく面白くて。結構身の回りに仏教の考え方があふれていたり、仏教の考え方を知ることで自分の気持ちが楽になったりだとか。結構シンプルに捉えられると思うので、面白いなと思いました。
 
新田:ほう……。多田さんみたいな学生さんばっかりだったら授業も楽なんでしょうね……。

PROFILEプロフィール

  • 新田 智通

    文学部 仏教学科 准教授



    2004年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。2008年博士(文学)。
    おもに19世紀から20世紀前半にかけて構築された仏教理解のなかには、近代西洋的な考え方の影響を受けているものが少なくない。そうした理解の多くが、まだ十分に問い直されることのないまま残されている。目下のところは「ブッダ観」を中心に、かつての定説を問い直すことを主要なテーマとしている。



  • 歌に語学に陸上に、さまざまなことに挑戦してきた。夢がかなわず挫折したとき仏教の言葉が心の支えになったことから、仏教に興味を持ち始めた。大谷大学への進学を決めたのは、オープンキャンパスで先生のお話を聞き、仏教への興味がさらに深まったから。
    多分野の講演会や展示会に足を運んで見聞を広め、海外で語学力やコミュニケーション能力も磨いてきたことを生かし、明確な目標に向かって常に自らを向上させようと力強く進んでいる。