歌も語学も陸上も、なんでもこなす多田さんが生涯の研究対象に選んだのは、仏教でした。夢がかなわず挫折したとき、仏教の言葉が心の支えになったと言います。「これをやろう」と決めた多田さんの行動は、誰にも止められません。多分野の講演会や展示会に足を運んで見聞を広め、海外で語学力やコミュニケーション能力も磨いてきました。先生方も、明確な目標を描いて常に自らを向上させようとする多田さんの今後を、心から楽しみにしています。

04 日本の宗教離れを外から見るために短期留学

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多田:私、高校1年生くらいまでは、宗教とかに関心があっても、それを選んでしまったら将来の選択がすごく狭まってしまうんじゃないかっていうところがすごく懸念材料としてあったので、あんまり宗教関係の道に進むっていう選択肢は考えてなかったんです。勉強も好きだったので、別の大学を目指そうかなって思ってたんですけど、オープンキャンパスに来て、いろんな先生方とお話をして、すごく面白くて。
 
それで高校2年生の時に、「トビタテ!留学JAPAN」っていう文部科学省が主催してるプログラムのポスターを見て、先生からの呼びかけもあったんで、応募しました。ドイツとチェコに行ったんですけど、それを経て、私は絶対に仏教学を勉強したいなっていう強い思いに変わって、大谷大学にしました。留学とオープンキャンパスで大学を決めたと言ってもいいですね。
新田:留学先では何が?
 
多田:夏休みの3週間を使って行ったんですけど、ドイツは宗教の信仰が盛んなのに対して、チェコは無宗教国家の1つって言われてて。日本は結構無宗教化してると思ってたんで、それを外から見てみたいなと思ったんです。ドイツとチェコと比較してみて、見えてくるものがあるんじゃないかなと思って。向こうではアンケートとかインタビューとかして、その人の宗教観について教えてもらったりして、すごく面白かったです。
 
やっぱりドイツでは信仰を持っている方がたくさんいらっしゃって、その理由が、家の宗教だからっていうのが多くて。でも何かしら自分の思いもあって。一方、チェコでは宗教っていう話題を出すだけで断られたり、マイナスなイメージとか、あまり良い印象を持たれてないのかなって感じでした。日本で同じことしても似たような結果なのかなと思って。宗教に触れる機会がなければ偏見も取り除けないので、どうやったらそういう機会を増やしていけるのかっていうことも研究していきたいなと思いました。
 
新田:すごいですね。3週間だとそんなに長くはないと思うんですけど、日本を外から見てみて感じたことや考えることがあったんですね。
多田:留学を通して、英語のスキルアップもなんですけど、海外の方とのコミュニケーションの仕方を学んだり、国や文化が違う人でもコミュニケーションがとれるようになることを目標とする、っていうのがあって。ドイツ語は全然知らないで行ったんですけど、向こうでの授業はドイツ語なんですよね。最低限の単語がわかるっていうのが受け入れの必須条件だったらしいんですけど、そんなの全然知らないで行ったので、毎日泣きながら予習復習をして、わからないところは友達に英語訳をしてもらって、それをドイツ語で返して、っていうやり方を自分で考えて。そうすると3週間後にはドイツ語で買い物できたりするくらいまで話せるようにはなりました。
 
新田:なんでまたドイツだったんですか?キリスト教を信仰している国なら他にもありますよね?
 
多田:やっぱりチェコが近かったんで。無宗教国家と言われているチェコは、すごい気になってました。日本も宗教離れとか言われるんで、日本でもどのように宗教のマイナスイメージを取り除けるかっていうことに興味があって。

PROFILEプロフィール

  • 新田 智通

    文学部 仏教学科 准教授



    2004年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。2008年博士(文学)。
    おもに19世紀から20世紀前半にかけて構築された仏教理解のなかには、近代西洋的な考え方の影響を受けているものが少なくない。そうした理解の多くが、まだ十分に問い直されることのないまま残されている。目下のところは「ブッダ観」を中心に、かつての定説を問い直すことを主要なテーマとしている。



  • 歌に語学に陸上に、さまざまなことに挑戦してきた。夢がかなわず挫折したとき仏教の言葉が心の支えになったことから、仏教に興味を持ち始めた。大谷大学への進学を決めたのは、オープンキャンパスで先生のお話を聞き、仏教への興味がさらに深まったから。
    多分野の講演会や展示会に足を運んで見聞を広め、海外で語学力やコミュニケーション能力も磨いてきたことを生かし、明確な目標に向かって常に自らを向上させようと力強く進んでいる。