歌も語学も陸上も、なんでもこなす多田さんが生涯の研究対象に選んだのは、仏教でした。夢がかなわず挫折したとき、仏教の言葉が心の支えになったと言います。「これをやろう」と決めた多田さんの行動は、誰にも止められません。多分野の講演会や展示会に足を運んで見聞を広め、海外で語学力やコミュニケーション能力も磨いてきました。先生方も、明確な目標を描いて常に自らを向上させようとする多田さんの今後を、心から楽しみにしています。

07 新しい死生観が芽生えたインド研修

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新田:大学でも留学しようと思ってますか?
 
多田:はい。すごく考えてます。大学院も実は海外に行きたくて。イギリスのブラッドフォード大学っていうところなんですけど。
新田:また随分具体的な希望ですね。
 
多田:そこは平和学の研究が盛んで、国連で働いておられたりした先生から学べるっていうところで、1年で博士号が取れるとか聞いていて、それで行きたくて。その大学には高1くらいから行きたいなって思ってて。あとはハーバード大学で戦争学とかやりたいんですけど、ハーバードは頑張らないと。他宗教にも興味があって、キリスト教圏とか、イスラム圏とかにも興味があります。この間、インドに行ってきました。
 
新田:僕はもう極力インドには近づきたくないんですよ。下痢するし。多田さんは好きそうですね。
 
多田:はい、インド研修は楽しかったです。
 
新田:何が楽しかったですか?
 
多田:インドの方ってすごくフレンドリーですよね。
 
新田:そういう人もいるけど、下心を持ってる悪い人もいるからね……。日本語で話しかけてくる人は、だいたい悪い人が多い。何事にも例外はあるけど、かなりの割合でそういう人がいますから。
 
多田:インドでは、新しい死生観が芽生えた感じがしました。ガンジスの火葬場に行って、火葬されているところを歩いたんです。火葬される前のご遺体も見ましたし、結構生々しくて、日本では隠されているようなところまで見たりしたんですけど、すごく自然に還って行くっていうか、すごく穏やかな感じで、今までは感じたことない新たな視点みたいなのが生まれて、それがすごく面白かったです。
新田:今の話はすごくよくわかります。日本の火葬場とインドの火葬場は、同じ火葬場なのにすごく違うんですよね。日本の火葬場って、棺に蓋をして重い扉を閉めて、まるでレンジでチンして出て来るみたいな、生々しさを消そうとしているところがあるんですけど、インドでは薪を組んで、そこに遺体を突っ込んで、焼けていく様子を見ることができて、それが煙になって天に還って行くっていう感じでね。火葬場に行っていいものを見たっていうのは変な感じですけど、本当に僕も最初に見たときはそう思いましたね。多田さんは本当にいろんなことに興味があるんですね。10年、15年したらインドで暮らしてたりして。どこに行っても生きていけそうな感じがするし。
 
多田:よく言われます(笑)。

PROFILEプロフィール

  • 新田 智通

    文学部 仏教学科 准教授



    2004年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。2008年博士(文学)。
    おもに19世紀から20世紀前半にかけて構築された仏教理解のなかには、近代西洋的な考え方の影響を受けているものが少なくない。そうした理解の多くが、まだ十分に問い直されることのないまま残されている。目下のところは「ブッダ観」を中心に、かつての定説を問い直すことを主要なテーマとしている。



  • 歌に語学に陸上に、さまざまなことに挑戦してきた。夢がかなわず挫折したとき仏教の言葉が心の支えになったことから、仏教に興味を持ち始めた。大谷大学への進学を決めたのは、オープンキャンパスで先生のお話を聞き、仏教への興味がさらに深まったから。
    多分野の講演会や展示会に足を運んで見聞を広め、海外で語学力やコミュニケーション能力も磨いてきたことを生かし、明確な目標に向かって常に自らを向上させようと力強く進んでいる。