文学科での勉強に加え、アルバイトにサークル活動、さらには教職課程の勉強もこなす山本さんは、常に多忙です。大学生活にかかる費用を自分で賄うためのバイトはキツイものの、学ぶことも多くあり、時間のやりくりの能力も磨かれています。学生の多くが苦手とする国文法に関する授業を面白く感じ、将来は高校の国語の先生になることを希望しています。日々、古典嫌いの学生に悩まされている先生も、山本さんには大きな期待を寄せています。

08 未発表の史料を見つけ、解読する

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佐藤:2年生でコース選択をしますよね。「日本文学コース」と「現代文芸コース」はどっちを考えてますか?
 
山本:今のところ興味があるのは「現代文芸コース」なんですけど、まだ迷ってるところです。
 
佐藤:最終的に卒論を書かなきゃいけないんですけど、結構大変なんですよ。だから好きなものの方がいいよね。何かこんなことやりたいっていう希望はある?
 
山本:今のところ面白いなと思うのが国語学的なことなので、その辺をもう少し勉強して書けたらいいなと思います。
 
佐藤:へえ、じゃあ文法ってことだよね。大秦先生喜ぶね!私もすごく嬉しいです。
山本:先生が古典を専門にするようになったきっかけは何ですか?
 
佐藤:最初は古典をやる気はなかったんですけど、大学に入ったら古典の先生たちが面白くて、古典もいいかなと思い出して。それで『今昔物語集』とか『宇治拾遺物語』をやるようになりました。最初は古典の研究だったんですけど、だんだんその史料がある場所にも行くようになって。仏教説話は今どこにあるんだろう、っていうところから、お寺とか文化財があるところで調査をするようになってきた感じです。
 
日本では恐ろしいことに、未だに、奈良時代とか平安時代の未発表の史料が見つかるんですよ。10世紀くらいの史料がポンポン出てくる国って他にはないし、中世、13世紀とかのものだって、どこの国にも残ってるわけではないんだけど、日本にはたくさんあって。残存状況が良いんですよね。私は大学の授業がない期間はお寺に行って、重要文化財指定を受けるための調査とかをやってるんだけど、日本のお寺ってものすごい数の史料を持ってるから、私の世代でも終わらないんですよ。だから死ぬまで働かなきゃいけない(笑)。
 
山本:実際にお寺に行ったら説話とかが出てくるものなんですか?
 
佐藤:説話そのものも出てくるんだけど、それを支えてるものも多いです。例えば、仏教説話っていうのは仏教を広めていくための要素が強いんですけど、法要の時にその由緒を語るとか、そのお寺がどんな過去を持っているのかってことを書き留めたものがあるんです。そういう記録の中とか由緒書きとか、いろんなところに説話があるんですよ。なので私は、史料全体の中から説話を探して、どんな社会の中でその説話が機能してたかっていうのを組み合わせて考えるっていう研究をしています。
お寺では行事を必ずやるので、法要をやるための文書とか、お坊さん同士の学問レベルを高めるような論義の文書もあるし、疫病を鎮めるためのものもあるし、それぞれの行事が終わったら必ず日記とかで記録をつけているし、さらにそれを編纂したりもしている。様々な形で史料が再生産されているんです。その中に説話とか故事が入っているっていう感じですね。
 
古典は奥が深いし面白いので、山本君には、ぜひ生徒に古典を嫌いにさせない先生になってほしいと思います。

PROFILEプロフィール

  • 佐藤 愛弓

    文学部 文学科 准教授



    2000年 名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2003年 名古屋大学文学研究科COE研究員。2004年 日本学術振興会特別研究員(PD)。2007年 大谷大学文学部任期制助教。2013年 天理大学文学部准教授。2020年大谷大学文学部准教授。
    高校生の時に芥川龍之介の『羅生門』を読み、大学生になってからその元になった『今昔物語集』の説話を読んだ。当初は、「芥川の主張が魅力的だなあ」と思っていたが、そのうちふと『今昔』の簡潔な表現がもたらす強い印象が気になりはじめた。以来、説話の持つ、簡潔な文体と、はやい物語展開に興味を持ち、それがどのような場で醸成されたのかを追求している。その場の一つとして寺院に注目し、資料調査を行っている。



  • 高校時代に仲の良かった先輩のすすめで大谷大学を受験した。人と話したり人の話を聞いたりする中で、特に表現方法としての言葉に興味があり、多くの学生が苦手とする国文法に関する授業も面白いと感じている。
    将来は、高校の国語の先生になることが目標。アルバイトにサークル活動、さらには教職課程の勉強もこなす多忙な毎日は疲れるが、うまく切り替えながら、忙しい生活からもさまざまなことを学んでいる。