ライブが好きだという東さんは、コロナ禍でオンラインでのライブも体験しましたが、やっぱり生の魅力にはかないません。オンラインと生では何が違うのか、マルチメディアの特性について学ぶ授業を通して考えています。将来についてはまだ検討中ですが、京都にたくさんある有形・無形の文化財を、情報技術によって保護していこうというゼミの取り組みにも興味を持っています。モンゴル語の歌を歌うのが趣味というユニークな先生の指導の下、日々研鑽しています。

06 様々な技術を獲得して、伝統文化を映像化する

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松川:まだまだ卒業後のキャリアデザインはこれからだと思うんですけど、今の時点で将来の目標について考えたことはありますか?
 
東:大学を決めるときに考えたんですけど全然見つからなくて、今も見つけられてないです。でも大学に入ってから何かした方がいいのかなとは思って、今、公務員試験の講習は受けてます。
松川:へえ、1年生から受けられるんですね。これからどんどん情報系のことも勉強していくわけですが、例えば情報機器を活用して、こんな仕事に就きたいとかはありますか?
 
東:……いろいろ学んでから、自分が得意なことを見つけられたらいいなと思っています。今はゼミが始まったので、パソコンのアプリとかをいろいろ触ってみてるんですけど、ゼミではこれからどんなことをしていくんですか?
 
松川:私のゼミでは、まずはマルチメディアを活用できるような、さまざまなソフトをきちんと使えるようになって、それから、基本的なカメラやビデオの撮影とか編集の技術を習得してもらって、それと同時に、地域社会の活性化を狙うっていうのが目標です。特に、文化財っていうのをキーワードにしています。お寺や神社だけじゃなくて、無形文化財っていうのもあって、お祭りとか人間国宝とか、人間が持っている文化をマルチメディアを使って拡げていくっていうことをやっています。
 
今は「駅ナカアートプロジェクト」っていうのをやっていて、駅の中の公共空間をどうやってアートで表現していくかっていうことで、実際に地下鉄・北大路駅の地下道で展示もしていますし、プロモーションビデオを作って、駅の中を表現していくっていうことをやっています。これはゼミの柱となるプロジェクトですね。
もう一つは、京都市の北区が主催している「WA(わ)のこころプロジェクト」っていうのがあって。日本の伝統的な和の心っていうのはどういうものか。北区には有形無形、いろんな文化財があるので、それを北区の住民にきちんと理解してもらおうっていうことで、今は大徳寺に行っています。
 
大徳寺には国宝級のお堂があって、今はそれが修復されているんですけど、その現場を撮影させてもらっていて。本堂に入ると畳が敷いてあって、その畳をめくると、裏に字が書いてあるんです。それを読むと、なんとその畳は400年前のものがそのまま使われているってことがわかるんです。今まで何度も修復しながら使い続けているんですね。その証拠が残っているわけです。瓦なんかも、明治何年に吹き替えたっていうことがわかるんですよ。そういう伝統は未来に残していくのが大事だっていうことを、映像で伝えていこうと思って取り組んでいます。
 
東:面白そうですね。
 
松川:そういうことができる技術をマスターしたら、次はディレクター能力を獲得していくってことを念頭に置いています。撮影も編集も文書作成もそうなんですけど、すべての工程でやることがわかっていないと、全体像が把握できない。歴史や文化の知識とか、何なら古文書の読解力もないと、伝統文化を映像化していくってことはできないので、総合的なディレクター能力を獲得して、それで社会に出ていってほしいなっていうのが私のゼミでやっていることの狙いなんですね。ですから、そういう方向で勉強していくものだと思ってください。

PROFILEプロフィール

  • 松川 節

    社会学部 コミュニティデザイン学科 教授



    東京外国語大学外国語学部モンゴル語学科卒業、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。国立民族学博物館講師、大谷大学講師を経て、現在、大谷大学社会学部教授。2012年度より日本・モンゴル合同「エルデニゾー・プロジェクトⅡ」の日本側代表、2014年度より日本・モンゴル合同「モンゴル国カラコルム博物館における歴史研究を基軸とした情報化と国際協働の推進」プロジェクト日本側代表。2016年度より日本・モンゴル合同「ハン・ヘンティ・プロジェクト」の日本側代表。
    2022年度は、日本・モンゴル共同「モンゴルの山岳信仰調査プロジェクト(ハン・ヘンティ・プロジェクト)」を一層推進し、モンゴルの世界的文化遺産を歴史学・宗教学・考古学・文化保存科学・観光学の諸側面から研究し、それら有形・無形の文化遺産をマルチメディアを活用してデジタル化・データベース化し、電子媒体で提示する方法を追究する。研究において歴史学・文献学的手法と社会情報学的手法を融合させ、人文科学・社会科学における新たな研究スタイルを構築し、その成果を学生指導に生かしていきたいと考えている。



  • オープンキャンパスでコミュニティデザイン学科の説明や模擬授業を受けて興味を持ち、先生やキャンパスの雰囲気が気に入って大谷大学を受験した。入学後は授業やアルバイト、趣味のライブなど充実した大学生活を送っている。
    高校までとは違い、大学の授業では自分で考えることが増えたと実感。小学生の頃からパソコンを使うことが好きだったこともあり、地域政策学コースの中でも情報系へ進むことにした。京都にたくさんある有形・無形の文化財を情報技術によって保護していこうというゼミの取り組みにも興味を持っている。