ゲームでハマった刀に魅せられて、京都で歴史学を学びたいとやってきた中根さんのお気に入りは、古代の人びとの空想を絵にする授業です。資料を基に状況をイメージする力は、歴史学に欠かせません。歴史を学んだ人は、社会に出て働くようになっても、培った力を生かせるときが必ずやってきます。「歴史学は学問の王様だから」と魅力を語る先生の指導のもと、中根さんの探究が始まります。

04 支配される側の歴史に興味がある

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大艸:うちの大学では、早いうちに自分の専門を決めてもらって、質の高い卒業論文を書いてもらいたいっていう思いがあるんで2年生からゼミが始まるけど、こういう方向で勉強していきたいっていうのはある?もちろん他の勉強もおろそかにしないでほしいんだけど、一つのことに打ち込むことは大事やと思うんですよ。
 
中根:歴史って、支配する側の人が注目されて歴史になってるじゃないですか。でも私は支配される側の人に興味があって。民衆というか、部落差別をされる人とか、そういうところに関心があります。
 
大艸:歴史学って、残されたものを組み立てていくものですよね。そういう残されたものって、権力者とか著名な人とかお金がある人とかにまつわるものがほとんどで、支配される人は文字も書けないし、残らないんですよね。なので、史実を描こうとすると限界があるんですよ。だからどうしても上辺だけになっちゃうんですけどね。
 
ただ戦後になって、被支配者も見なければいけないってことになって。自分たちで自治組織を作って対抗していく「社会史」っていう見方が戦後に流行ったんです。時代を反映してますよね。戦前までの皇国史観から解放されて、好きなことを言えるようになって、権力に反対した人々の歴史が、60年代、70年代に流行ったんですよ。うちの先生方も、そういうのを大事にしている人も多いですよ。
でも今は、完全な二項対立で捉えて良いのかっていう視点も出てきててね。場合によっては権力者に乗っかって、とか、もっと複雑な。時代が進んでくると中身も深まってきますからね。民衆の視点でやっていくことも大事やと思いますけど、何か具体的にやってみたいことはありますか?
 
中根:日本の民俗学とか。柳田國男の『遠野物語』とかに関心があって。前期は「日本民俗学」の授業を取りました。
 
大艸:民俗は、文字の起こされてない伝承とかをどうやって扱っていくかっていうのが難しいんだよね。時代はどの辺に関心がありますか?
 
中根:どこかって挙げるなら、江戸時代かな……?わりとどこにも関心があります。平安時代とかも。でも平安時代こそ残ってないですよね、民衆の記録は。
 
大艸:平安時代は史料性が厳しいかもしれないね。
 
中根:いつごろから一般の人々の資料って残されてるんですか?中世?
 
大艸:中世は結構見えてくるんじゃないかな?村の資料って結構残ってるからね。

PROFILEプロフィール

  • 大艸 啓

    文学部 歴史学科 講師



    1982年京都市生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。 同朋大学仏教文化研究所所員を経て、2018年大谷大学文学部歴史学科着任。
    日本古代の仏教史像を、様々な切り口から捉えなおすことを目指している。とくに正倉院文書を素材として、官人社会・都市社会の視角から仏教の展開を再構築することと、浄土信仰や太子信仰の黎明期の実態を明らかにすることに取り組んでいる。また、平安京の成立と展開についても関心があり、平安京以前の京都の歴史も視野に入れながら検討したいと考えている。



  • ゲームでハマった刀に魅せられて、京都で歴史学を学びたいと思い、大変だったAO入試のプレゼンもクリアし大谷大学へ入学。趣味にかけるお金はアルバイトで稼ぎつつ、もちろん勉強も大変だけど楽しくできている。お気に入りの授業は、古代の人びとの空想を絵にするもの。
    卒論のこと、めざす職業のこと、考えていかなければならないことはたくさんあるけれども、大学4年間で歴史学に浸って、将来に生かせる力をつけていこうと思っている。