ゲームでハマった刀に魅せられて、京都で歴史学を学びたいとやってきた中根さんのお気に入りは、古代の人びとの空想を絵にする授業です。資料を基に状況をイメージする力は、歴史学に欠かせません。歴史を学んだ人は、社会に出て働くようになっても、培った力を生かせるときが必ずやってきます。「歴史学は学問の王様だから」と魅力を語る先生の指導のもと、中根さんの探究が始まります。

08 部品を集めて組み立てるプラモデルのような歴史学

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大艸:歴史学を学んでも、直接歴史に関わる仕事に就く人って一握りなんですよ。教師か学芸員くらいじゃないですか。かと言って、全く関係ない仕事に就く人にとって歴史学は無駄なのかと言えば、全くそんなことはなくて。僕は、歴史学は学問の王様やと思ってますから。歴史学は、史料を集めて組み立てていく。言ってみればプラモデルみたいなものだと思うんですよ。部品を集めて組み立てる能力って、必ず必要でしょ。絶対、会議とかでも資料があるし。資料をちゃんと読まない人が多い中で、歴史学をやった人は結構きちんと読むらしい。
中根:歴史学をやってるとそういう目が備わるんですね。それが歴史だけじゃなくて、いろんな仕事に通じるっていうのは、オープンキャンパスの時にも聞きました。高校生の頃は、歴史学科に入ったらその先の仕事はどうするんだろうって思ってたんですけど、歴史はいろんな仕事をする時に力になるって先生が仰ってて。
 
大艸:そうそう。だからどんな仕事でも役には立ちます。もちろん歴史に関係する仕事でもいいんですよ。何か資格は考えてますか?
 
中根:最初は学芸員も考えていたんですけど、倍率が高いって聞いて、その方向はやめようと。とりあえず4年間修業というか、歴史学に浸かって鍛えたいです。
 
大艸:学芸員とか図書館司書の資格は、就職先は全然関係ないところでも、全く無駄ではないと思いますよ。少しでも余裕があるなら考えてもいいと思いますよ。
 
中根:はい。先生の今の研究はどんなことですか?
 
大艸:専門は日本古代史で、正倉院文書っていう資料から、奈良時代の仏教史だとか都市史だとかをやってます。その文書はね、東大寺の中にあった官営の写経所で作られた事務書類なんです。そこに大事な情報が盛りだくさんあって。例えば、写経生が何月何日にお休みをくださいって言ってる。そこに息子が死んだとか、理由が書かれてたんです。そういうのから、普段どういう生活をしてたかがわかりますし。あるいはどんなお坊さんとやり取りしたとかね。そういうところから、官僚組織の中のネットワークとか仏教的な信仰の流通とかを探るってことをやってました。
最近は「京都探究コース」担当なんで、京都のこともやってます。平安京が置かれる前の京都の場所についてとかに関心がありますね。
 
中根:大学院に進むあたりから時代は決まってたんですか?
 
大艸:卒論では神話のことをやったんだけど、それはボロクソ言われましたね。大学院の修士の時は古代の天皇の即位儀礼のことをやりました。そのあと博士課程でうちの大学に来まして、そこからずっと正倉院文書をやってます。ちょこちょこは変わってますけど、基本は古代ですよ。

PROFILEプロフィール

  • 大艸 啓

    文学部 歴史学科 講師



    1982年京都市生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。 同朋大学仏教文化研究所所員を経て、2018年大谷大学文学部歴史学科着任。
    日本古代の仏教史像を、様々な切り口から捉えなおすことを目指している。とくに正倉院文書を素材として、官人社会・都市社会の視角から仏教の展開を再構築することと、浄土信仰や太子信仰の黎明期の実態を明らかにすることに取り組んでいる。また、平安京の成立と展開についても関心があり、平安京以前の京都の歴史も視野に入れながら検討したいと考えている。



  • ゲームでハマった刀に魅せられて、京都で歴史学を学びたいと思い、大変だったAO入試のプレゼンもクリアし大谷大学へ入学。趣味にかけるお金はアルバイトで稼ぎつつ、もちろん勉強も大変だけど楽しくできている。お気に入りの授業は、古代の人びとの空想を絵にするもの。
    卒論のこと、めざす職業のこと、考えていかなければならないことはたくさんあるけれども、大学4年間で歴史学に浸って、将来に生かせる力をつけていこうと思っている。