歴史学科
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文学部歴史学科を2013年度に卒業後、現在は起業家としてご活躍されている北辺佑智さんに、現在の仕事をめざしたきっかけや大谷大学で学んだこと等を語っていただきました。
※このページに掲載されている内容は、取材当時(2023年9月)のものです。
現在、コーヒー焙煎所「京都珈琲焙煎所 旅の音」(京都市左京区)の創業を経て、フェアトレードコーヒー事業や起業支援事業、就労継続支援事業所の運営等に携わっています。
大学4年生の時にタイへ旅行し、貧困地域で農業をしている農家の方々と出会い、スペシャルティコーヒーを作るための完熟度が高い豆を栽培する取り組みに触れたことが現在の事業のきっかけです。その後、他の日本人と協力するNPO法人に関わり、アジア各地を旅して海外でのさまざまな取り組みに触れました。この経験から、事業を通じてこうした人々とつながりたいと考えました。
大学卒業後は、まずは食に携わる仕事に就きたいと考え、生協で3年間働きました。また自身でも焙煎機を購入し、焙煎したコーヒー豆を地域の道の駅で販売したり、ECサイトでの販売も試みました。次第に購入いただけるお客様も増えて手応えを感じ、コーヒー事業を本格的に取り組むようになりました。
自分自身は滋賀県出身なのですが、喫茶店も多くコーヒーの街として成熟した京都を魅力的に感じ、京都市内にあった美術学校の跡地の一角で「京都珈琲焙煎所 旅の音」を開業しました。開業当初はお客が訪れず厳しい状況が続きましたが、SNSを中心としたマーケティングに力を入れ、その結果お店で提供するコーヒーゼリーが全国放送のテレビ番組で取り上げられ、お客様が増えました。
現在では、一坪のコーヒー店「MAMEBACO」のフランチャイズ事業やコーヒーの製造にかかわる就労継続支援事業所の運営等、様々な事業を展開するようになりました。また最近では、若手起業家の教育や支援を行っています。起業家というプレイヤーの立場から恩送りをしたいという思いで、後進の起業家への投資や教育を行っており、何人もの起業家を現在輩出しています。
現在の事業を始めて思うのが、自ら行動すると「何かしら次につながっていく」ということです。コミュニティを築かないと店が存続できない現実もあり、起業塾の主催やコーヒーのワークショップや「おいしい旅のマーケット」を主催する活動を通じてコミュニティを育成しました。お店を構える美術学校の跡地全体を借り切ってマルシェを企画したことが大成功し、その後京都市からも岡崎公園を会場とした大規模なマルシェの依頼があり、大きな仕事につながりました。
こうした活動を通じて、作家やアーティストの方々等、多様なバックグラウンドを持つ方々と出会うことができました。また、出会った方々の中には障がいのある方もおられ、そこから障がい者の就労支援にも興味を持ちました。
運営に関わっている就労継続支援事業所は全国に4ヵ所あり、利用される方にお菓子の製造やコーヒーの製造等に関わってもらいます。集中力が高い方は豆の検品作業に、根気のある方は包装や発送作業を担当するといったように、それぞれの得意分野に合わせた内容かつ単純作業で終わらないような仕事を担当いただいています。多くの人が協力し、自分らしい仕事を見つけられる環境を提供しています。
また、創業した「京都珈琲焙煎所 旅の音」(株式会社タビノネ)の代表を譲り、2023年に株式会社FUNEという会社を新たに立ち上げて、就労支援施設の開設やコンサルティング、ブランディングの支援を行っています。プレイヤーから教育と支援に特化することにより、さまざまな起業家や会社と連携し大きな社会へのインパクトを創出したいと思っています。
実家が寺院なので仏教を深く学びたいと思い、また歴史に深い興味があったので歴史学科に入学しました。恥ずかしながらあまり真面目な学生ではなく、大学での授業やゼミというよりはフォーク研究会で部長を務めた経験が印象に残っています。週に4回スタジオに通い、60名を超える部員をまとめ上げることに大変苦労したのを覚えています。
また、アルバイトでは、西陣にあるカフェやバーで働いていました。将来コーヒーに関する事業を行うにあたり、こうしたアルバイト経験が飲食店の一連の流れを理解する助けになりました。
大学で人間学や真宗学を学んだ経験が、自身の思考や経営に影響を与えています。事業を経営するにあたりさまざまな考えや価値観がある中で、自分自身のぶれない「軸」が必要であること、またそれが仏教がこれまで伝えてきた「人としてのあり方」なのではないかと考えるようになりました。最近では、再び仏教の考え方を振り返り、自分自身の振り返りを通して自分の考えが今どうあるのかを認識することを深めています。
経営においても、自分の利だけを求めてしまい心が貧しくなっていくことに直面したことがありました。人のために尽くすことは心の豊かさにつながると考えており、仏教の思想と共通する部分があると感じています。自己中心的な考え方から脱却し、利他の心を育む難しさに葛藤しながらも、その価値を実感しています。
また、大学時代に問題解決力を養ったフォーク研究会での経験が、日常生活や経営において役立っており、困難な状況に対処する方法が身につきました。振り返るとこの経験は苦労も伴いましたが、楽しい思い出でもあります。
大学時代に何度も海外に行き、そこで出会った人やものに心を揺さぶられた原体験が、自分自身の成長や今の仕事につながっています。自分で時間の使い方を考え、今しかできない経験を積むことが大切だと考えています。
大学時代という貴重な機会に、様々なところに足を運んで話を聞きながら、自身の興味や関心の幅を広げてください。時には他人の目を気にせずに突き進むのも良いと思います。そこで出会ったものが、皆さんの将来や仕事において大いに役立つはずです。
自分で事業を起こしたいという人をこれからもサポートし続けたいと思いますので、悩んだ時にはぜひお声掛けください!
北辺 佑智(きたべ ゆうち)
文学部歴史学科 2013年度卒業
株式会社タビノネ 創業者
株式会社FUNE 代表取締役
株式会社クーバル 社外執行役員
株式会社Propage 取締役
NPO法人でのブランディング支援事業を経て、2017年2月に「珈琲焙煎所旅の音」を開業。2019年にたった一坪の珈琲店「MAMEBACO」を開業し、フランチャイズとして全国展開。展開から1年で全国6店舗へ拡大。
地域に根付くブランド作りを基軸とした店舗展開と、就労支援施設の運営、全国で30施設以上のプロデュースや事業開発/起業支援を多数行う連続起業家。