文学部真宗学科を2023年度に卒業された藤井響流さんに、在学中に学んだこと等について語っていただきました。
※このページに掲載されている内容は、取材当時(2025年6月)のものです。

私は現在、京都府警察で警察官として勤務しています。大谷大学を卒業後、京都府警察に採用されて半年間、警察学校に入校しました。警察学校を卒業後は警察署に配属され、現在は交番で勤務しています。交番での仕事は大変だと感じることもありますが、人のために働くことができるこの仕事に誇りを持って日々励んでいます。

私は、大谷大学の真宗学科で4年間真宗について学びましたが、現在、警察官という一見すると学科の学びとはまったく異なる分野で働いています。最初は考え方やものの見方が異なる世界に戸惑いましたが、大学での学びが少なからず現在の仕事に活きている部分があります。特に、真宗を学ぶ中で「生きる」ことについて考える視点を得ることができ、今もその視点を大切にしながら仕事に取り組んでいます。
これから就職活動を迎える皆さんには、自分の学部での学びやこれまでの経験にとらわれすぎず、興味のある仕事に積極的に挑戦してほしいと思います。

警察学校での半年間と今の仕事

私は、大谷大学を卒業後、半年間の警察学校で警察官に必要な技能や体力、知識を身につけるために多くの授業や訓練を受けました。学校での訓練は身体的にも精神的にも厳しく、何度も挫折しそうになりましたが、苦楽を共にする同期や家族の支えがあったおかげで、何とか半年間を乗り越えることができました。

警察という組織は何よりも規律を重んじるため、規律違反や警察学校内でのミスに対して厳しい指導を受けます。警察学校に入校直後は、ほんのわずかな服装の乱れに対しても厳しい指導があり、この生活に自分が馴染めるのかという不安を感じていましたが、今ではそれが警察官としての意識を持つために重要なことだったと実感しています。

現在、勤務する交番は、他と比べて忙しい地域での勤務であるため、日々の仕事は大変ですが、警察官は一般企業に比べて、より「人のために働くことができる」仕事の一つであると考えています。警察官としてできることには限りがありますが、困っている人の力になれるという実感を得られる場面も多く、やりがいを感じながら誇りを持って働いています。

警察官の仕事と大学で得た視点

警察官の仕事では多くの人と関わる機会があり、さまざまな人の考え方や「生き方」に触れることがよくあります。私は、真宗学科で人の生き方を見つめ、そして「生きる」ということについて学び、考えてきました。その経験を活かし、現在は「仕事の中で出会う人にとっての“生きる”とは何か」という視点を持って関わることができていると思います。

警察官の仕事は、目に見える「事実」に目を奪われがちですが、「人とは何か」という視点を持って職務に向き合うことで、よりよい対応ができるのではないかと感じています。警察官として働く以上、人間と向き合わなければなりませんが、「どう防ぎ、どう処理するか」ばかりを考えてしまい、むしろ「犯罪を犯すに至った人がなぜそうなったのか」という部分が見えにくくなることがあります。私自身、そう感じることが少なくありません。

犯罪とは、煩悩が最もわかりやすく現れたものの一つだと思います。私は、犯罪の未然防止に取り組む警察官であると同時に、真宗の学びを得た一人の僧侶として「罪を犯してしまった人」というよりも、まずは「人間」そのものと向き合っていく必要があると考えています。

憧れから現実へ 警察官になるまでの道のり

私は、幼い頃から警察官に憧れていましたが、実際に自分が警察官になろうという強い気持ちはあまりなく、どちらかといえばただのファンのような存在でした。大谷大学の4年生になる直前の3月頃には「そろそろ就職活動を始めなければならない。」と感じ、大学の合同説明会に参加しました。
その時点では一般企業への就職を考えていたため、さまざまな企業の説明会に参加していましたが、友人と一緒に参加した京都府警察の説明会で「人のために働く」という警察官の仕事に、これまで以上に強い魅力を感じました。そこから本格的に警察官採用試験に向けた勉強を始め、大学の面接対策講座に加え外部講師による公務員受験対策向けの面接対策講座も受講して、準備を進めました。

人と話すことに少し苦手意識があり、緊張しやすい性格の私にとって、大学の面接対策は非常に心強いものでした。自分一人では気づけなかった長所や短所について他者の視点で言葉にしてもらったことで面接での話し方や伝え方を身につけることができました。また、試験を受けようと決断してから本番までは2カ月ほどしかなく、限られた時間で集中的に対策を進める必要があったため、一般企業は受けずに警察官一本に絞って試験対策に取り組みました。

その結果、すべての試験に合格し、念願の警察官になることができました。当初は現実的ではないと思っていた就職活動でしたが、大学のサポートを最大限活用し、周囲の応援を受けながら目標を実現できました。
これから就職活動を迎える皆さんにも、所属や時間にとらわれず、自分が「やりたい」と思う仕事に全力で挑戦してほしいと思います。就職活動では大学のサポートを積極的に活用しながら、自分のやりたい仕事に向かって進んでいってください。

PROFILEプロフィール

  • 藤井 響流(ふじい こうる)

    文学部真宗学科 2023年度卒業