真宗学科
卒業生インタビュー
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文学部真宗学科を2000年度に卒業された上寺恵美さんに、在学中に学んだこと等について語っていただきました。
※このページに掲載されている内容は、取材当時(2025年1月)のものです。
20代後半でワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアに行きました。
滞在先のオーストラリアでは、幼稚園や小学校で現地の子どもたちと過ごしながら、語学学校と小学校英語の指導者養成プログラムに通いました。その後、ニュージーランドに渡ってからは、カトリック系の私立高校で日本語教師のアシスタントを経験しました。
海外での生活では、思い通りにいかない出来事が次々に起こりました。私は、日々を楽しみながらも不安でいっぱいでした。そんなとき、仲良くなったニュージーランド人の同僚とコーヒーを飲みながら話していると、「自分を知ることが相手を知ることになるんだよ。あなたは相手の心を聴いている?」と問いかけてくれました。それは、大谷大学でかつて聞いたことのあるような言葉で、懐かしさとともに深い衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。
帰国後、小学校で初めて授業をした日、子どもたちの心を聴いていける先生になりたいと強く思いました。それは、今までの私がこれからの私に約束をしたような、そんな気持ちだったように思います。
現在は准坊守として、自坊で月1回、日曜学校(お寺の子ども会)を主催しています。小学生を対象に、正信偈のお勤めをしたあと、季節に応じたさまざまな交流活動を行っています。105年目を迎えたこの西蓮寺樹心日曜学校は、ご門徒や地域の方々に見守られながら、現在に至ります。
ある日の日曜学校で、「あなたの大切なものは何ですか?」と子どもたちに問いかけました。地球、命、友だち、お金、おうち、毎日一緒に寝ているぬいぐるみ、趣味、健康、家族など、それぞれがなくてはならないと感じている大切にしているものを発表してくれました。
さらに、「それをどうやって大切にしていますか?」と問うと、大事にする、心配する、守る、言葉に気を付ける、声をかける、相手が嫌がることはしない、といった「自分と相手」そして「気持ち」がそこに付いてくるような言葉が自然とあふれました。
子どもたちが一つの問いに、のびのびと発言したりじっくり考えたりする姿は、とても微笑ましくまた頼もしくも感じました。身近な人を思い浮かべながら「おたがいさまの気持ちって、すごく大切やわ」「自分も大事にされているんやな」「たった一つの命は、私だけのものと違うんやな」といった気づきもありました。
自分にとって大切なものは何か、大切にするとは具体的にどういうことかを「ありのまま」共有することができました。
感じ方や捉え方は人それぞれで、正しい答えを探すことが目的ではありません。それでも、こうかもしれない、ああかもしれないと共に考えることで、その違いに直に触れることができます。そうした経験を経て、自分の視野や世界が広がり、物事を多面的に捉える力が育まれるのだと感じています。
これからも子どもたちを中心にしながら、親鸞聖人が大切にされたお念仏の教えを聴いていく場を開き続けていきたいと思っています。
上寺 恵美(かみでら めぐみ)
文学部真宗学科 2000年度卒業