高校卒業後は漠然と就職を考えていた小佐野さんですが、学ぶことの面白さを知り、自分で進路を選びたいと思って進学を決めました。大学は、大きなことを大きな視野で考えられる場所であり、機会であると話す先生からは、「学問をする」ことの大切さを教わります。歴史学科で根本を学ぶ学生だからこそ、何事にも自分なりの問いを立てられるというプライドを持つ小佐野さんは、過去を学びつつ、まっすぐに前を見つめています。

06 偏見を越えて、グローバルに考える

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古川:大学生活で、困っていることや不安なことはありますか?
 
小佐野:これからゼミを選んでいくにあたって、どの時代を学んでも史料を読むじゃないですか。大学だから史料に基づいて学ぶようにしていこうってどの先生も言いはるんですけど、まずは読めないっていう問題がありますよね。どこから手を付けたら良いんですか?
 
古川:近現代以前の日本史だったら、くずし字だね。日本語だけど、トレーニングを受けないと読めませんから。近現代史をやりたい場合は、日中関係史とかだったらある程度中国語を読めなきゃいけない部分が出てきますね。世界史でも、フランス革命のことをやるんだったらフランス語とかね。もし大学院で研究するなら相当なレベルで頑張ってもらわないといけないけど、卒研のレベルだったら、必要な言語を第2外国語で取ってると有利ですけど、取ってなくても2年生からでも十分やれるので、あんまり心配する必要はないですよ。
 
史料は大事だけど、話せる必要はないし、我われもサポートしますので。まずはあなたが何をしたいかですね。それこそあなたが好きなK-POPだって、韓国の文化史ということで研究できますよ。アリランなどの民謡や、なぜK-POPが世界中に広がっていったのか。日本の音楽戦略では立ち行かないのに、K-POPはなぜアメリカで1位になったのか、とかね。
僕は今、ゼミで黒人音楽の歴史をやってるんですよ。ジャズやブルーズ、ヒップホップに至るまでの歴史なんですが、差別される人の歴史が入ってくる。みんな政治経済にこだわりますけど、音楽史とか食べ物の歴史とかも非常に面白いですよ。砂糖の歴史とか。砂糖なんてイギリスではとれないのに、なぜ紅茶の文化があんなに広まったのかって言ったら、植民地から持ってきたんですよね。そんな話もできますし。どの先生でもいいので、いろいろ相談してくれたら何でもできますよ。あとはそれに対する関心と情熱。時には冷静になって問いかけること。
 
小佐野:アフリカ史っていうのはどんな感じなんですか?
古川:アフリカって、50数ヶ国ある大陸なんです。でも今は多様性の時代なのに、アフリカって、野生動物、内戦、飢餓っていうようなイメージでひとくくりにされるんです。だけど本当は太陽の輝くいろんな文明がそれぞれの国にある。だからまずは、アフリカは多様であって、ひとくくりにするっていうこと自体が偏見なんです。ヨーロッパ人がアジア人を全部1つのイメージで決めつけるのと一緒です。日本人女性はみんな優しいとかね。そんなことない。これは冗談ですが、僕の妻はめっちゃ怖いですよ(笑)。
 
アフリカ史はまず多様なんです。いろんな文明があって、いろんな人種がいて、気候も食事も多様。アフリカに歴史がないんじゃなくて、アフリカをまともに見ようとしなかった西洋人、またそれを受け売りした我われ日本人の目がない。だから世界史の教科書でもわずかしか記述がない。でも本当はそれではいけないんです。地球儀は英語でglobeって言うんですけど、グローバルに考えることが大事です。アフリカ史に興味を持ってくれたら、ぜひ一緒に学びましょう。

PROFILEプロフィール

  • 古川 哲史

    文学部 歴史学科 教授



    神戸市生まれ。広島大学総合科学部・総合科学科卒業。在学中、日本-アフリカ文化交流学院(在ケニア)に留学。その後、広島大学大学院社会科学研究科・イギリス地域研究講座、オハイオ大学国際事情研究所大学院・アフリカ研究講座(在アメリカ合衆国)、京都大学大学院人間・環境学研究科・共生文明論講座などで学ぶ。日本学術振興会特別研究員(史学・日本史)、京都大学総合人間学部研修員、国立民族学博物館共同研究員、明治学院大学国際学部在外研究員など。オハイオ大学、オハイオ州立刑務所、コロンバス日本語補習校、同志社女子大学、立命館大学、京都市立芸術大学、松下看護専門学校等で教える。2005年、大谷大学文学部・国際文化学科に赴任。2018年より歴史学科・世界史コースに所属、現在に至る。
    これまで、日本やアメリカ、アフリカの歴史と文化に関心を向けてきた。近現代の日本とアメリカやアフリカとの関係史にも取り組んでいる。



  • 高校卒業後は漠然と就職を考えていたが、学ぶことの面白さを知り進学を決めた。興味のあった歴史を学ぶため、京都の大学をめざすことにし、さらにオープンキャンパスに参加して雰囲気や設備などを確かめた結果、大谷大学を受験することにした。
    何事にも自分なりの問いを立てられるよう心掛けている。将来の夢はまだないが、大学4年間で、身近にある時事問題などに対して、1人の人間としてちゃんとした考えを持つことをいちばんの目標とし、まっすぐに前を見つめている。