高校卒業後は漠然と就職を考えていた小佐野さんですが、学ぶことの面白さを知り、自分で進路を選びたいと思って進学を決めました。大学は、大きなことを大きな視野で考えられる場所であり、機会であると話す先生からは、「学問をする」ことの大切さを教わります。歴史学科で根本を学ぶ学生だからこそ、何事にも自分なりの問いを立てられるというプライドを持つ小佐野さんは、過去を学びつつ、まっすぐに前を見つめています。

03 大学とは、学びつつ問い続けるところ

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古川:歴史に関心があるということだけど、どんなところに?
 
小佐野:入学時は、日本の近現代史を全然勉強してない状態で高校を卒業したので、そこをやりたいなと思ってたんですけど、実際に授業を受けてみると、世界史をやりたいなと思うようになりました(笑)。日本史をやるにしても、世界との関係とか、もっと広いところを見たいなって思ってて。
 
古川:世界史とか日本史っていうのは単なる区分であって、実際にはつながってるんですよね。今の歴史学、特に歴史学界で大事なキーワードは「つながり」とか「継続性」なんですよ。日本は世界とつながってるし、世界は宇宙とつながってる。ぜひそういう大きい視野で物事を捉えてもらいたいと思います。僕は「ロールケーキ理論」っていうのを唱えてるんですけど、真ん中に自分がいて、自己の歴史がある。それを家族が囲んでいる。そのまわりには地域社会とか大学とかがあって、意識しているかは別にして、みんなつながっているんですよ。歴史で言うと、自分史があって家族史や地域史があって、日本史があったらアジア史があって、世界の歴史がある。さらには宇宙も。宇宙って英語で「universe」って言うでしょ。「大学」って英語でなんて言う?
 
小佐野:university。
 
古川:そうでしょ。同じなんです。だから「university」っていうのは、宇宙くらい広くて大きなことを、広くて大きな視野で考える場所であり、機会であると思うんですよね。そういう4年間。我われ教員は学生に、宇宙まで考えられるような広い視野を持った人に育ってほしいと思ってるんです。だからぜひ世界の歴史における接続性を大事にして、自分の興味があるコースを選んでほしいと思います。個人的には世界史に関心があるって言ってくれて嬉しいですね。
小佐野:いま「歴史学基礎演習」を受けているんですけど、プレゼンテーションをする授業なんです。世界史はリストの中からテーマを選ぶんですけど、日本史は自由で。韓国とか北朝鮮に関心があるので、近世の日本と朝鮮のことにしようって思ってます。めっちゃ古川先生の分野ですよね(笑)。
 
古川:嬉しいですね。ぜひやってください。大学では勉強するっていうより、学問をするんですよね。学問というのは、学ぶことと問うことです。「学ぶこと」というのは、教室できちんと学ぶこともそうだし、アルバイトとか教室の外で学ぶことも含みます。もう1つ、「問」の方は「問いかける」んですよ。実はこっちの方が大事で、おかしいと思ったこととか正解がないと思ったことは、問いかけないといけない。大事なのは、社会に問いかけることです。社会に、外へ向かって問いかけていくということを大学生はしてほしい。それから僕が一番大事だと思うのは、内への問いかけ。自分への問いかけなんですね。学びつつ問い続けるのが大学の学問です。
 
僕は大谷大学が好きなんですよ。僕はここに来る前はアメリカの大学で教えてたんですけど、向こうの大学は本当に点数主義というか、競争で大変なんです。学生も先生もね。僕が大谷大学に赴任してきた2005年の1月、大学の正門に掲げられてる「きょうのことば」が「自己とは何ぞや。これ人世の根本的問題なり。清沢満之」だったんです。清沢満之っていうのはこの大学を作った人ですね。僕はそれに運命的なものを感じたんです。僕が思ってる「学問」の概念とぴったり合う。それが正門に掲げられているということに感銘を受けて、ここで学生のために頑張ろうと思いましたね。
それから普通の大学だったら、正門に掲げる書は、プロに書かせることがほとんどだと思うんですよ。でもここは学生に書いてもらっている。ということは、正門に学生の顔を出してるんですよ。こんな大学見たことなかった。それでここで頑張って働こうと思ったんです。いい話でしょ(笑)?だからぜひ、学生には学問をしてほしいと思います。

PROFILEプロフィール

  • 古川 哲史

    文学部 歴史学科 教授



    神戸市生まれ。広島大学総合科学部・総合科学科卒業。在学中、日本-アフリカ文化交流学院(在ケニア)に留学。その後、広島大学大学院社会科学研究科・イギリス地域研究講座、オハイオ大学国際事情研究所大学院・アフリカ研究講座(在アメリカ合衆国)、京都大学大学院人間・環境学研究科・共生文明論講座などで学ぶ。日本学術振興会特別研究員(史学・日本史)、京都大学総合人間学部研修員、国立民族学博物館共同研究員、明治学院大学国際学部在外研究員など。オハイオ大学、オハイオ州立刑務所、コロンバス日本語補習校、同志社女子大学、立命館大学、京都市立芸術大学、松下看護専門学校等で教える。2005年、大谷大学文学部・国際文化学科に赴任。2018年より歴史学科・世界史コースに所属、現在に至る。
    これまで、日本やアメリカ、アフリカの歴史と文化に関心を向けてきた。近現代の日本とアメリカやアフリカとの関係史にも取り組んでいる。



  • 高校卒業後は漠然と就職を考えていたが、学ぶことの面白さを知り進学を決めた。興味のあった歴史を学ぶため、京都の大学をめざすことにし、さらにオープンキャンパスに参加して雰囲気や設備などを確かめた結果、大谷大学を受験することにした。
    何事にも自分なりの問いを立てられるよう心掛けている。将来の夢はまだないが、大学4年間で、身近にある時事問題などに対して、1人の人間としてちゃんとした考えを持つことをいちばんの目標とし、まっすぐに前を見つめている。