高校卒業後は漠然と就職を考えていた小佐野さんですが、学ぶことの面白さを知り、自分で進路を選びたいと思って進学を決めました。大学は、大きなことを大きな視野で考えられる場所であり、機会であると話す先生からは、「学問をする」ことの大切さを教わります。歴史学科で根本を学ぶ学生だからこそ、何事にも自分なりの問いを立てられるというプライドを持つ小佐野さんは、過去を学びつつ、まっすぐに前を見つめています。

04 授業は歴史を考える入り口

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古川:好きな授業とか印象に残っている授業は?
 
小佐野:「史学概論」です。高校までは、教科書に書かれていることを吸収するだけだったんですよね。でも「史学概論」ではいろんな分野の先生が週替わりに授業をしてくれて、講義の後にリアクションペーパーを書くんですけど、自分がどう思うかを書かないといけないんです。だから自分が全然興味のない分野の先生の話でも、どこか自分が引っかかるところはないかなと思って授業を聞くんです。そう思いながら聞くと、「先生はこう言ってるけどほんまかな?」って思ったり、教科書ではさらっと書いてあるだけなのに、先生はここをこんな風に考えるんや、って気づいたり。授業が考える入り口になるんです。歴史はこういうふうに考えるんやっていうベースのようなものがわかってきて、自分は歴史学科に入ったんだなって実感する授業でした。
 
古川:これもいい話やん!
 
小佐野:そうですか(笑)。
古川:それぞれの先生が、時には自分が思いもしない話をして、それをきっかけにして思索を深めるわけですね。「史学概論」が目指している授業目標をしっかり受けとめてくれていますね。他には?
 
小佐野:今、中国語を取っているんですけど、先生が中国に留学をしたことがあって、中国のリアルな話、家族のこととか食文化について話をしてくれるんです。中国って、正直あんまり良い印象がなかったんですけど、実際に知っている先生から話を聞くと、だいぶ興味の持ち方が変わるなって思いました。何となくで取った授業なんですけど、今は結構楽しく受けられています。
 
古川:それもまた良い話やな(笑)。まあ言語は文化ですからね。文化は人びとの営みが作るものですから、それこそ生活体験のある先生が話すと、リアルな人びとの存在が浮かんできます。それは非常に大事ですね。
 
小佐野:実際に中国の人と喋る時は、スピード感とか話すテンションも違うだろうなって思いますし、そういう人をイメージできないときついですね。実際の中国を知ってる先生が親身になって教えてくれるのと、独学で勉強するのでは違うなって思います。
 
古川:本当にそうですね。他に何か印象に残っていることは?
小佐野:今「部落差別と浄土真宗」っていう授業を取っていて、成績評価は授業の感想を出すだけなんですけど、それだけなので、逆に自分ならどう感じる、どう真剣に聞くのかって問われている感じがして。今となったらそんな差別したらアカンってなるけど、江戸時代ではそれが社会のルールになってたりとか。誰か疑問に感じる人はいなかったんかなって思ったりして、興味深く授業を受けています。
 
古川:僕も人種差別のことをやってるんですけど、差別問題はいい加減な知識で語るのは難しくて、逆に傷つけてしまうこともあるので、部落差別の授業は自分が試されているという気持ちできちんと受けていただきたいと思います。女性差別とか社会のマイノリティとかにも当てはまる、人間が作り出した問題ですので。でも一方で、人間が作り出したものっていうのは、人間が壊せるんですよ。そう思わなきゃいけない。そこへどういうふうにたどり着けるか。だからあなたの話は気づきとしてとても良いと思います。

PROFILEプロフィール

  • 古川 哲史

    文学部 歴史学科 教授



    神戸市生まれ。広島大学総合科学部・総合科学科卒業。在学中、日本-アフリカ文化交流学院(在ケニア)に留学。その後、広島大学大学院社会科学研究科・イギリス地域研究講座、オハイオ大学国際事情研究所大学院・アフリカ研究講座(在アメリカ合衆国)、京都大学大学院人間・環境学研究科・共生文明論講座などで学ぶ。日本学術振興会特別研究員(史学・日本史)、京都大学総合人間学部研修員、国立民族学博物館共同研究員、明治学院大学国際学部在外研究員など。オハイオ大学、オハイオ州立刑務所、コロンバス日本語補習校、同志社女子大学、立命館大学、京都市立芸術大学、松下看護専門学校等で教える。2005年、大谷大学文学部・国際文化学科に赴任。2018年より歴史学科・世界史コースに所属、現在に至る。
    これまで、日本やアメリカ、アフリカの歴史と文化に関心を向けてきた。近現代の日本とアメリカやアフリカとの関係史にも取り組んでいる。



  • 高校卒業後は漠然と就職を考えていたが、学ぶことの面白さを知り進学を決めた。興味のあった歴史を学ぶため、京都の大学をめざすことにし、さらにオープンキャンパスに参加して雰囲気や設備などを確かめた結果、大谷大学を受験することにした。
    何事にも自分なりの問いを立てられるよう心掛けている。将来の夢はまだないが、大学4年間で、身近にある時事問題などに対して、1人の人間としてちゃんとした考えを持つことをいちばんの目標とし、まっすぐに前を見つめている。