宗教系の高校で充実した生活を送ってきた岡本君は、仏教への関心を深めたいと、迷わず仏教学科の門をくぐりました。仏教学科で史料や経典を読む際に必須となるサンスクリットやチベット語、漢文などに悩まされてはいるものの、授業はどれも面白いと言います。仏教を通して現代の問題を考え、弱い立場にある人たちのことを念頭において、学びを今後の生活に反映させていく。仏教の徒として、歴史と伝統を備えた場での学びが始まっています。

05 仏教を勉強する雰囲気にあふれた大学

OTANI'S VIEW

更新日:
戸次:大谷大学には全学部共通の必修科目で「人間学」っていう授業がありますよね。あれは仏教学科や真宗学科の教員が主に担当してますけど、「仏教学」や「真宗学」っていう名前じゃないところがポイントなんですよ。あくまで仏教や真宗に基づく建学の精神を重ねながら、人間のいろいろな問題を考えていきましょうっていう講義でね。それを全学の取り組みにしたうえで、それぞれが興味のある分野の勉強をしていくというのは、大学の規模感を考えたうえで非常に大事かなと思います。「人間学」は大谷大学のアピールポイントの一つではないかと思っているんですが、今はおそらく親鸞のことを勉強してますよね。高校では空海のことを学んで、共通点とか違いとか、気づくことはありますか?
 
岡本:やっぱり、人のために尽くされたっていうのが共通してますね。明確な違いは、弘法大師空海は、中国に行かれて密教を学ばれたのに対して、親鸞聖人は延暦寺の天台宗からの派生ですよね。それくらいしかまだわからないです。
 
戸次:弘法大師の場合は、当時においては相当なエリートだったんですよね。それで中国に留学されて、当時の最新の仏教として流行していた密教を学んで、それを日本に導入されるわけです。高野山を開くと同時に、当時の中心だった奈良の仏教界にも影響をあたえていくわけですね。親鸞聖人の場合はそれとはまた違った歩みをされるんですよね。最初は比叡山に学んだんですけど、山を下りてから、越後に行ったり北関東に行ったりして、地方の人たちと触れ合って。どう、何か違いがあったりしませんか?
岡本:真言宗は貴族の方から人気があったのに対して、浄土真宗は庶民の側と言いますか。
 
戸次:そういう面もあったでしょうね。そういう違いについても、これからもっと学んでいくと思います。「仏教学演習Ⅰ」はどうですか?
 
岡本:上野先生の授業ですね。あれは本当に楽しいです。仏陀についての話であるとか、オウム真理教の話に絡めて、現代的な諸問題の話もしていただいたり。発表はなくて、資料を読んで先生の話を聞いて、っていう感じなんですけど、すごく面白いです。
戸次:「人間学」でも「仏教学演習」でもそうなんだけど、仏教を勉強するにおいて雰囲気って大事だと思うんですよね。大谷大学にはそういう宗教的な雰囲気があって、学びやすい環境にあると思います。大学の正門横には「きょうのことば」っていう仏教の教えや人間の問題に関連する言葉が掲げられていたりね。あと、京都にあるっていうことも良いですね。岡本君は大学のどういう所が良いと思いますか?
 
岡本:京都にある歴史ある大学なので、歴史も学べて人間についても学べるので、そこがいいと思います。実際に、建物とか菩提樹とか図書館には、歴史や伝統を感じますね。
 
戸次:歴史と伝統って、ただそれだけだと堅苦しいイメージもありますけど、歴史と伝統がありながらも自由な雰囲気があるのも、大谷大学の魅力ですね。

PROFILEプロフィール

  • 戸次 顕彰

    文学部仏教学科 講師



    1981年新潟県生まれ。2004年東洋大学文学部卒業、2009年大谷大学大学院文学研究科博士後期課程(仏教学専攻)満期退学。2011年博士(文学)。2009年大谷大学文学部任期制助教、2011年大谷大学非常勤講師ほか、2017年真宗大谷派親鸞仏教センター研究員を経て、2020年大谷大学文学部仏教学科講師着任。
    中国などの東アジア世界に伝わった仏教は、教義・修行のみならず、生活や対社会的なあり方など、さまざまな方面で変貌を遂げた。しかし一方では、それぞれの仏教者たちが、時代的課題を背負いつつ、変わらないものを保持して未来に教えを伝承していくことを志した。こうした仏道伝承の過程とその意義について考えている。特に現在は、中国における戒律文献の受容やそこに生じた律僧たちの問題意識に関して、南北朝時代から隋・唐代を中心に研究している。



  • 宗教系の高校で生徒会副会長を務め、生徒会活動の中でも仏教行事に参加してきた。既に僧籍を持っており、大学でも仏教への関心を深めたいと、迷わず仏教学科の門をくぐった。仏教学科で史料や経典を読む際に必須となるサンスクリットやチベット語、漢文などに悩まされてはいるものの、授業はどれも面白く感じている。
    仏教を通して現代の問題を考え、弱い立場にある人たちのことを念頭において、学びを今後の生活に反映させていく。仏教の徒として、歴史と伝統を備えた場での学びが始まっている。