宗教系の高校で充実した生活を送ってきた岡本君は、仏教への関心を深めたいと、迷わず仏教学科の門をくぐりました。仏教学科で史料や経典を読む際に必須となるサンスクリットやチベット語、漢文などに悩まされてはいるものの、授業はどれも面白いと言います。仏教を通して現代の問題を考え、弱い立場にある人たちのことを念頭において、学びを今後の生活に反映させていく。仏教の徒として、歴史と伝統を備えた場での学びが始まっています。

04 やりたいのは、仏教の視点から現代の問題を考えること

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戸次:入学して、仏教の授業が本格的に始まったと思うけど、どんな印象ですか?
 
岡本:先生方が楽しく授業をしてくださるので、ありがたいです。まだあまり難しくないですし、楽しいです。
 
戸次:仏教学科は「仏教思想コース」と「現代仏教コース」という2つのコースがあるんですよね。私は今は思想系のコースに関係することが多いんですけど、「現代仏教コース」は学生から人気があって、まずは仏教の基礎をきちんと学んで、その視点を生かして現代の諸問題を考えていこうっていうことなんですけど、岡本君は何か、こういうことを考えていきたいっていう問題があるんですか?
 
岡本:今だったらやっぱりコロナウイルスですね。それによって生じる自死を選ぶ方ですとか、誹謗中傷の嵐などを、仏教的な観点から考えたいです。
 
戸次:それは非常にタイムリーで重要な問題ですし、このコロナ禍の状況において入学してきた、岡本君の経験が生かせるかもしれないですね。「仏教の視点から現代の問題を考えましょう」っていう中で、問題はいろいろあるんだけど、疫病っていうのは、私たち仏教を学ぶ側においても盲点だったというか。そこから生じる差別の問題であったり、自死を選ぶ方の問題であったりを考えていくということは大事なことであると同時に、新しい問題だと思いますから、ぜひじっくりと考えてもらいたいなと思います。
世の中を見ると、感染を抑制するためだったら外出や人との接触を減らすべきなんだろうけど、一方で同時に経済も回していかないといけない。現代の問題というのは、ひとつの側面だけではないわけですよね。でも、どんな中でも、苦しむのは弱い立場の人たちであるということが問題になります。そういうところをどういうふうに考えていくかなんですよね。大谷大学の仏教学科での学びで重要なのは、単に現代の問題を考えていくってことだけじゃなくて、それらを仏教の観点から考えていくってことなんですよね。現代の問題を勉強するだけなら他の学科でもいいわけで。そのほかに、今、何か気になって考えていることはありますか?
 
岡本:そうですね……。期末試験のことです(笑)。
 
戸次:まあ、気になりますよね(笑)。今はインドの仏教を中心に勉強してますよね?どうですか?
 
岡本:インドだから、身分のピラミッドが今も存在するのかなとか考えてます。
 
戸次:カースト制ですね。釈尊はそういう身分制度を問題視された人ですよね。そういうこともぜひ学びの中で考えてもらいたいと思います。社会の中であたりまえのように存在する物事について、本質的に果たしてそれでいいのかっていう問題意識を持って。好きな授業はありますか?
岡本:全部面白いです。第二外国語の中国語は、不得意ですけど。
 
戸次:第二外国語に加えて、仏教学科はサンスクリットやパーリ語・チベット語や漢文もありますからね。そういうものを習得してもらって、実際の仏典を読んでもらうってこともしていきたいと思ってるから。サンスクリットはどうですか?
 
岡本:文法が難しいですね。三人称になったら変化して、でも英語とはまた違った形で、っていうのが「おお……」と言う感じです(笑)。でも難しいですけど、嫌いではないです。
 
戸次:それなら良かった。仏教学科の魅力は?
 
岡本:やっぱり、たくさんある資料を見ながらガッツリ学べるところですね。
 
戸次:図書館とかよく行きます?
 
岡本:はい。レポート作成のために資料を探したりします。
 
戸次:文学部の学びは、文字をたくさん読むことから始まりますからね。ぜひ図書館を大いに活用してもらいたいと思います。

PROFILEプロフィール

  • 戸次 顕彰

    文学部仏教学科 講師



    1981年新潟県生まれ。2004年東洋大学文学部卒業、2009年大谷大学大学院文学研究科博士後期課程(仏教学専攻)満期退学。2011年博士(文学)。2009年大谷大学文学部任期制助教、2011年大谷大学非常勤講師ほか、2017年真宗大谷派親鸞仏教センター研究員を経て、2020年大谷大学文学部仏教学科講師着任。
    中国などの東アジア世界に伝わった仏教は、教義・修行のみならず、生活や対社会的なあり方など、さまざまな方面で変貌を遂げた。しかし一方では、それぞれの仏教者たちが、時代的課題を背負いつつ、変わらないものを保持して未来に教えを伝承していくことを志した。こうした仏道伝承の過程とその意義について考えている。特に現在は、中国における戒律文献の受容やそこに生じた律僧たちの問題意識に関して、南北朝時代から隋・唐代を中心に研究している。



  • 宗教系の高校で生徒会副会長を務め、生徒会活動の中でも仏教行事に参加してきた。既に僧籍を持っており、大学でも仏教への関心を深めたいと、迷わず仏教学科の門をくぐった。仏教学科で史料や経典を読む際に必須となるサンスクリットやチベット語、漢文などに悩まされてはいるものの、授業はどれも面白く感じている。
    仏教を通して現代の問題を考え、弱い立場にある人たちのことを念頭において、学びを今後の生活に反映させていく。仏教の徒として、歴史と伝統を備えた場での学びが始まっている。