宗教系の高校で充実した生活を送ってきた岡本君は、仏教への関心を深めたいと、迷わず仏教学科の門をくぐりました。仏教学科で史料や経典を読む際に必須となるサンスクリットやチベット語、漢文などに悩まされてはいるものの、授業はどれも面白いと言います。仏教を通して現代の問題を考え、弱い立場にある人たちのことを念頭において、学びを今後の生活に反映させていく。仏教の徒として、歴史と伝統を備えた場での学びが始まっています。

02 伝統ある高校の宗教行事で触れた仏教

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戸次:岡本君は、京都の伝統ある洛南高校のご出身ということですけど、仏教系、特に真言宗の高校ですよね。ぜひいろいろ聞きたいことがあるんですけど、まずは、どんな高校生活でした?
 
岡本:高校生活は、端的に言って楽しかったです。1年生の11月から生徒会に所属していて、副会長をやらせていただいていました。あとは、ボランティア同好会というのに参加していて、地域の学童保育に行って、小学生の相手をするっていう活動をしたりしていました。
 
戸次:副会長って、大事な役割ですよね。会長は人前に出て、みんなをまとめ、中心になっていくようなところが必要だけど、その分、副会長は、諸方面に気を配ったりして、裏でサポートするように、しっかりしてないといけなくて。
 
岡本:いえ、しっかりしてなかったです。でもそう言っていただけてありがたいです(笑)。
戸次:生徒会活動では、どんなことをしましたか?
 
岡本:お大師さまの月命日に、御影供(みえいく)(※)にお供え物をするっていうことをやっていました。
 
戸次:高校の宗教行事としてですね。そうした生徒会の活動から、どんなことを得ることができましたか?
 
岡本:やはり組織で動くんで、人との関わり合いであるとか、体育祭運営の難しさとかも実感しました。
 
戸次:宗教の授業もあったでしょ?
 
岡本:はい。でも道徳の延長線上という感じだったので、宗教の教科書を使ったことは一度もないです。
 
戸次:なるほど。さっき、お大師さまっていう言葉が出てきましたけど、弘法大師空海のことですよね。空海の教えとか生涯を学ぶ機会とかはあったんですか?
岡本:はい、高野山合宿というものがありまして、ひたすら勉強するっていう合宿なんですけど、そこで奥之院に参拝したりしました。やっぱり厳かで、神聖な感じがしました。奥之院には秀吉とか信長のお墓もあったりするんですけど、延暦寺とかとの違いは、山自体が奥の方にあるので、神聖さというか特別感が違うと思います。
 
戸次:都会から離れたところで修行をしていくっていう仏教者の在り方が、当時の特徴ですね。写経とかはやったりしました?
 
岡本:やりましたね。冬休みの宿題とかで出ました。
 
戸次:やっぱりそういうのもあるんですね。
(※御影供……真言宗の宗祖である空海をしのんで行う法会(ほうえ)。毎月21日に行うものを、月並御影供と言う。)

PROFILEプロフィール

  • 戸次 顕彰

    文学部仏教学科 講師



    1981年新潟県生まれ。2004年東洋大学文学部卒業、2009年大谷大学大学院文学研究科博士後期課程(仏教学専攻)満期退学。2011年博士(文学)。2009年大谷大学文学部任期制助教、2011年大谷大学非常勤講師ほか、2017年真宗大谷派親鸞仏教センター研究員を経て、2020年大谷大学文学部仏教学科講師着任。
    中国などの東アジア世界に伝わった仏教は、教義・修行のみならず、生活や対社会的なあり方など、さまざまな方面で変貌を遂げた。しかし一方では、それぞれの仏教者たちが、時代的課題を背負いつつ、変わらないものを保持して未来に教えを伝承していくことを志した。こうした仏道伝承の過程とその意義について考えている。特に現在は、中国における戒律文献の受容やそこに生じた律僧たちの問題意識に関して、南北朝時代から隋・唐代を中心に研究している。



  • 宗教系の高校で生徒会副会長を務め、生徒会活動の中でも仏教行事に参加してきた。既に僧籍を持っており、大学でも仏教への関心を深めたいと、迷わず仏教学科の門をくぐった。仏教学科で史料や経典を読む際に必須となるサンスクリットやチベット語、漢文などに悩まされてはいるものの、授業はどれも面白く感じている。
    仏教を通して現代の問題を考え、弱い立場にある人たちのことを念頭において、学びを今後の生活に反映させていく。仏教の徒として、歴史と伝統を備えた場での学びが始まっている。