文学部仏教学科を2018年度に卒業(2020年度に文学研究科仏教学専攻修士課程を修了)された新田真寿さんに、在学中に学んだこと等について語っていただきました。
※このページに掲載されている内容は、取材当時(2025年6月)のものです。

私は、高校の国語科教員として働いています。もともと教員は、自分が最も就きたくない職業の一つでした。しかし、人と関わる機会が多い教員という仕事は「人とともに」を考える場として最適ではないかと思うようになりました。
仏教学科では、仏教が一部の人だけの関心事ではなく、どんな人にも通ずる老病死の「苦」という問題を扱っていることを学びました。私はその後大学院に進学し、その「苦」の原因について研究をしてきました。
「人とともに生きる」という生き方をどのように実践できるか悩んでいた時期に、大谷大学の男子寮である貫練学寮の寮監として寮生たちと生活を共にしました。寮生や先生方と語り合う中で、人と関わる場にまず身を置くことが重要だと気づかせていただきました。
学校には、自分が深めていきたい学問と生き方を実践できる環境があると感じ、教師という道を選びました。
現在も在学中に教えていただいた先生方や、ともに学んだ仲間とつながりがあります。大学で多様な人々と議論を重ねた経験は、今の自分の糧となっています。私にとって大谷大学は、生涯を通して関わり続ける学問を学び「わからない」ということを大切にしてよいのだと実感できた場所です。

寮生活の中で見えてきた「ともに学ぶ」という姿勢

貫練学寮では、夜中に寮生が寮監の部屋を訪れ、さまざまな想いを相談しに来ることがありました。僧侶やお寺に対する気持ち、宗教への疑問、人生の悩みやテスト勉強のことまで、その内容は実に多様でした。
そうした相談を受ける中で、自分の中でいつの間にか薄れていた問題意識や悩みが呼び起こされるような感覚がありました。だからこそ私は、寮生活における寮監と寮生の関係性は、何かを教えるという一方向の関係ではなく、一緒に悩みながら学び合える関係となったと感じています。
わからないことを相談し合い、やがて議論へと発展することも多くありました。自分の迷いや問い直したいことを、改めて見つめ直す機会になりました。
寮生たちと本音でぶつかり合いながら過ごした2年間は、私にとってかけがえのない時間だったと思います。

インド研修で芽生えた問いと、それを育む学びの環境

大学に入学した年に参加したインド研修では、仏教と深く関わる場所を訪れることができました。実際に目で見て、耳で聞いて感じた世界は強く印象に残っています。そこから、自分という一人の人間がどのように生きていくのかを考えるようになりました。
人間を見つめていく上で、老病死に代表される「苦」を課題として、大谷大学で学びました。
大学では先生方とも深く語り合う機会に恵まれました。今でも勉強会を通してつながりを持っています。学生の頃ほど集中して勉強に取り組む時間はなかなか取れませんが、今なお勉強する機会をつくってくださる先生や先輩とのつながりは、これからも大切にしていきたいと思っています。

 ※インド研修・・・2015年度に実施された海外研修プログラム。まず全8回の事前講義で仏教を中心としたインドの宗教や文化の概要について学んだ上で、インド北東部やネパールに点在している四大仏跡などの仏教遺跡を中心に、インドの大地を2週間かけて巡ります。

伝わることばを模索する日々

教員免許は、国語科と宗教科の2つを取得しました。国語科を選択したのは「ことば」についての学びを、そして宗教科は人間の本質をテーマとする「仏教」についての理解をそれぞれ深めたかったからです。宗教科という科目があることは、大谷大学に入学して初めて知りました。
どちらの科目もことばを扱うという点で「伝える」「伝わる」ということが常に問いとなります。模擬授業を行っていた頃から、ことばをうまく伝えられたという実感を持てたことは一度もありませんでした。だからこそ、これからも「ことばがどのようにすれば伝わるのか」という課題に向き合いながら、授業や学校生活の中で人との関わりを考えていきたいと思っています。

PROFILEプロフィール

  • 新田 真寿(にった しんじゅ)

    文学部仏教学科 2018年度卒業 人文学研究科仏教学専攻修士課程 2020年度修了