ひろい そらでは、ぼくらの おおきさのことなど わすれてしまうよ

小風さち (『とべ! ちいさいプロペラき』福音館書店 13頁)

 

 ある飛行場の格納庫の中で、赤色の可愛いプロペラ機が初飛行の日を待っています。そこへジャンボジェット機が整備のために入ってきました。ジェットエンジンを四つも搭載したその翼を見たプロペラ機が、「なんて大きいんだろう」と感心していると、パイロットのおじさんが何気なく、「見てみろよ。あのでっかいエンジンを。お前がテントウムシに見えちまうな」と言います。そう言われたプロペラ機は、自分の小ささが急に恥ずかしくなり、胸がつかえそうになってしまいました。その夜、静かな格納庫の中で泣きそうになっているプロペラ機にジェット機が声をかけ、少し話をします。事情を察したジェット機の言った言葉が、「げんきをおだし、プロペラくん。ひろいそらでは、ぼくらのおおきさのことなどわすれてしまうよ」でした。

 さて、私たちはこのプロペラくんと同じような気持ちになることがあります。人から何かを言われたり、あるいは人から言われなくても、自分で自分を小さく見積もったりしてしまうのです。みなさんにも、たとえば授業中に発言することをためらった経験はありませんか。数千年に渡って営まれてきた学問を前にして、自分の理解が追いついていないと思ってしまうのもわかります。ですが、もし一回で理解できたのであれば、それは初めからもうほとんどわかっていたことなのではないでしょうか。本当に「学ぶ」ということをする時、私たちは「新しい」ことに触れているので、すぐには理解できないはずです。「学ぶ」とはそういうことです。ですので、学ぼうとする私たちは間違えますし、失敗もします。それで当然だと思います。

 だから授業では積極的に発言してほしいと思っています。大学とは安心して間違えることができる場所だからです。でも、このように書いてきても、みなさんの心になかなか響かないかもしれません。それもわかります。なぜなら「そう語る教員は失敗しないのでしょ」と思ってしまうだろうからです。ですから、ここではっきりと言いましょう。教員も間違いや失敗をするんだ、と。実際、今みなさんが読んでいる「きょうのことば」のこの文章自体が、「ここがわかりにくい」「これはおかしい」と色々ダメ出しされ、修正を重ねて出来上がっていきます。全面的に書き直さなくてはならなくなる回もありますし、最初に提案した標題の言葉がボツになって選び直すこともあります。教員たちもこのように失敗から学び、よりよいものができていくわけです。

 「ひろいそら」では、教員であろうが学生であろうが、間違えるし失敗もします。だから、プロペラくんがかけてもらったこの言葉に私たちの背中も押してもらいましょう。

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