自らの執筆に生かすために、これまで手を出して来なかったジャンルの小説も読むようになった西本君は、リアリズムを基本にして書いていくことの難しさを痛感しています。自分が考えるストーリーに合う形で病気を作り出したり、盛り上がる場面を書きたいから登場人物を死なせるという安易な書き方は卒業して、書き手として一歩踏み出してほしいという先生からのアドバイスを受け、卒業制作に向けて気を引き締めています。

02 起承転結は絶対か?

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國中:単位は順調に取ってる?
 
西本:はい。
 
國中:卒業研究に集中できるように、できるだけ3年生までに単位を取っておいて、万全の状態で臨むんですね。
西本君は以前、リアリズムで書きたいって言ってたけど、去年の秋に書いた小説は、わりとふわふわしたファンタジックなものでしたよね。
 
西本:そうなっちゃいましたね。最近はリアリズムの作品よりSFものを読む方が多くなっていて、ちょっと影響を受けちゃったのかなって思います。今まではリアリズムだけを読んでいたんですけど、幅広くいろんな作品を読んでみた結果、そういう作品が生まれてしまったっていうことはあるかもしれないです。
 
國中:今まであまりファンタジーとかSFを読まなかったっていうのが不思議だよね、若いのに。
 
西本:あまり凝り固まってるのも良くないかなと思って。今まで読んだことのないジャンルに手を出すようになったのは、自分が見ているものはたくさんなのに、興味を持って話すことの幅が極端に少ないなと思ったからです。
 
國中:若い人にしては例外的な感じがしますね。その前は何を読んでいたんですか?
 
西本:映画化されて、確実にリアリティがあるってわかる作品とか、作者自身がファンタジーじゃないって公言しているものを選んでいました。病気ものとか殺人ものも、起承転結をどうやって作るかっていうのを気にしながら読んでいたので、ちょっと異質な読み方をしていましたね。どこらへんで区切りやすいかとか考えて読んでいたので。
 
國中:今は小説の展開でも、起承転結ってあまりはやらなくて、転転転、みたいな感じがほとんどじゃないかなぁ。

PROFILEプロフィール

  • 國中 治

    文学部 文学科 教授



    早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程(日本近代文学専攻)単位取得満期退学。韓国大田広域市大田実業専門大学専任講師(日本語および日本事情を担当)、神戸松蔭女子学院大学文学部総合文芸学科教授などを経て、現職。
    昭和前期を代表する詩誌「四季」の文学者たち、特に三好達治と立原道造と杉山平一を中心に研究している。この3人は資質も志向も異なるが、詩形の追求と小説の実践、それらを補強する理論の構築に取り組んだ点では共通する。時代と社会にきちんと対峙しえなかったとして、戦後、「四季」は厳しい批判にさらされる。だが、日本の伝統美と西欧の知性を融合させた「四季」の抒情は奥が深くて目が離せない。



  • 高校の先生の勧めで大谷大学を知り、創作できる場所もあるということに惹かれ、入学。1年生の時の対談以降、自らの執筆に生かすために、これまで手を出して来なかったジャンルの小説も読むようになった。
    入学当初からの目標だった卒業制作は、教員による事前審査に合格。リアリズムを基本にして書いていくことの難しさを痛感しながら、「書き手として一歩踏み出してほしい」という先生からのアドバイスを受け、卒業制作に向けて気を引き締めている。
    また、将来は出版社を中心に、自分の文章力が活かせる職業を希望している。