面白かった数学の授業をきっかけに、子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望している村上さんは、授業ではいつも一番前に座って話を聞いています。先生になろうと志して授業を受けると、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきました。模擬授業を通して、生徒の気持ちも先生の気持ちも理解でき、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしています。

06 子どもの目を輝かせる先生になるには、努力しかない

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江森:将来、どんな先生になりたいですか?
 
村上:子どもから認められる先生です。この先生好きやし、授業も面白いし、相談できる、って。好かれるのと信頼されるっていうのは違うと思うので。
 
江森:人の話を聞いて、人の悩みを解決するって大変な仕事だから、信頼されるっていうのは大事だよね。もう二度とその子どもたちには会わないかもしれないけど、子どもたちがいくつになっても、その子の肝心な部分を育てたというのは大事だと思うんですよ。
 
学生に「小学校のとき、どんな授業を受けた?」って聞いても、ほとんどの学生が覚えてないんですよ。でも覚えてないから無駄というわけじゃない。価値観とか、忘れちゃったけど大事なことというのはあるんですよね。だから小学校の先生っていうのは大変だけど、やりがいはあるし、良い仕事だと思いますよ。
目標とする先生になるために、大学での4年間、どんな努力をしようと思いますか?みんな、こんな先生になりたいってことは言えるんだけど、そのためにどう努力するかっていう4年間の展望をしっかり持たないと。
 
村上:まずは、友達に授業を見てもらって「この先生なら」って思ってもらえるようにしたいです。座ってる側の子たちから「さっきの授業うまかったな」って言ってもらえると、認めてもらえてるっていうか、私がやりたいことわかってもらえたんだって思うから、そういうところから始めたいです。同じ教師を目指してる子たちなら、わかってくれることもあると思うから。
 
江森:まあ、全員から信頼されなくて良いんですよ。私には合わない子どもがいても仕方ない、って思ってても良いんです。でも、子どもたちに良い先生と思ってもらうには、努力しかない。人間性を磨くことです。大学の成績なんて良くなくても、子どもが目を輝かせれば、良い先生なんです。「教員は評価がつかないからいいね」なんてよく言われますけど、実は子どもから評価されている。だから教員っていうのは大変なんですよ。教育学部では、学生を教員に仕立てることはできますけど、そういうことじゃない。この先生に惹かれるという魅力を持つことが大事。子どもの人生に影響を与えるわけですから。でも村上さんはまだ1年生だけど、教育ということをだいぶ理解してくれていて嬉しいなと思いました。
 
村上:ありがとうございます。ちなみに、先生の専門はどんなことですか?
 
江森:私の専門は数学教育で、小学校算数とか中学校数学の免許とかを出す教育法です。例えば「8+3」はどういうステップを踏んでわかるようになるのかということを詳しく考えたりしています。村上さんは模擬授業をやる時に、児童役の反応を見るって言ってましたけど、なかなかそれができない学生が多いんですよ。だから有望だと思いますよ。
 
村上:でも採用試験に受からないと先生になれないじゃないですか。採用試験の勉強はいつから始めたらいいですか?
 
江森:今からだよ。先生が「3年生からで間に合うよ」って言ったら「じゃあ3年まではやらなくていいや」じゃなくて、自分がなりたかったら、やるしかない。教員採用試験って、一般教養があるんです。「〇〇県の特産品は何ですか」みたいな問題が出る。それを覚えることに何の意味があるんだって学生は思うんだけど、そういうことじゃないんです。
 
例えば私が誰かに同じことを言うとしても、大谷大学の教員としてなら聞いてもらえるけど、そこらを歩いている人からの話なら、耳を傾けようとは思わないでしょ。だから、教員になろうとする努力も必要なんですよ。世の中も、一定の基準を超えた人を先生と呼ぶってことにしていますしね。だから勉強するのは、いつからじゃなくて、この対談が終わったらすぐなんですよ。
 
村上:わかりました!ありがとうございます。

PROFILEプロフィール

  • 江森 英世

    教育学部 教育学科 教授



    1959年東京都生まれ。1994年筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得満期退学。博士(教育学)。1994年関東学院大学工学部専任講師、1997年関東学院大学工学部助教授、2000年宇都宮大学教育学部助教授、2004年タイ王国コンケン大学客員教授(現在に至る)、2005年群馬大学教育学部助教授、2007年群馬大学教育学部准教授、2009年群馬大学教育学部教授、2011年群馬大学教育学部附属小学校校長(兼任)、2018年群馬大学名誉教授、2018年大谷大学教育学部教授。
    学習者にとって自然な思考にそう授業では、最初わからなかったことが、授業の進行を通して、だんだんわかってくるようになってくる。そして、そんな授業では、子どもたちから自然に、「なるほど、なるほど」という相槌が聞こえてくるようになる。「なるほど、なるほど、先生、だんだんわかってきたよ」という子どものつぶやきがでる授業を目指して、私たちの授業力・教師力を高めるために何ができるのかを考えている。



  • 保育士になりたいという思いから中学生の時に保育園で職業体験をするも、保育士の大変さを身をもって知ることとなった。その後、中3の時に数学の先生と出会ったことがきっかけで、小学校の先生を志す決意をした。
    大学での学びは、例えば模擬授業を通して生徒の気持ちも先生の気持ちも理解できるなど、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきた。子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望しており、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしている。