面白かった数学の授業をきっかけに、子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望している村上さんは、授業ではいつも一番前に座って話を聞いています。先生になろうと志して授業を受けると、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきました。模擬授業を通して、生徒の気持ちも先生の気持ちも理解でき、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしています。

04 授業は、先生の雰囲気作りが大事

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江森:どういう先生だと、生徒は授業に引き込まれると思いますか?
 
村上:やっぱり聞いてばっかりの授業は面白くないし、眠くなるし。私が尊敬していた数学の先生は授業でプリントを使ってたんですけど、効率がいいなって思ってて。それを使いながらグループで考えて、班ごとに発表っていう授業が楽しかったです。
 
江森:グループ学習は、できる子もできない子もいるから、みんなで力を合わせて問題を解くっていうことが難しいんじゃないかと思いますけど、どうでした?
 
村上:班の中には、確かにできる子もできない子もいたんですけど、しっかり時間を取ってくれたので、おいていかれる子がいなかったような気がします。それから、先生には聞きにくいことでも、同級生にだったら聞けるじゃないですか。そういうのはやっぱり楽しいし。
 
江森:グループ学習のとき、できる子は先に解いちゃうわけ?それともみんなを待ってるの?
 
村上:できる子は、自分が解くことから始めるんじゃなくて、わからない子が困ったところから教えてあげてましたね。
 
江森:先生みたいな感じだったんだね。
村上:そうですね。できる子にしても、教えるっていうのは勉強になると思うし、できない子が「なんでこれじゃダメなの?」とか予想外のことを言ってきたりして、できる子も一緒になって考えたり。できる子には正解しか見えてないから、疑問にさえ思わないことも、できない子にとってはわからないので一緒に考えたり。
 
江森:なるほど。それはできない子にとっても居場所があるね。先生がそういう雰囲気づくりをしてたのかな?
 
村上:そうかもしれないです。できたグループにも、「ここは何でこれじゃないの?」って声をかけたりとか。
 
江森:そうすると、先生に言われたことでまた気づくことがあったりしてみんなで考えられるんだね。でも、自分で説明してしまう方が、先生としては楽じゃないかな?
 
村上:今「教育原論」の授業を受けてて、「待つことと与えることは一方的、それをうまく組み合わせることで良い授業を作れる」みたいなことを習ったんです。先生ばかりがしゃべってしまうと、わかってない子がいても気づけないし、先生に質問できない子もいると思うし。その数学の先生は、その辺を上手にやってましたね。待つことで、わからない子を減らすことができるし。
 
江森:グループワークをすると授業は遅れるわけですけど、もっと早めた方がいいとか、わからない人にばかりかまってないで、とかいう雰囲気はなかったですか?
 
村上:なかったですね。みんな他の子のことを考えられる人たちだったので、休み時間とかにも「さっきのここがわからなかったんだけど」とか聞き合ったりしてました。
江森:どうしたらそういう良い雰囲気を作れると思いますか?
 
村上:大学の授業でも、こういうふうにしたら盛り上がった授業ができる、ってイメージするのが大事やなって感じてて、わかっていない子がいることも想定しながら授業を作っていったら、自分だけが授業をやっているってことにはならないんじゃないかなと思います。
 
江森:村上さんが大学で授業をたくさん受けていくと、そういう能力をしっかり身に付けてもらえそうで、私としても嬉しいですね。

PROFILEプロフィール

  • 江森 英世

    教育学部 教育学科 教授



    1959年東京都生まれ。1994年筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得満期退学。博士(教育学)。1994年関東学院大学工学部専任講師、1997年関東学院大学工学部助教授、2000年宇都宮大学教育学部助教授、2004年タイ王国コンケン大学客員教授(現在に至る)、2005年群馬大学教育学部助教授、2007年群馬大学教育学部准教授、2009年群馬大学教育学部教授、2011年群馬大学教育学部附属小学校校長(兼任)、2018年群馬大学名誉教授、2018年大谷大学教育学部教授。
    学習者にとって自然な思考にそう授業では、最初わからなかったことが、授業の進行を通して、だんだんわかってくるようになってくる。そして、そんな授業では、子どもたちから自然に、「なるほど、なるほど」という相槌が聞こえてくるようになる。「なるほど、なるほど、先生、だんだんわかってきたよ」という子どものつぶやきがでる授業を目指して、私たちの授業力・教師力を高めるために何ができるのかを考えている。



  • 保育士になりたいという思いから中学生の時に保育園で職業体験をするも、保育士の大変さを身をもって知ることとなった。その後、中3の時に数学の先生と出会ったことがきっかけで、小学校の先生を志す決意をした。
    大学での学びは、例えば模擬授業を通して生徒の気持ちも先生の気持ちも理解できるなど、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきた。子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望しており、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしている。