面白かった数学の授業をきっかけに、子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望している村上さんは、授業ではいつも一番前に座って話を聞いています。先生になろうと志して授業を受けると、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきました。模擬授業を通して、生徒の気持ちも先生の気持ちも理解でき、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしています。

02 大学では、知識を与えるのではなく、欲しがらせる

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江森:サークルとかバイトはやってる?
 
村上:ギター部に入ったんですけど、やっぱり運動をしたいなと思って辞めてしまいました。今は運動ができるところを探している段階です。バイトは、学校のすぐ近くでアパレルをやってます。
江森:充実してるんですね。村上さんは前向きなので、授業でもいつも一番前に座ってくれるんだよね。学生にはよく言うんだけど、距離感って大事なんですよ。授業の前に教員と雑談したりするのと、教室の後ろに座ってるのとでは、かなり違うと思うんですよね。ちょっとした会話でも、言葉を交わすと、より前向きに授業を受けてくれるようになりますし。教育学部の学びって、一見すると小学校の復習みたいな感じだよね。小学校の教科書を見ながら勉強するし。何か発見はありましたか?
 
村上:小学校の勉強内容を振り返るなんて、教育学部に入らなければやらなかったことだし、小学生の時は、この勉強は中学につながるな、とか思わないじゃないですか。でも高校までの勉強を終えてからまた勉強すると、「ここは中学のあれにつながるんだな」ってことがわかりますね。あの実験をやってないと、この授業がわからなかっただろうな、とか。そういう発見がありました。
 
江森:そうすると、毎日楽しい?
 
村上:はい(笑)。本当に、教育学部に入らなかったら気にもしなかったと思うようなところも気になってきて、視野が広がるというか、考えも広がりますね。全部が、先生になるための選択肢というか、どういう先生になっていったらいいのかっていうことを考えるきっかけになります。
 
江森:大谷大学は本当に良い大学でね、私にとっては4つ目の大学になるんですけど、多様な教育体系があるんです。それに、キャンパスに入ってくる学生がみんな笑顔なんですよ。そういう中で教員養成をしてますから、大谷大学でないと養成できない教員というのがあるはずなので、ぜひいろいろ吸収してほしいと思いますね。
 
学生の中には、遅刻しそうなときに、もう授業に間に合わないから欠席する、と考える人が多いんですけど、私の授業では、遅刻はOKなんですよ。その代わり、遅れたときは前の扉から入ってきて、1分間スピーチをするんです。それが終わったらみんなで拍手して、よく来たね、って。
大学は、いろんな授業があっていいと思うんです。教員がひたすら深い知識を与えてくれる授業もあっていいと思いますし。知識というのは、ため込まないといけないんです。スカスカな知識っていうのは役に立たない。知識を覚え込ませることを批判する人がいますけど、知識っていうのは溢れるほどないと、思考が始まらないんですね。だからある程度の知識を蓄えることは必要なんです。
 
でも大学では、知識を与えると言うより、欲しがらせる。私は「8+3」を教えるだけで、1週間授業ができます。誰でも「8+3」は教えられるけど、同じテーマで1週間も深く考えたことはない学生にそれができるというところを見せてやれば、あとは自分で学び方を覚えていくと思っています。

PROFILEプロフィール

  • 江森 英世

    教育学部 教育学科 教授



    1959年東京都生まれ。1994年筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得満期退学。博士(教育学)。1994年関東学院大学工学部専任講師、1997年関東学院大学工学部助教授、2000年宇都宮大学教育学部助教授、2004年タイ王国コンケン大学客員教授(現在に至る)、2005年群馬大学教育学部助教授、2007年群馬大学教育学部准教授、2009年群馬大学教育学部教授、2011年群馬大学教育学部附属小学校校長(兼任)、2018年群馬大学名誉教授、2018年大谷大学教育学部教授。
    学習者にとって自然な思考にそう授業では、最初わからなかったことが、授業の進行を通して、だんだんわかってくるようになってくる。そして、そんな授業では、子どもたちから自然に、「なるほど、なるほど」という相槌が聞こえてくるようになる。「なるほど、なるほど、先生、だんだんわかってきたよ」という子どものつぶやきがでる授業を目指して、私たちの授業力・教師力を高めるために何ができるのかを考えている。



  • 保育士になりたいという思いから中学生の時に保育園で職業体験をするも、保育士の大変さを身をもって知ることとなった。その後、中3の時に数学の先生と出会ったことがきっかけで、小学校の先生を志す決意をした。
    大学での学びは、例えば模擬授業を通して生徒の気持ちも先生の気持ちも理解できるなど、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきた。子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望しており、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしている。