面白かった数学の授業をきっかけに、子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望している村上さんは、授業ではいつも一番前に座って話を聞いています。先生になろうと志して授業を受けると、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきました。模擬授業を通して、生徒の気持ちも先生の気持ちも理解でき、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしています。

05 自分の出番じゃない授業をいかに有意義にするか

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江森:みんなの前で授業をするために黒板の前に出ると、ドキドキしませんか?
 
村上:します。
 
江森:でも、緊張しながらも子どもたちの前で話をする楽しさっていうのはあって、教員を続けられるのは、そのワクワク感が勝ってるからだと思うんだけど、ドキドキ感とワクワク感って、どんな感じですか?
 
村上:まだ緊張するんですけど、その緊張は、これ言って逆に指摘されたらどうしようとか、間違えちゃったらどうしようとかいう思いで、ワクワク感っていうのは、私の授業で「なるほど」って思ってもらえたら嬉しいので、そう思わせたいです。
江森:自分なりの授業ができたときはワクワクすると。大学の授業では5分くらいの短い授業をやってもらうだけだけど、うまくできた時とそうでないときって、何が違うんだろうね?
 
村上:発表する時に、みんながどういう風に聞いてくれてるのかっていうのを結構見てるんですけど、つまらなそうにしている子ってすぐにわかるんですよね。寝てる子も目立ちますし。私は寝かせたくないし、つまらなくさせたくないと思います。
 
江森:そのとき、学生の顔がちゃんと見えてるんだね。それはすごいことだね。
 
村上:聞いてる人が「この内容だったら眠くなっちゃうのも仕方ないな」って思う気持ちはわかるので、そうはさせたくないですね。聞いてくれてる子は頷きながら聞いてくれるし、うまくいった時は、みんなが前を見てめっちゃいろいろ書いてくれてるんですよね。
 
江森:そういう反応が自分でわかるんだね。友達が模擬授業をしているとき、自分の態度は変わりました?
 
村上:はい。「こういう言い方をしたらワクワクするんだな」って思ったり、逆に「結局何が言いたいのかわからへん授業だな」とか「それじゃ伝わらないんじゃないか」と思ったり。そう感じたら、どうしたら今の授業を良くできるのかなってことを、最近考えるようになりました。
 
江森:それはだいぶわかってきましたね。上手な授業を見ても学ぶことは少ないんですよ。「なるほど」だけになっちゃって。1人の学生が模擬授業をしていると、他の学生はそれに付き合ってるって感じなんだけど、座ってる時も大事なんだよね。
村上:はい。面白くないからいいや、じゃなくて、面白くないからどうしたら良くなるかって考えることが大事やと思います。
 
江森:大谷大学の初等教育コースでは1クラス16~17人と本当に少人数でやってるけど、1つの授業に学生が17人だとして、模擬授業も17回に1回しかやらないから、そんなに回数はできないんですよね。でも残りの16回分をどうやって過ごすかっていうのは大事だなって思うんですけど、その大事さは、4年生くらいにならないとなかなか気づかないんですよ。村上さんがそれに気づいているというのは素晴らしいと思います。

PROFILEプロフィール

  • 江森 英世

    教育学部 教育学科 教授



    1959年東京都生まれ。1994年筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得満期退学。博士(教育学)。1994年関東学院大学工学部専任講師、1997年関東学院大学工学部助教授、2000年宇都宮大学教育学部助教授、2004年タイ王国コンケン大学客員教授(現在に至る)、2005年群馬大学教育学部助教授、2007年群馬大学教育学部准教授、2009年群馬大学教育学部教授、2011年群馬大学教育学部附属小学校校長(兼任)、2018年群馬大学名誉教授、2018年大谷大学教育学部教授。
    学習者にとって自然な思考にそう授業では、最初わからなかったことが、授業の進行を通して、だんだんわかってくるようになってくる。そして、そんな授業では、子どもたちから自然に、「なるほど、なるほど」という相槌が聞こえてくるようになる。「なるほど、なるほど、先生、だんだんわかってきたよ」という子どものつぶやきがでる授業を目指して、私たちの授業力・教師力を高めるために何ができるのかを考えている。



  • 保育士になりたいという思いから中学生の時に保育園で職業体験をするも、保育士の大変さを身をもって知ることとなった。その後、中3の時に数学の先生と出会ったことがきっかけで、小学校の先生を志す決意をした。
    大学での学びは、例えば模擬授業を通して生徒の気持ちも先生の気持ちも理解できるなど、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきた。子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望しており、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしている。