面白かった数学の授業をきっかけに、子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望している村上さんは、授業ではいつも一番前に座って話を聞いています。先生になろうと志して授業を受けると、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきました。模擬授業を通して、生徒の気持ちも先生の気持ちも理解でき、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしています。

03 子どもから見えないところで準備をする

OTANI'S VIEW

更新日:
江森:「教職入門」という授業では、教職って何だろうっていうことを考えましたよね。毎年、修学旅行について勉強をするんですけど、行事をどうやってやるかっていうのは教員になると大事なんですよ。しかも宿泊を伴うとなると、人の命を預かりますしね。あの体験はどうでしたか?
 
村上:私は学校ボランティア(※)で小学校に行ってて、この前は宿泊体験で「花背山の家」に引率で行ったんですけど、いきなり1時間くらい空き時間ができてしまったり、スケジュール通りにいかないことばっかりでした。修学旅行のしおりを作ったときも、時間通りにきちんと予定を組んだんですけど、実際に子ども達を連れて行くと想像もしないことが起きるっていうことを考えられていなかったので、あの予定のまま修学旅行に行ったら無事に帰って来れなかったのかもしれないなと思いました(笑)。
江森:そうだよね。子どもとして修学旅行に参加するときは、元気で行って元気で帰って来れるのは当たり前だけど、立場が変わると考えることも違うというのがわかると、大学での学びも深まりますね。学生に計画を立てさせると、どこを見て回って、ということだけを考えるんだけど、教員が下見をするときには、どこに保健所や病院があるかとか、「もし児童が夜に発熱したら、こちらの病院で診てもらえますか」っていう問い合わせなんかをちゃんとやるんです。子どもたちは知らないですけどね。だから先生が子どもからは見えないところで準備をしないと行事は成立しないってことを、教員養成課程でもっと学んでおくべきなんですよ。
 
村上:学校の先生っていうのは、本当に見えないところでの努力というか準備が大切なんですね。
 
江森:学校って、いろんな人がいて多様性があるんだけど、教員に大事なのは、引き付ける力なんです。「教職入門」でも少し話したけど、教員にとって大事なのは、子どもが「この先生の授業なら聞こう」って思えるようになることです。どうしたら子どもたちが「村上先生の話なら聞こう」って思えるようになると思いますか?
村上:難しいですね……。でも、先生自身がある教科を苦手だなって思ってしまったらそれは子どもたちに伝わってしまうなって思っています。学校ボランティアに行ってる時も、「あ、先生この教科苦手なのかな」って思ってしまうこともあって。
 
江森:まずは先生が楽しそうにしてくれないとね。
 
村上:そうですね。逆に言うと、どの教科も盛り上げるというか、教科に関わらず先生が楽しそうにやってるのがわかると子どもたちものってくるので、そこをどういう風にやるかだと思います。その辺を、4年間ある中で見つけていきたいなと思います。まだ学校ボランティアを始めてから1年も経ってないですし、これからもっといろんな先生に出会えると思うので、先生の雰囲気とか、いろいろ学んでいきたいです。
(※学校ボランティア……大谷大学教職支援センターがサポートする教育現場体験プログラム。教育学部では、第1学年で必修科目となる(教育学部以外でも希望者は参加できるが、原則、教職課程履修者が望ましい)。実際の教育現場で授業や部活動の指導補助等を行う。)

PROFILEプロフィール

  • 江森 英世

    教育学部 教育学科 教授



    1959年東京都生まれ。1994年筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得満期退学。博士(教育学)。1994年関東学院大学工学部専任講師、1997年関東学院大学工学部助教授、2000年宇都宮大学教育学部助教授、2004年タイ王国コンケン大学客員教授(現在に至る)、2005年群馬大学教育学部助教授、2007年群馬大学教育学部准教授、2009年群馬大学教育学部教授、2011年群馬大学教育学部附属小学校校長(兼任)、2018年群馬大学名誉教授、2018年大谷大学教育学部教授。
    学習者にとって自然な思考にそう授業では、最初わからなかったことが、授業の進行を通して、だんだんわかってくるようになってくる。そして、そんな授業では、子どもたちから自然に、「なるほど、なるほど」という相槌が聞こえてくるようになる。「なるほど、なるほど、先生、だんだんわかってきたよ」という子どものつぶやきがでる授業を目指して、私たちの授業力・教師力を高めるために何ができるのかを考えている。



  • 保育士になりたいという思いから中学生の時に保育園で職業体験をするも、保育士の大変さを身をもって知ることとなった。その後、中3の時に数学の先生と出会ったことがきっかけで、小学校の先生を志す決意をした。
    大学での学びは、例えば模擬授業を通して生徒の気持ちも先生の気持ちも理解できるなど、教わるすべてのことが先生になるために必要なことだと思えるようになってきた。子どもたちがワクワクするような授業ができる先生になりたいと希望しており、どうしたら良い授業ができるかと、常に考えを巡らせる毎日を過ごしている。