大学院人文学研究科
学生インタビュー
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北本:大谷大学に就職したいと思ったきっかけは、女子学寮「自灯学寮」での寮監という仕事の経験です。大谷大学の学寮は、第1学年の学生が1年間のみ入寮可能で、自分自身の生活のためだけではなく、大谷大学の理念である仏教精神に基づきながら、仲間たちと協力して寮の運営を日々行ってもらう場所です。
寮監は大学と連携しながら、住み込みで学寮生たちの生活指導やサポートを行います。全国から集まった、所属の学科も性格もさまざまな十数名の新入生が、よりよい寮生活のために意見を出し合ったり、歩み寄っていく姿を見ているなかで、そういった学生を支える立場に興味をもつようになりました。また、こういった成長の場がある大谷大学のことをより多くの人たちに知ってほしい、と思うようになりました。
三浦:きっかけは自灯学寮の寮監の仕事だということですが、そのなかで特にやりがいを感じられたことは何ですか?
北本:当時は、一緒に生活をしているので、職員というよりは「お姉さん」のようなかなり距離の近い存在だったと思います。一方で、寮監という立場で、指導や注意をしなければならない場面も多々あるなかで、上手く伝えられずに誤解を招いたり、ぶつかり合ったりすることもありました。寮生同士だけではなく、寮監も自分自身の在り方を問い、歩み寄っていくことが必要だったと思います。そうして1年間過ごして、みんなが笑顔で卒寮していくときや、卒寮する寂しさから一緒に泣いたときが、一番やりがいを感じた瞬間でした。
三浦:学生と深く関わっていたことが、職員になって今役立っていると感じられることはありますか?
北本:今、学生と関わる場面は、取材撮影に協力してもらうときが多いのですが、取材では聞かないこともたくさん話すようにしています。他愛もない会話をしたり「普段はどういう子なのかな」と考えたり。そういった時間に感じた雰囲気を、その学生の原稿や写真に反映したいと思っています。なるべく近い距離感で接するように心掛けられているのは、寮監の仕事のおかげだと思います。
また、教員免許状の取得を目指していたときは「教えなきゃいけない」「何かを伝えなきゃいけない」という気持ちが強かったのですが、寮監の仕事を通して、一方的に何かを伝えるだけじゃなく、引き出して一緒に共有できるものを作ることの大切さに気づけたと思います。
三浦:学生時代にいろいろな経験をされているそうですが、震災の被災地でのボランティアは、TAT※で参加されたのですか?
北本:そうです。東日本大震災や熊本地震の被災地に行かせていただきました。震災から時間が経っても地震で倒壊したままの家や、津波が来た跡が建物のどれぐらいの高さまで染みているとか、行かないと分からない景色があります。また、そういった場所に立つと、テレビや写真だけでは知ることのなかったであろう、独特の空気感も感じました。
実際に被災された方と話すことも貴重な経験で、自分の日常が当たり前ではないということを強く感じることができた経験でした。
三浦:その体験を踏まえて職員として何か取り組んでみたいこととかありますか。
北本:今はコロナ禍でボランティアはありませんが、行けるようになったら、職員として学生たちと一緒に行って、感じたことや考えたことを共有したいです。そして、学生が何を思ったかを広く発信し続けることができればいいなと思っています。
三浦:ボランティアに行くのって怖くて躊躇してしまう。こう話して、もしかすると相手を傷つけるんじゃないかって、それがすごく怖くて。北本さんは対話することから逃げないっていうのが良いなって思って。
それってどこかで、大学院で研究されていた関心あったテーマと繋がっている。大学でされていたこととも繋がっているし、職員になってから発信していくこととも繋がっているし。学部、大学院でやっておられたことが生かされてるんだなと思いました。
北本:私は、最初ボランティアをするっていうときに「何かしてあげないといけない」って気持ちが強くって始めたんですけど、被災地に足を運ぶごとに「自分には何もできない」と感じるようになりました。思い描く“助ける”を押し付けようとしていたのかなって。でも自分は「いま日常をどう生きるのか」っていうところに立ち返ることができるようになった気がしています。
大学院での研究で向きあった作品や言葉への共感ということには、「役になりきる」ことが必要だと考えています。その裏側には「この人はどういう景色が見えているか」と他者を想像することが不可欠だと感じていました。そう考えられるようになり、大学院で研究することができたのは、ボランティアの経験があったからかなと思います。
※TAT……東日本大震災の復興支援として、大谷大学教職員有志・学生によるボランティア活動(Tomoni Ayumi Tai/Transcending All Together)
北本 多笑美(Kitamoto Taemi)
大学院 修士課程 文学研究科 国際文化専攻
大谷大学文学部国際文化学科卒業(2014年3月)
大谷大学大学院修士課程文学研究科国際文化専攻修了(2016年3月)
大谷大学自灯学寮寮監(2016年4月~2018年3月)
大谷大学入職(事務職員/2018年~現在)
インタビュアー/三浦 誉史加 准教授
大学院 人文学研究科 国際文化専攻