2021年度 大谷大学文藝コンテスト

【親鸞部門】受賞作品

高校生の部

最優秀賞

二階の六畳間
池田 真菜/私立追手門学院高等学校 第1学年

講評
学校という世界を手放し、六畳間の世界に閉じこもり、やがてスマホを通して「推し」の世界に触れ、そしてついに、自分の足で外の世界へ。作者の過去・現在・未来が踊るような筆致で見事に描かれている。作品を読み進めるにつれ、暗い世界が徐々に色彩を帯びていく。閉め切られたカーテンは開け放たれ、六畳間に光が差し込む様子が目に浮かぶようである。
(仏教教育センター)

優秀賞

まぶたに眠れる銀河(まぶたにねむれるぎんが)
焼山 美羽/私立開智日本橋学園高等学校 第3学年

講評
目の見えない少女。「見えないはずの銀河が、まぶたに潜んでいる。」自分を他に置き換えることにより見方を体験する。筆者の描写からいろんなことがわかっていく。
「もともと、目の前に存在しているものすべてが私にとっての世界だった。しかし、本当の世界は目の前に開示されているものだけではない。」自己を発見された姿に感動を覚えた。大事なことだと思う。「世界は思ったよりも、ずっと広かった。」気づきの大切さを感じる。これからも、人生のあゆみの中で、閉じたまぶたに眠っているものに聞思していかれるだろう。
(仏教教育センター)

中外日報社賞

絵と私
髙津 芽生/私立札幌大谷高等学校 第3学年

講評
あなたは創作活動を通して自己と格闘したのですね。自分は何者なのか、自分は他人の目にどう映っているのか、いつも周囲の目を気にしている。その苦しみを突き破ろうとして描き続けた一途な没我が、自己の古い殻を破って新しい作品を生み、新しい自分と出会うことができたのでしょう。暗い心の葛藤と、緊張から解き放たれた瞬間の輝きが鮮明です。絵を通して自分の心を知り、逃げずに自分と向き合おうと思ったのは、人生の内なるドラマそのものです。
(株式会社中外日報社 代表取締役社長/形山 俊彦)

奨励賞


梅原 伶華/私立札幌大谷高等学校 第1学年

講評
「あなたにとっての「世界」」というテーマが出されていた親鸞部門(高校生)の奨励賞を受賞した本作品は、「私にとっての「世界」。それは青だ。」という印象的な書き出しから始まっている。早朝の空の淡い青や、海岸から見える海の深い青が私たちのまわりを包み込んでいることへの気づきが人生にどれほどの豊かさをもたらすのか、作品を通して素直に伝わってくる。空や海の青という色彩的“贈り物”を通して、元気と優しさを世界は与えてくれるという「私たちと世界の関係性」を捉え表現している所に、本作品の魅力がある。
(仏教教育センター)

中学生の部

最優秀賞

想像と創造
髙橋 怜楽/宮城県仙台二華中学校 第3学年

講評
「想像と創造」と題して書かれたこの作品は、作者自身の世界を見つめる視点と、自分自身を見つめる視点の感覚が際立って素晴らしい。たまたま天文台で見た古代インドの人々が想像した世界の模型の描写から、世界について思いをはせ、そこからそれぞれ違う形のピースの組み合わせで出来ているパズルを想像する。どれ一つ同じ形のピースが無いパズルが支えあって世界を構成していると見、同じように自らが習っているモダンバレエも多くの人々によって成立していることに視点を転じ、自分自身が常にだれかの支えられていることへの感謝で作品を締めくくる洞察力が素晴らしい。いのちの意味を考えさせられる作品である。
(仏教教育センター)

優秀賞

自分のペース
白鳥 桃歌/私立札幌大谷中学校 第2学年

講評
この作品は、「自分のペース」と題して書かれたものである。小学生のころ他の生徒と比べて、懇談の際に先生から算数が出来ないことを指摘された母親が、作者の予想に反して叱らずに「自分のペースでゆっくり」と笑顔で言ってくれた。その後も折に触れて母親からは、決して他の人と比較することなく「自分のペースで」という言葉をかけられ続けた作者は、自らも自分のペースで生きる生き方を大切にしていく。とかく他人との比較によって優劣を決められ、時には自分のいのちの価値すらもその物差しで測られる社会にあって、それとは異なる世界観を求めようとする作者の思いが伝わってくる作品である。
(仏教教育センター)

文化時報社賞

「闇」と共存する「世界」
笹崎 塔子/私立東京農業大学第一高等学校中等部 第2学年

講評
闇との共存という着眼点に、はっと息をのみました。自分自身のつらい経験にしっかり向き合ったからこそ、誰もが闇を持っていることに気付いたのでしょう。
「「闇」があるのが悪いということではなく」と見抜いたところは、親鸞聖人の言葉「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし」を連想させます。そこであきらめや思考停止に陥ることなく、闇を表に出すという解決策を示した点も優れています。
短い文章に、思いが凝縮されていました。親鸞部門にふさわしい作品だと言えます。
(株式会社文化時報社 代表取締役/小野木 康雄) 

奨励賞

未来のために
對馬 ほの花/私立札幌大谷中学校 第2学年

世界という名の小さな檻で生きていくために。
岸本 桃果/私立大谷中学校 第1学年

講評
それぞれ「未来のために」と「世界という名の小さな檻で生きていくために。」と題して、意欲的に取り組まれた作品である。No.51の作品では「世界」とは「生きていく人のための場所」とし、だからこそ「この世界が幸せであるように」と願い、「可能性を信じる限り」この「世界」を生きていくと力強く宣言されている。No.213の作品では「世界」は「小さな檻のようなもの」であり、その中でしか「生きていけない」という現実に向き合っている。その上で「私達は支え合って、六道を一歩ずつ前進して」いくことの大切さを述べ、共に生きていく「世界」を願った作品となっている。両作品に共通するのは、世界は本当に色々なことで溢れており、自分に都合の良いことばかりではなく苦しいことも多い。だからこそ未来へ、そして今、この世界をしっかりと生きていきたいという純粋で若々しい意欲が伝わってくる作品であった。
(仏教教育センター)