大谷大学文藝コンテスト

【親鸞部門】受賞作品

高校生の部

最優秀賞

神様がくれた宝物
神様がくれた宝物/大谷高等学校(京都) 第3学年

講評
「妹ができるよ」と両親から初めて聞かされた際、末っ子として可愛がられてきた自分は妹ができることを素直に喜べなかったが、その後、妹の誕生を待ち望み、喜び、そして赤ちゃんの世話を一生懸命した様子がよく描かれている。また最後に、小学三年生に成長したその妹が、もし「妹ができるよ」と聞かされたら何と言うだろうか、考えているところが面白い。両親と兄、自分、そして妹をふくめた五人の家族を「私の宝物」と明確に定義し、当時の自分を振り返りながらその気持ちを上手に掘り起こしている。
(仏教教育センター)

優秀賞

一筆書きの星
井本 菜月/須磨学園高等学校 第2学年

講評
一筆書きで描く星は、シンプルであり誰でもが知っている図形です。しかしこのシンプルな図形に、無限の豊かな広がりを見出した筆者の素直な感性に心打たれる作品です。筆者は幼い頃、病気がちで頻繁に入退院を繰り返す日々でした。幼い身にとって、治療や入院生活は辛く退屈な日々であったと思います。病院の柵で囲まれた狭いベッドで日々を過ごす筆者を、広い世界へと解き放ってくれたのは一筆書きで描く星でした。真の豊かな世界とは、素直さの中に開かれる世界であることを伝えてくれる作品です。
(仏教教育センター)

優秀賞

母の言葉
森本 和佳/徳島市立高等学校 第2学年

講評
「母の言葉」という題で書かれたこの作品からは、お母さんの我が子に対する愛情と、言葉の持つ力という二つの事が強く伝わってきます。日常の学校生活で周囲と比べて自分が感じている違和感や辛さを正直に母に聞いている描写からは、本人と母親の信頼関係も感じ取れます。「どうしたら普通の子になれる?」と訴える作者に対して「普通の子なんて一人もおらん。あんたはあんたのままでええんじょ。」と応えるお母さん。いつも周囲と自分を比べて自分の存在理由を確かめてしまう私たちの価値観に対しても問題を投げかける、素晴らしい作品だと感じます。。
(仏教教育センター)

中外日報社賞

頼る勇気
福田 美月/大谷高等学校(京都) 第3学年

講評
「頼る」とは「依存する」ことだと辞書にあります。では、頼らないことは自立した生き方でしょうか。そうではありません。あなたは、人に頼らず自分だけの力で物事を成し遂げようとするのは、相手を信頼せず、任せられないという疑いから、友と一緒に生きることを拒む、傲慢で孤立した生き方であり、頼ることは相手を信用し、誤りを一緒に正せる関係を築くことだと気がつきました。「人を頼る勇気」を「宝もの」だとする言葉は、深い内省から生まれたものでしょう。信頼し合う心の大切さを教えてくれます。
(株式会社中外日報社 取締役会長/形山 俊彦)

奨励賞

宝ものの連鎖
菊池 優衣/私市川高等学校 第1学年

かけがえのない日常
藤本 のどか/大谷高等学校(京都) 第1学年

講評
奨励賞を受賞した2作品は、文章表現という点では好対照のものでした。「かけがえのない日常」という作品は、小学生の時に先生から聞いた実話がきっかけとなり、それ以来ずっと心がけてきた挨拶が、かけがえのない宝物であることを素直に述べています。純朴ともいえる表現によって、まだ幼い時に感じた印象や、日常における挨拶のシーンがこころにうかびあがってきます。
「宝ものの連鎖」は、文章表現に巧みな工夫があり、楽しく読める作品です。文章のはじまりは、どういうことだろうと読み手に「?」を抱かせつつ、すこしずつ視覚的に場面が明確になり、著者が伝えようとしている内容が徐々に明らかになる書き方になっています。とくにコロナ隔離期間の経験が宝ものとなり、その宝ものが「夢」をあたえてくれるものとなったことが、生き生きと伝わってくるような作品でした。
文章表現という意味では好対照の作品でしたが、奨励賞の2作品はそれぞれエッセイの特徴を活かして、日常の中にある輝きを感じさせる、すぐれた表現になっていると思います。
(仏教教育センター)

中学生の部

最優秀賞

僕が生まれたこと
堀 有我/私立札幌大谷中学校 第1学年

講評
中学生になった筆者が、家族から大切に愛されてきたことを知り、その家族を優しく気づかう様子が、純粋かつ正直に表現されています。幼いころは兄弟のいる友達と比べて自分も「弟か妹がほしい」と願っていた筆者は、成長して母から出生にまつわることを教えてもらい、自分の誕生の意味を真剣に考えるようになりました。それとともに、母に対してときどき「ウザイ」と思う中学生らしい心もちと、本心ではいつまでも母に元気で長生きしてほしいと願っている気持ちとが見事に描写された心温まる作品です。
(仏教教育センター)

優秀賞

輝く命
林 実優/大谷中学校(京都) 第3学年

講評
この作品では、著者の兄がハンディキャップをもちつつ、充実した生き方をする姿がいきいきと描かれています。その姿は、ハンディキャップがある「けれど」ではなく、ハンディキャップがある「から」充実しているのです。ハンディキャップがあるということが、生きているということが決して当たり前ではない、という実感につながる様子が伝わってきます。この実感を通して、「輝く命」という題名に込められた命の尊さが、単なる言葉としてではなく、いきいきとした体験として伝わってきます。
(仏教教育センター)

文化時報社賞

まわりの人と違うカタチ
I・R/札幌大谷中学校 第1学年

講評
読ませてくれて、ありがとうございます。小学校低学年の頃から中学生になった今に至るまでの思いを、ありのままに、正直に書いてくれました。
誰にも言わず人に知られたくなかったことを打ち明ける「カミングアウト」は、大変勇気のいることです。周囲が正面から話を聞いて、当たり前のこととして受け止める態度を示すことが「救い」につながることを、この作文から教わりました。
どんな人も受け入れてくれる安全地帯の一つが、お寺です。困った人が頼りにするお寺には、仏教が息づいています。仏教の学びを通じて、家族をさらに大切にできるといいですね。
(株式会社文化時報社 代表取締役/小野木 康雄)

奨励賞

宝もの
栗本 蒼大/大谷中学校(京都) 第1学年

家族
藤本 芽愛/札幌大谷中学校 第1学年

講評
中学生奨励賞を受賞した2作品は、「家族」をテーマとする点で共通しています。
「宝もの」という作品では、ハンディキャップをもつ「弟」とその兄である「僕」の日常がみずみずしく活写されています。
「家は常に弟を中心に回っている」「それがすごく嫌な時もあった」「弟と暮らしていると大変なことの方が多い」。だけれども、と著者は言います。だけれども、「そんな弟がぼくのたからもの」、弟がいてこその我が家だと、著者は言い切ります。
「家族」という作品では、夏休みの部活の帰り、洗濯物をコインランドリーで洗い終えるまでの一時間の、「母」とのドライブの様子が描かれています。著者の見事な筆致は、車内の優しい空気感をくっきりと描写し、まるでその車内に自分もいるかのように読者を錯覚させます。何気ない会話、ただの世間話、だけれども、ゆっくりと楽しい時が流れる。「夏休みの何気ない一日の中のひと時」が「特別に感じた」。母と私の、2人だけの特別なひと時。著者はこの日のことを終生忘れることはないでしょう。
中学生奨励賞の2作品は、「宝もの」が何であるのか、どこにあるのかを教えてくれました。
(仏教教育センター)