ナゼナニ探究部
ナゼナニ探究部
戦国時代の「超エリート営業集団」とは?
営業、マーケ、情報戦——現代ビジネス顔負けの働き方に迫る

調べものはAI、すきま時間はSNS。
ことばに囲まれて暮らす私たちに、いま必要な力は何だと思いますか?
実は、文学で鍛えられる〈読み書き〉の力は、AI時代を生きるうえで大きな支えになります。その理由を文学科の学びから、ひも解きましょう。
SNSでは、だれもが手軽にことばを発信できます。その結果、大量のことばが流通し、一つひとつが軽く扱われやすい一方で、自分に向けられたと感じる一言だけは特別に大きく見え、深く傷ついてしまうことがあります。
では、そうしたことばと、どのように向きあえばよいのでしょうか。文学の学びでは、ことばが時代や社会とどう関わるかも考えます。流行のことばや広告のことばは、人々の気分や社会の空気とどのように関わりながら発信されるのか。それを読み解くのも文学研究です。学ぶことで、ことばから距離を取り、一歩引いて客観的に眺められるようになります。自分に向けられた悪意としてことばを過剰に受け止めてしまいそうな時も「ことばなんて、しょせんことばだ」と突き放せる視点は、SNS時代を生きる自分を守る力にもなるのです。
生成AIが当たり前になった今、AIに的確な指示を出し、出力された文章の違和感に気づくには、結局〈読み書き〉の力が欠かせません。その力を鍛える有効な方法の一つが、文学作品を読み、感じたことをだれかに伝えて意見を交わすことです。同じ作品でも、読み方は人それぞれ。だからこそ語りあうと、自分ひとりでは気づけなかった視点が手に入ります。感想が分かれるほど、作品の世界は立体的に見えてきます。「文学は難しそう」と感じるなら、教科書のイメージはいったん忘れて、好きなジャンルの一冊からで大丈夫です。読んで感じたことを「語りあう」「文章にする」といった行動を重ねることで、曖昧だった考えが整理され、相手に伝わる形に組み立て自分のことばで表現する力も身につきます。その繰り返しが、読む力と書く力の両方を育てます。文学は、社会で生きるための〈読み書き〉の力を磨く学びでもあるのです。
ここまで見てきた〈読み書き〉の力のうち、文学が特に鍛えてくれるのが、ことばから情景や感情を想像する力です。文学は、文字だけで情景や感情を立ち上げ、読者自身に想像させます。たとえば「雨が降っている」と「豪雨である」では、頭に浮かぶ景色がまるで違うはずです。川端康成『雪国』の有名な冒頭「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」も、あえて主語や視点を明示しすぎないことで、読者に情景を補わせ、物語の世界へ引き込みます。読者が自分で情景を思い描くぶん、何を感じ取るかの自由度も高くなります。映像が「見せる」表現だとすれば、文学は読者自身に「想像させる」表現。これが文学ならではの伝え方です。
伝え方だけではありません。描く中身にも、文学ならではの持ち味があります。ニュースや歴史の教科書は、限られた時間や紙面で分かりやすく伝えるために、出来事がもつさまざまな側面を取捨選択し、整理せざるをえません。文学が描くのは、まさにそのときこぼれ落ちてしまった部分です。小説は、一人の人物を生活者として具体的に描きます。だからこそ「事実」という整理されたフレームには収まりきらない、社会の多面性にふれることができるのです。同じ出来事でも、立場や暮らしが違えば、見え方はまったく違うもの。文学は、一人ひとりの目線から世界を描き直し、自分の知らなかった世界の側面に出会わせてくれるのです。
では、こぼれ落ちたものを、文学はどのように描くのでしょうか。戦争の記憶を例に考えてみましょう。戦場の体験談の多くは、聞く人に伝わるよう筋道や意味づけを伴って語られます。一方、戦後の文学作品が描いてきたのは、そうした整理のできない記憶です。変わっていく社会と、消えない記憶とのあいだで葛藤する人々の姿を、文学は描き続けてきました。
たとえば、沖縄戦を題材にした目取真俊の小説『水滴』。描かれるのは、勇ましい戦闘でも分かりやすい悲劇でもなく、水を求める戦友を見捨てて逃げたという、主人公が50年間だれにも話せなかった記憶です。どう語っても、必ずこぼれ落ちる個人の体験がある。文学は、そのことを私たちに突きつけてきます。
情報を素早く整理するAIが身近になるほど、整理しきれない人の感情や、一つの答えには収まらない経験に目を向ける力も重要になります。まずは気になる一冊を手に取って、感じたことをだれかと語りあうところから始めてみませんか。
AIやSNSで、ことばがあふれる時代。文学で身につく〈読み書き〉の力は、次の3つに整理できます。
読んで、想像して、だれかと語りあう。その積み重ねこそ、AI時代にますます大切になる〈読み書き〉のトレーニングです。これらの力は、現代文の読解はもちろん、志望理由書や面接で自分の考えをことばにするときにも、そのまま生きてきます。


お話しいただいたのは…
文学部 文学科
北山 敏秀 講師