生成AI時代に大学教員は悩んでいる

Chat GPTが2022年11月に世に出て以来、生成AIなるものが日本でもあっという間に広まった。生成AIの功罪はさまざま言われているが、大学教員にとって悩みの種は、学生たちのなかにレポートや卒業論文(卒業研究)を丸ごと生成AIで作成しようとする者がいるという現実である。自分で書いていないものを自分で書いたものとして提出するのは、盗みや騙しであり、言うまでもなく不正行為に当たる。

このような現実に直面して、もちろん、教員側も対策は取っている。たとえば、ガイドラインの作成、学生たちへの注意喚起、成績評価方法の変更(筆記試験を増やす等)といった方策である。しかし、それでもこの種の不正行為を防ぎ切れていない。いったいどうすればよいのか。

この問題を考えるさいに本質的なのは、不正防止の観点よりも、学生の成長実感を促す観点であろう。なぜなら、不正防止は「何かをしない(させない)」ことに目を向けている以上、消極的効果しか見込めないからである。これに対して、「できた」(「書けるようになってきた」)と実感した学生は、「次もやってみよう」と思ってくれるのではないか。つまり積極的効果が見込める。しかも副次的効果として、わざわざ不正に手を染めなくてもすむではないか(「なんでこんなことしたの」と学生に尋ねると、「だって書けないもん」と呟いたことを思い出す)。多くの学生は不正などしないのだから、その点からも成長実感重視の方針は当然である。では、そのために教員には何ができるのか。

まずは学びの場づくり、そしてきめ細やかな個別指導であろう。正課ではゼミがこれに当たる。ところが経験上、週1コマでは全然足りない。一人ひとりにきめ細やかな指導をする余裕がないのだ。

そこで新年度から私のゼミ生には、私の個人研究室を開放し、学びの場として使ってもらおうと計画している。学友や教員と過ごす時間を増やす仕掛けも考えてある。さてどうなるか。

PROFILEプロフィール

  • 西尾 浩二 准教授

    【専門分野】
    西洋哲学

    【研究領域・テーマ】
    西洋哲学/古代ギリシャ哲学